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第七十章 巡礼の道

死体は燃え上がり、一陣の風が吹く

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 朝、二日酔いで頭の痛い二人、トボトボとアヨーディヤーの町を出ていきます。

「一体いくら払ったと思っているのですか!小銀貨3枚ですよ!」
 ライラさんに怒られながら、歩いている二人……
「どうもすいませんね、とにかく早くポップアップテントを出して楽になりましょう」

 それでも何とか街道を歩いていますと、
 ライラさんが街道横の灌木の中に、あるものを見つけ……

「支配人様……」
 そこには、ライラさんのつい先ごろまでの主である、農園支配人とその一行の死体……

 なんともいえない顔のライラさん。
「強盗にあったのね……」
「ティアマト様……お慈悲です……」
「仕方ないわね……」
 美子さん、何かを集中しているようです。

 死体は燃え上がり、一陣の風が吹き、綺麗に農園支配人と、その一行は世界に散ったのです。

「ありがとうございました……」
「いいえ」
 美子さん、ちょっと疲れたような顔をしました。

 その時、ペルペトゥアさんが、
「ティアマト様、騎乗の一団がやってきます、殺気立って見えますが」
 
「やれやれ、昨夜の酒場の一団ね……まずいわね、弓なんて持っているわ」
 美子さん、常に持っていた、杖のようなものを構えます。

「二人とも下がっていてね、相手は飛び道具を持っているわ、ペルペトゥアさん、加勢は無用よ」
 美子さん、街道のど真ん中に立っています。

 矢が飛んできますが、信じられないことに、美子さんは杖で叩き落しています。
 一団は、美子さんを馬蹄にかけようとしています。

「しんどいから手荒いわよ、どのみち、人殺しなのでしょうからね」
「先ほどの農園支配人と、その一行の敵を取ってあげます」

 跳躍すると、一人の頭上から、杖で脳天をたたき割っています。
 たたき割った者を蹴り落とし、その者の馬に乗り、片っ端からのしていますが、今度は一撃必殺、情け容赦ないようですね。

「ほんと疲れるわ、でも、街道に死体を転がしておくのはね……仕方ないか……」
 死体は燃え上がり、一陣の風が吹き、こんどは酒場の一団が世界に散ったのです。
「もうくたくたよ……早く寝たいわね……」

 それからも街道をしばらく歩き、アヨーディヤーから十分に離れ、やおら街道から少しはずれた場所にたどり着き、ポップアップテントを出しました。

「少し狭いけど、キングサイズの敷布団と、毛布を出すから何とか三人で寝れるでしょう」
 そう言うと、速攻で寝た美子さんでした。

 翌日、やっと起きた美子さんとペルペトゥアさん、ライラさんが、
「お二人ともひどい寝姿でしたよ」
 などと云われています。

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