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第五章 嫁とり騒動PERT3
メアリーの場合
しおりを挟むリッチモンド子爵令嬢メアリー……
15歳で寄親の侯爵の二番目の妻になった、かなりの金額が提示され、父親の子爵は断れなかった。
しかし一年足らずで、その侯爵は死を賜った。
姉とも慕う、正妻であるクレア王女は離縁され、メアリーは実家に戻された。
ほっそりとした美少女で、おとなしく、いささか影が薄いところがある。
無口と思われているが、本当は利発、クレア王女とは、よく夫の悪口で盛り上がったりしていた。
夫のガサツなエッチには辟易、女として感じたことがなかったのである。
……せいせいしたけど、これで私も世捨て人?修道院入りなの……
しかし徐々に夫の悪事が露見してきた。
……これでは私は助からないわ、クレア様は離縁されていたから、修道院送りで済むけど、私は正式に妻だった……
……良くて奴隷落ち、悪いと……私、16歳で死ぬのね……
メアリーはクレアと違い、かなり世間を知っている。
夫が死を賜った以上、どんな理由であれ、自分にまともな明日は来ない、奴隷落ちを嫌い、自決なんてすれば、今度は父親に類が及ぶ。
貴族の罪人の妻妾は、実家が引き取り、王国爵位局からの下知を待つことになる。
この『爵位局からの下知』というのが、どのような経緯で、どのあたりの指示なのかは、一切説明が無いが、最終的には国王が承認する決まりなのだ。
よって、『国王の命に従わない』というのは厳罰となる、当然、預かった実家も管理不届きとなり、うっかりすると、爵位が降格されかねないのだ。
リッチモンド子爵の領地は、近年、連続して水害に見舞われ、寄親の侯爵から渡された娘の代金?で、何とか領民の日々の暮らしの援助をしていた。
実際、侯爵は窮地のリッチモンド子爵の足元を見て、娘を自分のモノにしたわけだ。
このあたりの事情を、父親のリッチモンド子爵は懸命に陳情したようだ。
ある日、子爵は王国爵位局から呼び出された。
そして、そのまま、国王の執務室へ通された。
部屋には国王と王太子がいた。
「リッチモンド子爵、卿の娘、メアリー嬢のことだが、嫁に出さないか?」
?
「じつは余の娘のクレアが再婚する、相手は平民だが、クレアを降嫁させるために、『還らずの荒野』をその平民に与えた」
「ヴァルベック辺境伯(マーグレーブ)領ですか…」
「地代は毎年97万5千ランドで妥結した、まあ貧乏貴族の筆頭だろうな」
「そうは言っても辺境伯、妻は最低でも三人が必要なのだ」
「クレアと第二王妃が残りの二人を推薦しての、そのうちの一人がメアリー嬢という訳だ」
「娘の代金として、ヴァルベック辺境伯はメアリーに15万ランドを提示している」
ここで王太子が、
「これは王命である」
「はっ!」
「リッチモンドよ、辺境伯は風采が上がらぬ男だ、しかしクレアはこの男に嫁ぎたいと願った、余もあの男にクレアが嫁いでくれて、今は良かったと考える」
「詳しくは言えぬが、実のある男だ」
こうして、メアリー・リッチモンドは、否応なく再婚させられることになった。
「私が嫁に?」
「そうだ、王命だ、違背は許されぬ」
「お相手は?」
「平民上がりのヴァルベック辺境伯だ、正妻はクレア王女殿下となる」
「陛下がおっしゃるには、貧乏貴族の筆頭だそうだ、ヴァルベック辺境伯はお前に15万ランドを提示しているらしい」
「15万ランド?」
「そうだ」
「辺境伯なのですから、妻は三人は……後お一人は決まっておられるのですか?」
「ドロア侯爵の娘、マーガレット様だ」
「……お二人とも王家の血筋の方……私も含めて傷物の女ばかりですが……」
「クレア様の降嫁のためには、夫は最低でも辺境伯の必要がある、するとあと二人妻がいる」
「分りました、良くて奴隷落ちの私、辺境伯様の第三夫人なら、喜んで嫁ぎます」
「そうか、ただリッチモンドの家からは援助は出来ない、それは覚悟しておけ、それから嫁いだ以上、何があっても我が家に来るな」
どうやらリッチモンド子爵は、成り上がりのヴァルベック辺境伯とは、よしみを結びたくないようですね。
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