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第六十六章 アスラの末裔
我に従え
しおりを挟む少女は手荒でした。
ドアを杖でぶち破ると、宿舎を取り巻いていた兵士たちを、難なくぶちのめして、挙句の果てに、城門まで叩き壊しています。
「ほらね、役にたったでしょう」
「とにかく、この城塞が見えなくなるところまで、逃げなくては危険だ!」
ペルペトゥアは、少女と荷物を背負うと、一心に走り始めました。
結構走ったペルペトゥア、もはや昼は過ぎています。
さすがに息が切れましたが、とにかく安全と思える場所まで、走ってきたのです。
周りには人家などは何もありません、見渡す限り荒涼とした荒野です。
「ここまでくれば大丈夫、休憩をしよう」
「ありがとうございます、御恩は忘れません」
「ここでお別れです、何かお礼を差し上げましょう」
このとき、ペルペトゥアは少女に、永く心に秘めていた『支配されたい』という願望、その対象とする『主』を見出した気がしました。
従わねばと感じ、全てを差し出さねばと、決意したのです。
「私はティアマト様を送ると誓いました、その誓いはまだ果たされていません!」
ペルペトゥアに、ティアマト様と呼ばれ、苦笑した少女でした。
「私は自宅はないの、放浪者なのよ、だからここまででいいわ」
「それより貴女はどうするの?、農園支配人にはなれそうもないでしょう?」
「私はよその町のトリに戻るだけです」
「私のために、農園支配人を捨てる羽目になったのよね……」
「運命の代価は支払わなければならないわね、貴女のお給料っていくらなの?」
「月に小銀貨一枚です」
「それって高額なの?」
……この方は、この世界の方ではないのではないか……
「月に小銀貨一枚あれば、小さい家の家賃を払い、なんとか食事をし、酒も飲め、少しは余ります」
「金銀の交換比率はあるの?」
「小銀貨六枚で銀貨一枚、銀貨六枚で小金貨一枚ですが、金貨はほとんど使われません」
ちなみにこの世界の硬貨は大小あり、六進数のようです。
最小単位が小青銅貨、これ一枚で大体、安い宿に一泊二食できます。
小青銅貨一枚あれば、一日何とか暮らしていけそうです。
聞けばこの世界は一月二十五日、一年は十ヶ月、二百五十日と判明しました。
小青銅貨の下に、補助貨幣として、極めて小さい陶貨があるそうです。
これだけは大中小とあり、それぞれ6進数、どうも日常は、陶貨で事足りるようです。
「金塊は両替できるのでしょう?」
「できます」
「では、これを差し上げましょう、失くした農園支配人の地位に、見合うかは分かりませんが」
少女はそういって、両手一杯の小粒金を差し出しました。
「金はいりません、その代わり、私の願いをお聞きください!」
少女は黙っています。
「私をティアマト様の『夜の奴隷』にしてください!」
「私はエッチなのよ、それでも『夜の奴隷』というものになるの?」
……やはりそうだ、この方はこの世界の方ではない、『夜の奴隷』の意味を知らない……
「はい、ティアマト様、私は所有されたかったのです」
そしてペルペトゥアは言葉を続けた。
「私はお役に立てますよ、ティアマト様はこの世界に疎いと思えました」
「私はティアマト様をご案内出来ると思います、私を『夜の奴隷』にしてください」
しばらく沈黙していた少女でしたが、
「ペルペトゥア、望み通り、私の『夜の奴隷』にします、私に従いなさい」
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