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第七十四章 家族のぬくもり
超豪華列車、『そよかぜ号』
しおりを挟むそんな日々が続くある月曜日、天津吉川高見さんが、
「今度の週末、皆で一泊二日の家族旅行なんていかないか?」
「いいわね、豪華列車に乗って、どこかの温泉なんて♪」
お母様はのりがいいようで、もう計画を練っているようです。
さっそくダイティヤ鉄道の超豪華列車、『そよかぜ号』の一等席の切符を予約……
満席ですね、全席指定ですから、急にいっても取れるわけはない、で三等席がやっと……
さすがに超豪華列車『そよかぜ号』、一等席から予約が入るのですね。
三等席になると、八席ほど空いていたのです。
それでもご一家はいそいそと、『そよかぜ号』に乗り込んだのです。
勿論、来良さんも『そよかぜ号』に乗りました。
三等席は対面四人掛、美子さんと茜さんがほかのお客と座ることに、しかも通路側です。
やはりやんごとなきお三方の側に、いなくてはと考えたのでしょう。
とにかく天津吉川ご一家は、美男美女ばかり、そのあたりが異質な空間です。
「三等席はいただけないけど、皆で温泉よね、超特急っていうけど、最高時速は百三十キロ、八時間もかかるわ」
「いいじゃないの、後で食堂車でも行きましょう、なんでも『そよかぜカクテル』ってのが有名よ♪」
「姉さんはいいけど、私は飲めないじゃないの!」
「グリーンとスカーレットがあるそうだけど、やはりスカーレットね♪」
ルンルンの茜さん、最早美子さんの話など、聞いていないようです。
「ごめんあそばせ」
窓際の席の方が、二人やってきて声をかけてきました。
「サリーさん……波斯(ぺるしあ)さんまで……」
そう、一人はサリーさん、もう一人はペルペトゥアさん。
今では葛城波斯(かつらぎぺるしあ)さんと名乗っておられます。
「ナノマシンがいっぱいの世界で、隠し事など出来ないのはご存知でしょう?」
「即座に通報があり、隣の席を押さえました」
「もう、姉さんったら!空いているのなら、隣も抑えればいいのに!」
「そんなこと、もったいないじゃないの、三等席といっても高いのよ!」
家計を預かる身となり、茜さん、近頃ケチになったのです。
どうやら主婦しているようですね。
「とにかくお二人には、窓際の席と代わりましょう」
窓際の席に座り、景色を眺めながら、案外にはしゃいでいる二人です。
しばらくするとサリーさんが、
「お母様、食堂車にいかれたらとお勧めします、ピロシキなどおいしいと評判ですよ、来良さん、ご案内してね」
で、茜さんと美子さんも行こうとすると、美子さんだけ腕をつかまれます。
「お嬢様はだめですよ、食堂車のウェイトレスさんたちは、相当にお綺麗と評判です」
「そんな方がお給仕している場所に、色魔の塊のようなお嬢様を、放つわけにはいきません」
「そんなぁぁぁ、私のご飯は?」
「車内販売があります!」
しばらくすると、ワゴンを押して、車内販売のお姉さんがやってきました。
ミンチカツサンドなんてものを売っていましたので、買っている美子さん。
紅茶はその場で、サモアールで入れてくれました。
「この紅茶はおいしいわ、ジャムがはいっているからロシアティーね♪」
ミンチカツサンドも結構お気に召したようで、パクパクと食べていました。
そうこうしていると、茜さんたちが戻ってきました。
「おいしいステーキだったわ、最後のカクテルは絶品ね♪」
「ウエイトレスさんはどうでしたか?」
「サリーさんの危惧した通り、綺麗な人ばかり、美子なんて行かせたら、絶対に悪いくせがでるわね」
来良さんも、
「本当においしいシャリアピン・ステーキでしたわ、始めていただきました♪」
茜さんが、
「サリーさんも食べにいかれたら、ココアもありましたよ、そこの色魔は私が見ていてあげますから、波斯(ぺるしあ)さんも、いまなら食堂車も空席があるみたいですし」
「ココア♪波斯(ぺるしあ)さん、いきますよ♪」
で、二人は食堂車へGO!
「いいなぁ、私はミンチカツサンド、姉さんはシャリアピン・ステーキ、この差はなによ!」
「色魔ですからね、仕方ないじゃないの」
……
ぐうの音も出ない美子さんでした。
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