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第六十四章 神(かみ)さり

別天津神(ことあまつかみ)

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「娘とな、いよいよ怪しいやつ、お二人は我らの先達(せんだつ)、お子があるとは聞いたことがない、取次ぎなどできぬ」

「私は神に手向かいなどしたくない、しかしどうしても会わねばならない、どうあってもお取次ぎできませんか?」

「我らに手向かい?不遜なことをいうやつ、分かった、汝は滅されるべき存在と認識した」
「ルシファーと申したな、どうしてもというなら、ここを押し通してみよ、力でもってしか通れぬと知れ」

「これは『うけい』である、汝が勝てば娘、勝てねば娘ではない」
「いたしかたありません、お手向かいさせていただきます、その前に、お二方のお名をお示しいただけませんか」

「私は宇摩志阿斯訶備比古遅(うましあしかびひこぢ)」
「我は天之常立(あめのとこたち)、まず我が相手してくれる」

 ……やはり、別天津神と戦うことになるのですか……
 ……宇摩志阿斯訶備比古遅神(うましあしかびひこぢのかみ)、別天津神の四番目の神様、活力の神様ですね……
 冷徹な刃物のような雰囲気が漂っています。

 ……天之常立神(あめのとこたちのかみ)、別天津神の五番目の神様、天の神と呼ばれておられるようですが、武が目の前にいる、豪放磊落、そのように思える神様です。

 天之常立神(あめのとこたちのかみ)……
 この方は本当に神なのだろうか?多くの敵と戦ってきた私は、この方を身近に感じるのです。
 ブラフマーのような相手、たしかに強さが桁違いに強いのですが、幽子ナノマシンでけりがついてしまいそうな……

 力勝負、素手の戦いなら負ける、しかしなんでもありなら……勝てるでしょう……
 何故このように脆いのか?

 デーヴァのヘスのようにムスペルを使えば……なにか変ではないか?
 別天津神の五番目の神なのか、この方は本物なのか……

 とにかく戦いましょう、そしてさりげなく勝ちましょう……

「では参ります」

 私は瞬時に電撃杖をだしました。
 百三十年の間、私とともに戦ってきた武器、身についている杖術で、私は戦うことにしました。

 相手は神様、叩きのめすことは出来ません。
 何とか神の尊厳を傷つけないように戦い、道を通していただかねばなりません。

「もっといい得物を、出すべきではないか?」
「いえ、私は神に向かって、刃のあるものは持ちたくありません」
「これで勝てなければ、しかたありません」

「良きかな、ならばかかってこい」

「貴方様は得物をもたないのですか?」
「女子供相手に、得物など不要、されど手加減はせぬぞ」

 私はまず突きを繰り出しました。
 難なくかわした天之常立神、次の瞬間、アッパーカットがほほを掠めます。
 その威力で、当たりもしないのに、ほほが切れてしまいました。

「よくかわした、大したものだ」
 私は無言です、そろそろ必死で戦うふりをして、偶然を装わなくてはなりません。
 狙うは相手の足元、なんとかよろけていただいて、首筋に杖を当てる、そんなところです。

 しばらく戦ったのですが、相手は隙などみせません。
 どうやらこちらがミスして、誘い込まなければ埒があきません。
 とにかく徐々に息切れを見せましょう……

「どうした、息が上がってきているぞ」

 さて、次はよろついて……と、あれ、嵩にかかって打ってくるのではないのですか?

「息を整えよ」

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