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第二十五章 滅亡の始まり

小さな日傘と小鍋とハンマーと

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 皇妃さんに私は聞いてみました。
「本心はどこにあるのですか?」
「親としては、こんな馬鹿げた話しは認めるわけはありません、しかし……皇帝の妃としては……ただ相手の方がどんな方かぐらいは知っておきたい、ただそれだけです」

「では、私に会ってどう思われました?」
「貴女は神か悪魔か、人でないのは確かでしょう、この世をどうしようとしているのですか!なぜ娘は身を差し出さねばならないのですか!」
 涙がこぼれそうなご婦人……支離滅裂もいたしかたない事です。

 答える代わりに、こんな言葉を呟きました。

 大鍋の豆は日差しの下で煮豆になりつつ
 豆はすべて鍋の中
 小さな日傘と小鍋とハンマーと
 そして、豆は私の豆ではないのです

「……」

「すまぬが席を外してくれ」
 と、ニコライさんが奥さんにいいました。

 そして私に向かって、
「ロシアという豆は、貴女にとって縁のない豆、身近な豆を優先するわけですかな、小さい日傘で、日差しを遮れる範囲というわけか!」
「私としては、今回の話しはご破算にしたい、娘さんがどうとかではなく、失礼ながらロシアの民度が問題なのです」
「民度?」

「小さい鍋の中で、お前が私の栄養を取った、など、自分だけが良ければとの姿勢が出れば、小さい鍋の中で煮豆が出来るだけ」

「しかしどこの国でも……」
「日傘ならそれもよし、しかし小鍋の中では……資格のある者を自ずと選ぶことになる……」

「火星は小鍋というわけか……まさか最後の審判が来るとはな……オーナー、それでも構わぬからお願いしたい、小さな日傘を、さしかけてはくれぬか?」

「火星植民の話しは約束できません、これは誰にも約束などしていません、私としても何とか日傘で済ませたいし、努力はしている」

「正直努力するとしか言えないのです、私は縁を大事にしています、貴国と私は縁が薄い……私にも従わなければならぬ約束事もありますし……ここで縁を深くしても……守れるかどうか……」

「日傘なら、お考えいただける余地があると、とれますが」
「……」
「オーナー、貴女は縁を大事になされるとか、ならこうお考えいただけませんか?」
「貴女の配下は、ロシアと何らかの交渉をしようと接触してきた、なにか理由があったはず」

「その理由を、ロシアが無条件で承諾し実行に移せば、貴女はロシアに対して、何らかの負債を持つことになる、それを縁と、とっていただけませんか?」

「私を脅すのですか?」
 ナノマシンがざわつき始めます。

「お気に召さぬなら、私の命をさし出しましょう」
「妻も娘も、ロマノフの一族すべての命を捧げましょう」
「だからロシアの民にも、貴女のいう日傘をさしかけていただきたい」

 困った……私は出来れば断りたい……しかし相手は命をかけて交渉している……これでは押し切られる……

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