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第六十三章 時のつながり
廃墟の教会
しおりを挟む翌日、朝早くから『冠屋』を一人でチェックアウト、廃墟の教会の教会へ向かいます。
私は転移した場所に立ち、あることを試してみるつもりなのです。
テラ暦の6月1日の午前11時25分……
この直前から、時を逆にさかのぼって眺めてみたいのです。
私、ナノマシンに頼らなくても、『時を遡上』できますからね……
ラグナロク戦争の結果、私が身につけた力、完全とはいえませんが、時を支配する力、それこそ神の領域の力です。
その力で、私は原点を見てみたい……
懐かしい祭壇のような石、廃墟の教会はそのままにたたずんでいました。
ただ風景は変わっています。
周りを取り囲む列柱や壮麗な建造物群、雨季で朝も早いというのに、幾人かの神官さんや見習いさんが、列柱にもたれかかるように座り込み、瞑想にふけっています。
……神官見習いですからね、私もお仲間に入りますか……
そして瞑想に入ったのです。
頭の中に鮮やかな空が見えます。
祭壇は何事もなく、6月1日早朝の風景でしょう。
フィルムを巻き戻すように、時を遡上させていくヴィーナスさん。
時々人が見えます、どうやらキンメリアの人間です。
……不思議ね、祭壇がそのまま、遡上すれば劣化が戻るはずなのに……
よく見ると、ナノマシンが劣化を止めているのです。
……主席の指示ですか……
さらに遡り、核戦争とその後の核の冬、そしてレムリアの時代が見えてきました。
しかし、祭壇を中心とした廃墟の教会は、そのままなのです。
そしてレムリア全盛を遡り、いよいよ頭上に宇宙船が見えます。
……女性体のものか……オーディンの最後の戦い……
このときでも、祭壇を中心とした廃墟の教会はそのままなのです。
……たしかにここは宇宙の灯台のような場所……しかし、なぜオーディンはそのままにしていたのか?
いよいよ男性体と多数の女奴隷が見えます……
……もうすぐだ、オーディンは自らをサイボーグ化して長命を保ったはず……
時はさらに遡ります、そして類人ばかり見えはじめました。
しかしこの時点でも、祭壇を中心とした廃墟の教会そのままなのです。
そして突然、起動幽子が祭壇の前に現れ、具現化しました。
それは私の知る男、吉川洋人……でした。
私はパニックになりそうなのをこらえて、時をさらに遡ろうとしましたが、ブラックアウト、何もない空間でとまったのです。
そこは空無辺処、覚えのある時空間でした。
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