惑星エラム 幻のカタカムナ 第一部 パクス・ブリタニカ編 【ノーマル版】

第一章 ヴィーナス・ネットワークの繁栄

ミリタリー・オフィス

　午後の会議は、ミリタリー・オフィス主催の会議です。
　ミリタリー・オフィス・ハウスバトラーのディアヌさんが、
「オルメカ号、ヨミ号、ユニバース号の修理は完了しました」
「ニライカナイ内部の電気軌道は、完全に定時走行できます」
　と、報告しています。

　シウテクトリさん、イザナミさん、ゼノビアさんのお三方は満足そうです。

「それから例の新線の話ですが、ミリタリー・オフィス内で検討した結果、整備されたらステーションＢＢは、観光ステーションとしての価値があります」
「また将来的には、テラ循環線となりますし、蓬莱の現状を考えれば、これは最優先としても良いと、結論しました」

「あと、箱物が出来上がれば、艤装はこちらでします」
「完成後の管理は、ユニバースに移管します」
「ただステーション内の軍事領域部分の艤装は、ユニバースにお任せしたい」

　たちまちゼノビアさんが、「我らは工作は苦手だ……」といいます。
　軍事領域、つまりはステーションの軍事要塞部分ですが、ここの内装はしたくないということです。
　でも、工作といいましたね……

「ではこちらで行いますが、武器類は提供していただきます」
「それから軍事領域は、最低限度にさせていただきますが、よろしいですか？」
　ゼノビアさん、肩をすくめて、「お願いする」と云いました。

「次の議題ですが、一般のミリタリーの方は采女待遇、金貨２枚、年収３００万、チケットは毎月一万五千円ですから、これでは少ないと思われます」

「特に宇宙鉄道を、自由往来できるミリタリーの方々です」
「せめてチケットを、増額せねばならないと考えますが……なんせ元手が……」

「で、ミリタリー・オフィスとして、内部で検討した結果、各ミリタリー管轄内の、何か資源などでも提供していただければ、何とかなると考えたのですが、いかがでしょう？」

　ゼノビアさんが、
「資源といっても、我らには何を提供すればいいのかわからないのだが……軍事用の資源は、宇宙の塵から作り出せるし……」

「では、プラチナを提供していただけますか？」
「ゴールドは、マレーネ様が定期的にお作り下さって、提供していただいていますので、事欠きませんが、プラチナは不足気味です」
「ないと困るものではありませんが、あれば便利ですから……」

「プラチナなら、オルメカにそのような星が二つ三つある、ユニバースにもあろう、ヨミはどうか？」

「バアル・ゼブルのところにあったと思うが……それにゴールドもある、ブラックホールで作らずとも、削ればいいのだから……」
「マレーネ様にご負担をかけることもない、ゴールドはヨミが提供しても良い」

　シウテクトリさんが、
「実はダイヤモンドでできている星があるのだが……提供すれば、良きようにしてくれるだろうか？」
「ダイヤですか！」
「それは、値崩れしないように、管理しますが？」

　ディアヌさん、頭の中で計算しているようです。
「必要な金銀プラチナ、ダイヤを提供していただければ……
「ただダイヤは、ほとんど工業用ダイヤとしてですが……」

「チケットは倍増、毎月三万円にできます」
「年収も、金貨を一枚追加もできます……」
「そうですね、軍務加算報酬として、特別枠を設けることになるでしょう」

「ミリタリー種族の方は、実質的には全員加算されることになります」
「あとダイヤですが、執政官府向けに、宝飾用があれば助かります」

　イザナミさんが、
「それは助かる、ぜひお願いしたい、我らも有機体になってから、体裁を気にしなければならないですから」
　ゼノビアさんも、シウテクトリさんも、うれしそうです。

　ヴィーナス・ネットワークは、基本的には金本位制ですから……ニライカナイ内は別ですが。
　ディアヌさん、天照大神(あまてらす)さん並みの手際の良さです。
　ミリタリーの首脳たちを、手玉にとっています。

「資金のめどが付きましたので、オルメカとヨミから要望があった軍服の件ですが、ユニバースが採用している軍服の、単価程度のものを支給いたします」

「どのようなものを希望しているか、見本を提出してください」
「それと礼服ですが、ミリタリーの方々も、基本は女官ですので、女官がミコ様について戦場勤務するときの、女官用軍服も支給いたします」

　女官用軍服とは、おおむね１９世紀後半のイギリスのもので、ロングスカートです。
　これをベースに、フォーマルなブラックとなっています。

　これ、かわいいと大評判で、女官さんたち、何かの折によく着ています。
　勿論、バッスルはつけませんよ、現代ですからね。

　こうして、ミリタリー・オフィス主催の会議は終わりました。