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第三十二章 教団領奮戦中

01 ロキ遊撃隊

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 キリーでの敗戦を受けて、参謀は北方列島に残る、残りの二個軍団を上陸させました。
 それは最初の上陸地点で、ジャバ王国義勇艦隊が、まだ避難民を輸送の途中にあるとの、情報を得たからです。
 そして第三軍団の残り、一万二千名を戻し列島防衛の任に就かせました。

 これで北方列島の上陸派遣軍は四個軍団二十四万人の大群です。
 戦いの物資は、占領したアムリア帝国領から調達しています。

 参謀自ら、陣頭指揮を取るつもりで、派遣軍が本拠地を置いている、ホッパリアへやってきました。
 アルジャには防衛隊を置いて、海兵隊を呼びもどしました。
 いよいよ決戦の準備を始めたようです。

 この敵の状況は刻々と、ジャバ王国の情報網から、直接神聖守護騎士団本部へ伝えられています。
 ピエール団長は作戦会議を開いて、状況を分析していますが、戦況は不利です。

「キリーで敵の第三軍団を壊滅させたが、第四、第五軍団と増強されている。」
「このままではアポロ執政の云う通り、ホラズムも落ちるのは確実だ。」

「とにかくこのシビル守りきらねばならぬ、そして何とか敵戦力をそがねばならぬ。」
 私もその会議に出ていましたが、「遊撃戦を展開しましょう」と、提案しました。

「兵力を分散させて、ゲリラ戦を行います、騎士団の方は向いていませんね。」
「騎士団もそうでしょうが、敵も大会戦で、けりをつけることばかり考えているはずです。」

「敵主力は、この大陸へほぼ全軍終結していると報告がされていますね、これはある意味チャンスでしょう。」

「ギルベルト義勇艦隊に、北方列島と大陸の補給路を断ってもらいます、通商破壊戦を命じましょう。」
「これははっきりいって海賊行為です、しかしギルベルト司令官なら躊躇なく実行してくれるはずです。」
「さらに我々は、敵の補給基地や、移動中の部隊を奇襲します、これを続ければ敵は疲労していくでしょう。」

「アポロ執政の云っていた通り、長期戦に持ち込めば、我々に徐々に有利になっていきます。」
「ジャバ王国の情報が我々にはあります、この情報を元に遊撃戦をすれば、少数兵力で効果をあげられるはずです。」
「この遊撃戦は私がやりましょう。」

「それは却下します、ヴィーナス様は、主席が魔法を止められることを忘れたのですか?あまりに危険すぎます。」
 ロキさんがそのように云って、「私がやりましょう」と云ってはくれたのですが、
「それこそ却下します、得意でないことは失敗を起こします。」

「ロキさんは決戦の時こそ、真価を発揮するでしょう。」
「その時まで、このシビルを守りきるために努力してください。」

「それは大丈夫ですよ、私たちは騎射を身につけました、それに馬車にバリスタと火炎瓶をつんで、焼き討ちをあちこちで行ってきます、私たちにも武勲をあげるチャンスをください。」

 そういうわけでロキ遊撃隊は、夜の闇を利用して出立していきました。

 ロキ遊撃隊は、まず敵の兵站基地を目標に選び、夜襲を決行しました。
 後でわかったことですが、これが思わぬ効果を発揮し始めました。
 この兵站基地には敵の魔弾が集積されていたのです。

 ものすごい爆発が起こり、ロキ遊撃隊は長居無用とばかりにすぐにその場を離れ、次は食料輸送の部隊を奇襲、食料を焼き討ちするととともに、敵輸送部隊の半数を死傷させました。

 その後は敵の警備部隊や輸送部隊、兵站基地などを軒並み襲撃して、最後に血眼になってロキ遊撃隊を探していた海兵隊の一部と遭遇し、激しい戦闘の結果、最小の損害で脱出に成功、無事このシビルへ返ってきました。

 ロキ遊撃隊の面々で、怪我をしていない方はないほどでしたが、負傷ばかりで死者は出ませんでした、大戦果といえるでしょう。
 ナイチンゲール看護婦人会は有能ということを示したことも収穫でした。
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