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第十章 帝国の花嫁たち
エルザとフリーダ
しおりを挟むジョージ会頭はチョコレートを一袋抱えてお帰りになり、エバさんに案内された二人は応接室に……
待っていたのは、ヒロ様とエバさん以外の三人の妻と三人の愛人……二人ほど大変な方が混じっておられます……
「ヒロ様、クレア様、エルザさんとフリーダさんをお連れしました」
ここで皇妃様が仕切ってくれるのです。
「ねえ、ナーエ伯爵、二人を値踏みするのだけど、殿方は席を外していただけない?」
「えっ?」
「大事な娘が嫁いでいる家の奥向きの話、新しい夫人が来るわけよね、母としては値踏みする資格があるのよ」
「ねえ、王国の第二王妃様」
「その通りよ、婿殿は席を外していただきましょう」
で、自分の奥さんとの初対面の席で、放り出されたヒロさんでした。
……
「なんで私が席を外すの?私の奥さんなのよ、なんで義理の母がしゃしゃり出てくるの?」
「つまらん、風呂にでも入っていよう」
少しばかり拗ねているようです。
その頃……
「さて、婿殿には可哀そうだけど、第二王妃様、二人の鑑定をお願いできるかしら?」
「もう済ませているわ、エルザさんと言ったわね、皇妃様からの身辺調査の通りよ」
エルザさんは24歳、元デッセル伯爵の次女、16歳でキストラー侯爵に嫁ぐ。
不祥事の為、離別され、デッセル伯爵から貴族の籍を抜かれる。
「でも、こちらのお嬢さんは身辺調査と違うようよ」
クレアさんが、
「どういう事でしょうか?」
「この娘さん、バージンとあるけど、そうじゃないのよね……」
「陛下をだましていたの?」
「父親のコール男爵がね、フリーダさん、このヴァルベック辺境伯家に嫁いでどうするつもりなの?」
「この家はね、王国と帝国をつなぐ絆、王女と皇女が嫁いでいる家なのよ、返答次第では処分しますよ」
「私は……誠意をもってお仕えするつもりです……嘘ではありません、弟の治療費がかさんで家が破産しそうなのは事実です」
「処女ではありません、私には将来を約束した方がおられました、その方と契りは交わしました、お父様にも申し上げています、ただその方は家の借財を知ると、私を捨てました」
クレアさんが、
「どこの男なの?」
「申し訳ありませんが、いいたくありません」
「その男をかばうの?今でも思っていると判断するわよ、ヒロ様より慕っている男がいる女なんて、このヴァルベック辺境伯家にはいらないわ!」
「かばう訳ではありません、ただ多少なりとも口止め料替わりの手切れ金を受け取ったので、約束は守らなければと思っているだけです」
「クレア、その娘さんは嘘は云ってないわよ」
「男の名前はね、これよ、皇妃様、ご存じと思うわよ」
第二王妃が、紙に名前を書いていました。
「この男は……そういう事なのね……」
名前はエルザさんの元夫、キストラー侯爵の名前でした。
つまりエルザさんは不倫したのは確かですが、それを非難した夫もフリーダさんと不倫……
しかも、キストラー侯爵はエルザさんがいうには、かなり浮名を流していたようです。
「コール男爵は皇帝陛下に虚偽の報告をして、キストラー侯爵も虚偽報告まではないけど、褒められたものではないわね」
「まあいいわ、この話は私が預かるわ、それより、正妻であるクレアさん、どうなさるの?」
後日、フリーザは男に騙されたとなり、修道院送り心配した実母が、エバさんに泣きつき、ヒロさんが引き受けたことになっています。
キストラー侯爵は余りに漁色が目につき、帝国の勲位局からとがめられたようで、瞬く間に帝国中に知れ渡ったとか……
その結果、エルザさんの評判もマシになったようです……
「エルザさんは第五夫人として認めます、フリーダさんは……」
ここでマーガレットさんが、
「この方の気持ちは痛いほどわかります、いま憑き物が落ちたような状態でしょう、女は所詮抱かれてから恋をする生き物、ましてヒロ様と夜伽をすれば、皆様お判りでしょう」
エバさんが、
「マーガレットさんの云われる通りですね、はしたないですが、どんなに貞操堅固な女でも、どんなに淫乱な売春婦でも、骨抜きですね」
「不思議なのはヒロ様、ご自分は容姿が悪く、女にもてないと信じておられるようなのです」
「まあ、ヒロ様の値打ちは、小娘ではわからないでしょうね」
クレアさんが、
「まあ、マーガレットさんのいう通りでしょうね……フリーダさん、この家のご主人様、ヒロ様の第六夫人になる?一応王国ではヴァルベック辺境伯家は貧乏で有名よ」
エバさんも、
「ナーエ伯爵家も、帝国では貧乏で有名よ、なんせ領地には人が住んでいないのよ」
皇妃様と第二王妃様が、ニヤニヤしているのが印象的ですね。
二人の代金?エルザさんの懲罰加算金は天の声で免除され、6万ランドほどです。
ヒロさんが、小さいマディラシトリンというオレンジ色の水晶をカニンガム商会を通してオークションに出品、3万5千ランドの値が付き、残りをコショウの独占販売権としてカニンガム商会とマガタ商会が折半して出してくれました。
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