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第三十六章 フィン連合王国の要求
06 好ましい男
しおりを挟むこの後、作戦会議を開きますが、その前に、
「ハイドリッヒさん、ありがとう……」
素直に言うのが、恥ずかしいのはなぜでしょう……
「いえ、無礼をお許しください。」
なんて返せばいいのか……
「勝てるのでしょうか?」
と私はハイドリッヒに聞いてみました。
「勝てますよ、ヴィーナス様、勝って今一度祝福をいただきかなければいけませんので。」
「頼もしいこと。」
「お忘れですか、私はヴィーナス様の守護者ですよ。」
「そうですね、頼りにします。」
「……」
「すべてが終わったら、食事でもいたしましょう。」
私は何を言っているのか……
「これから軍議です、行きましょう。」
とハイドリッヒが云いますので、私は頷いてハイドリッヒの後をついていきました。
「予定の戦場はやはりここしかない、ガルダ草原だ!」
と、ハイドリッヒが云います。
どよめきが聞こえます。
「アムリアと蛮族が決戦をした場所ではあるが、大軍団が決戦する場所となると、ここが一番と考える、多分敵もそう考える。」
確信があるみたいです。
「しかし、このガルダ草原にて決戦するとなると、この決戦には多分作戦など無用になる。」
「アムリアと蛮族との場合、兵力差が顕著であり、兵の錬度でも甚だしい差があった。」
「しかし我らと敵は、今ではお互いに手の内を知り尽くしている。」
「大賢者殿に聞いたが、互いの秘密兵器も、多少の性能の差があるといえ、似たような物で、この点でも互角といえる。」
「なにもかも互角で、互いに包囲されるのを嫌う以上、草原を横一列で対峙することになると思う。」
「さらに先程聞いたが、我らに黒の巫女様がおられるように、蛮族には主席というものがいるらしい。」
「主席というものは、魔法を中和できるとのことだ、つまり今度の決戦は、魔法も当てにはならない。」
「といっても、いつそれが発動されるかわからないし、相手が使用すれば、こちらも使用できるので、魔法戦闘部隊も待機してもらわなければならない。」
「諸君、こんどの戦いに、思考は一切不要だ、力勝負と心得てくれ。」
「素手で殴りあうような凄惨なものになる。」
「特に戦闘の初期はそうなる、それからは流動的だが、小細工した方が負ける。」
「諸君は持ち場を死守、与えられた場所を必ず守れ、穴が開いた方が負ける。」
「兵力を移動した瞬間に穴ができる、敵の穴が開いたら前面の部隊は躊躇なく突撃せよ。」
「そして両側の部隊は楔型になり後続、敵を分断する。」
「もし味方の戦線に穴が開いた場合は、両側の部隊は穴をふさぐように後退、逆楔型をとり、そのまま敵を引きずりこんで、勢いが弱まったところを包囲する。」
「後は状況による、状況判断は的確にお願いする。」
「明日、出陣する、各自身辺整理をしておくように。」
「またシビルの行政官殿には、ご迷惑だろうが、兵士諸君の多少のはめは、大目にみていただきたい。」
「また女性の方は、家から出ないようにしていただきたい、不埒な者も出ないとはいえないからだ。」
「本日の軍議はこれまで、皆御苦労。」
ハイドリッヒは小細工なしのガンチコ勝負をするつもりです。
ピエールさんと私の考えていた、流鏑馬と、鉄板バリスタトーチカ案は、お蔵入りになりました。
でも総司令官はハイドリッヒ、百戦錬磨の彼の自信を信じましょう。
「ダフネさん、ハイドリッヒの独壇場でしたね。でも悔しいけど、チョットかっこ良かったですね。」
「巫女様、男はだめですよ。」
「わかっていますよ!」
「あれ、むきになっているところが怪しい。」
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