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第五章 タバサの物語 妖精のお友達

愛犬トト

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 ファリニシュちゃんは、おじさんの犬にとびかかりそうでした。
 タバサちゃんは、その黒犬さんを抱きしめるようにして、
「ファリニシュちゃん!弱い者いじめはダメですよ」
 と、いいます。

 ファリニシュちゃんは、それでもとびかかろうとしています。
「ダメ!」

 タバサちゃんは少々困りました。
 黒犬さんはかなり大きく、タバサちゃんでは抱えきれないのです。
「困ったわ、お家に連れて帰って、治してあげたいのに……黒犬さん、小さくなれない?」

 そんな無理な事を云っていますが、その黒犬は聞こえたようで、一声吠えると、徐々に小さくなっていきます。
 ファリニシュちゃんぐらいになりましたね。

 タバサちゃんは、小さくなった黒犬さんを抱えると、マンクス・レディス・ハウスへ走りました。

 ついでといってはなんですが、ファリニシュちゃんも抱えています。
 タバサちゃんに抱かれて、ご満悦のファリニシュちゃん、静かにしています。

 降り始めた雪は、勢いを増しています。
 温度もぐっと下がり始め、休暇は冬籠りになりそうです。

「大変!大変なの!この子が死にそうなの!」
 タバサちゃんは、息せき切って走って帰り、命婦(みょうぶ)さんに言いました。
「まぁ、大変、大けがしているわ、お腹をかまれているわ」

 ドタバタとしていると、イシスさんがやって来ます。
「イシス様、タバサ様が、大けがをしている犬を拾ってこられて」

 イシスさんがその黒犬さんを一目見て、
「その犬、ブラックドッグじゃないの、貴女たち、寄らないほうがいいわよ、ファリニシュ、始末しなさい」

「ダメです!この子はおじさんから頼まれたの、助けてあげて!」
「おじさん?」

「ものすごく大きな、毛むくじゃらのおじさんなの……」
「フェノゼリー――マン島の妖精の一人、大鎌をふるって草を刈る――ですね、それがブラックドッグを頼むと?」
「そういったの……黒犬さんを指差してヘルプって」

「フェノゼリーがね……いいわ、タバサのお願いなのですものね……この、おばさんが、治療してあげましょう、その前に言っておかなければね」
 イシスさんは、マン島のブラックドッグに向かって、「汝、モーザ・ドゥーグよ、我の命に従うか?誓うなら治してやろう、どうするか?」

 その犬は小さく吠えました。
「よろしい」と言うと、イシスさんは黒犬に向かって、手をかざしました。
 かまれた傷が、見る見る治っていきます。

 次の日には、黒犬は元気になりました。
 イシスさんが見に来て、
「そろそろ本来の姿におなり」
 と云うと、黒犬は徐々に大きくなって、子牛ぐらいになりました。

 モーザ・ドゥーグ、これが黒犬の犬種名と教えてもらったタバサちゃん、何か真剣に考えています。
「黒犬さんにも名前が必要よね、茜おばさま、私が名前を付けてもいい?」

「タバサの犬だろう、好きにすればいい」
 で、この黒犬の名前を、トトと名付けたのです。
 どうやら、オズの魔法使いに出てくる犬らしいのですが……かなりモーザ・ドゥーグはがっかりしたようです。

 結局トトは、タバサちゃんの飼い犬になりました。
 毎日タバサちゃんを送り迎えします。

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