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第六十三章 時のつながり

世界は神を必要とする

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 そして再び景色は廃墟の教会…… 
 神官さんや見習いさんが、列柱にもたれかかるように座り込み、瞑想にふけっています。

 ……時を遡上して自らに出会う、時のはじめに洋人がおり、いつしか美子が生まれ、時は本来の姿に戻り、二つの魂は一つの魂に戻った……

 ……デーヴァが生まれ、その果てにアスラが生まれた、二つの種族は消え、ヴァルナの娘はインペラトルとなる……

 ……デーヴァの神、クロノスは時の神……そしてアスラの神、天之御中主(あめのみなかぬし)神は、創造の神……しかし世界は『存在していた』……

 ならこの創造の神とは何なのか?
 世界を守り育てるだけなのか……

 ……ラグナロク戦争で、デーヴァは幽子を繰り返し使っていた。
 コピーは出来ても、オリジナルは作り出せなかったのだ。
 物質世界で消滅した幽子は、鏡界で活動していた……さらにいえば、虚数世界でも活動していた……

 ラグナロク戦争で、多くの幽子を破壊したはずだが、オリジナルは本当に破壊したのか?
 今となっては、どうでもいいことでは?

 世界は……そう、世界は常に存在していた。
 無いものは無いのは道理、『無』という概念は無い、世界は充ち充ちているのだ!
 ……満ちるではない、充ちるのだ、限りあるものが満ちているのではない。
 充ちれば世界はひろがるのだ。

 三千世界に限りはない。
 そう、これが望ましい世界の有りよう……
 私の望み、皆で心豊かに日々を過ごす。

 ささやかな幸せと、その為の代価としての汗、ささやかな喜びで、人々がよしとすれば、その代価はささやかな不運程度で済む。

 人が人を欺し収奪するのは、他者との比較故と私は考える。
 その落差が大きいと、世界はひずむのではないか?
 さらに言えば、人は生存を保証された世界に放り込まれれば、活気のない生活に嫌気を指し、向上を求め代価の先払いとしての汗を流す。

 生存が保証された世界では、その汗は喜びの為に流さざる得ない。
 そしてこの世界の喜びを、他者に尽くすことに向ければ、世界の様相はより望ましいものになっていく。

 三千世界とは別の三千世界になっていく。
 それは個々に名付ける階層世界ではなく、徐々に澄み渡っていく世界……

 進化の活気がなくなっても、喜びが世界を活気づける世界、そこには人の防衛的帰属ーー人々は、自尊心を守るためや、傷つきやすい感情を守るために、「悪い人には悪いことが起き、良い人には良いことが起きる」という考えと調和する帰属を行う傾向がある。この帰属は「世界が公正であるとする仮説」と関係があるとされる、ウィキペディアの帰属より抜粋ーーを満たさねばならない……

 ……世界は神を必要とする……神は存在する……

 ……私は願い思う。

 私たちを導き給う存在よ、神なくて心静かな日々をどうして迎えられよう……

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