惑星エラム 幻のカタカムナ 第三部 嘆きの女神編【ノーマル版】

第四十章 １９２年１１月のリスト

『ウェヌスの巫女』が襲われた！

「ここにいるお客様方は、ウェスタ教団と親しくしたい方ばかり、お役にたちますよ」
　お役に立つためには、もっとゴールド・バーが欲しいのですよね……

「教団へのお力をお待ちしております、当方で出来る事なら、なんなりお申し出ください、いつでも歓迎いたします」
　ファウスティナさん、上手いものですね。

　そんな会話を交わして軽いケーナは終り、皆、長官のお屋敷をお暇します。

　さて、ここからですよ、本日のメインイベントは。
　
　さりげなくフラヴィア・ティティアナさんが、
「ファウスティナ様、主人がご挨拶したいと云っております」
　で、付き人の私は、控えの部屋で独りぼっち……

　するとガチャとドアが開きます。
　多数の男が入ってきます。

「誰ですか？」
　何も返事せずに、襲いかかってくるのですから……
　仕方ないのでぶん殴りましたが、あとくされないように、消えてもらいましょうか。

　でも、まずいわね……
　インドラの術中にはまらなくてはね……
　まず憤慨しなくては……小芝居は上手いのよ……
　すこしキズでもおってもらいますか……死なないだけでも儲けものでしょう。

　キャー……悲鳴ってこんなものですかね……
　大きな物音を立てて……と……

　ナイフなどを手に持って、少し服を破ってと……
　
　さて、家人が走ってきました。
　倒れている男たちと、私の敗れた衣服、そして手に持っていたナイフ……そこからは血が滴り落ちています。

　瞬時に何があったのか理解したでしょう。

「この男たちは私を襲ったのよ！『ウェヌスの巫女』の私を！」
「幸い剣術のたしなみがありましたので、穢される事は免れましたが！」
　
　ファウスティナさんが走ってきました。
「何事ですか！」
　現状を見て絶句しました。
「大丈夫なのですね……」
「はい、神官長様……しかし、女神様はお怒りになられるのでは……」

　ファウスティナさんは、後ろの男に向かって、
「どう収めるおつもりですか、私たちを殺そうとしたのですか！」
「これは……そんなことはない……盗賊だ……盗賊に違いない……」

「そうですか、皇帝陛下に、警備の強化をお願いしなくてはなりませんね」
「それは……私の体面を考慮願えないか……」

「神官長様、首都長官様の云われる通り、このことはあまり表ざたにはしないほうがよろしいかと」
「首都長官様には、女神様へお詫びの気持ちを表して頂いて、それで事を納めてはいかがでしょう」

「確かに貴女の云うとおり……『ウェヌスの巫女』が襲われたなどとは、不名誉ですからね」
「女神様のご加護が薄いと、思われかねません……」

「ペルティナクス首都長官様、聞かれたとおり、私もこの者の意見に同意します」
　ホッとした顔の、プブリウス・ヘルヴィウス・ペルティナクスでしたね。