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第七十四章 家族のぬくもり

献上品が世界を安定させる

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 大変な騒動になったのは当然です。
 とにかくその場は、波斯(ぺるしあ)さんが何とか収めましたが、その後、百合の会議で、死ぬほどののしられたのは仕方ないことですね。

 お父様、お母様、おじい様も面目丸つぶれ、こってりと絞られていました。

 結果的にはこのときの売り子さん、麻瑠華(まるけ)巴羅(はら)さんは『夜の儀式』を行い、『夜の奴隷』となり、めでたく格子の位を授かったのです。

 ティアマト府央区三丁目六番地の天津吉川家では、元の造化三神、天津吉川高見さんと天津吉川かみさん、そして天津吉川皆嘉さんが、ジェントルマンズ ショコラなんてカクテルを飲みながら、雑談などしています。

「しかしまぁ、美子の力は目を見張る」
「そうですね、結局は麻瑠華(まるけ)巴羅(はら)さんの一件が、この世界を安定させたのですからね」

「寵妃が出せたということで、使いの人々の本質的な部分が満足した」
「そして仲間が主人に受け容れられたという、連帯した安心感が満ち満ちているのが分かります」

「私が計画したことではあるが、献上品がこれほど世界を安定させるとは思わなかった」

「おじい様、私たちの考えは、もうこの世界では合わないのですよ」
「新しい神に全てを引き継いだのですから、この後は娘たちの足を引っ張らぬように、見守って生きましょう」

「これからは、娘たちを見守るのが楽しみだ、それに可愛い嫁たちもいるし、皆心が美しい」

「美子の女官さん、ウイッチというのですか、愛人以外の方々はほとんどあっていませんが、どの方も清らかな心ですよ」
「まぁ少しばかり、嬢合(まぐあい)を渇望する気持ちがありますが、可愛いものでしょう」

「なぜ嬢合(まぐあい)を恥ずるのかは、生物とするなら理解できないが、その辺のことは娘たちの考えなのだろう」

「私はそれより、他のウイッチさんとお話したいわね、愛人という方々は、時々会いにきてくださるけど」

「あの『そよかぜ号くどき事件』からもう二年か……楽しい日々であるな」

「所で来良さん、学校はどうだな」
 お父様が、給仕をしている来良さんに声を掛けました。

 来良さんは、あれからティアマト第三高等女学校を卒業、ダイティヤ高等女学校の女専課程の編入試験に見事合格、今年から一号生徒となる予定です。
 
「楽しく過ごしております」

 来良さん、いつのまにか料理以外にも、バーテンダーまがいのことが出来るようになっているのです。
 近頃はパテシエの勉強に余念がありません。

 ジェントルマンズ ショコラは、来良さんのお得意のようなのですね。

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