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第二十四章 ロシアの秋波

ロシアの献上品

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 ロシア帝国は、このテラにおいては、厳然と存在して機能しています。

 ニコライ2世の次の皇帝であるミハイル2世は、ロシアを長く統治して、この皇帝の時、帝位継承法第四条の貴賤結婚の禁止が廃止されます。

 このテラでは東方教会は存在しませんが、コンスタンチノープルが陥落して、ローマ帝国が滅亡するときに、キリスト教の最高指導者としての法王位は、当時対立していたローマの総司教に譲られたのです。

 それに不満を持つ一派が、当時のルーシと呼ばれていた地に新天地を求めたのです。
 これがテラでいうところの、ルーシ教会と云うものです。
 このルーシ教会はこののち、ロシア正教会と名を変えますが、その影響力が、その地にローマ帝国の文化をもたらし、その結果、成立したのがロシア帝国なのです。

 その為に、ロシア帝国の帝位継承法の第一条には、皇帝はロシア正教徒であることと、明記されています。
 第三条には、皇帝及び高位の帝位継承者の妻と母は、結婚時において、ロシア正教徒であることとありました。
 これは第二次大戦の最中に廃止されています。
 欧米の援助が必要な為です。

 1938年に崩御したミハエル2世には男子がなく、帝位はアレクサンドル3世の弟、ウラジーミル大公の家系に移ります。
 ニコライ3世です。
 この皇帝のもと、ロシア帝国は第二次大戦を戦い抜き、とんでもない損害を出しながらも、1944年に勝利します。

 しかし勝利の代償として、ロシアは英米の要求を飲み、東欧支配を放棄せざる得ませんでした。

 その代わり日本に近づき、北樺太を譲る代わりに、日本の中国における全権益を、受け取る事に成功したのです。
 東北三省と内蒙古の権益です。
 現在、旅順は直轄地、大連はロシア帝国の租借地です。

 ニコライ3世は1992年に崩御し、孫のニコライ4世が即位、当初は母親の助けを得ていましたが、2002年に親政を開始して、現在にいたります。

 ロシア帝国は戦前の日本のようですので、皇帝の専制政治はありませんが、その力は内閣と同等程度はもっています。

 毎日午前中に、内閣宰相と会談をするのが習わしで、内閣宰相の助言を受けて、勅令をだしますが、その勅令が効力を発揮するには、内閣宰相の副署が必要なのです。

 つまり内閣宰相は、皇帝勅令に関しては、拒絶の意思表示が可能なのです。
 また各地に皇帝の財産が、独立して存在しています。

 ニコライ4世は1982年生まれ、1男1女があり、その娘がロマノフの娘と云われるナスターシャ大公女です。
 当年、二十二歳、絶世の美女といわれています。
 ナスターシャ・ウラジーミロヴナ・ロマノヴァ、これが名前だそうです。

 そしてニコライ4世は、外交問題について、内閣宰相の極秘の要請をうけたのです。

 ここはサンクト・ペテルスブルク南東25KMの郊外、ツァールスコエ・セローニあるエカテリーナ宮殿。
 全長325メートルの、壮麗なロココ調建築で、ロシア帝国の夏の宮殿。

 すこし時間を遡った六月中旬のある日、ニコライ4世が、娘のナスターシャ・ウラジーミロヴナ・ロマノヴァ大公女の謁見を受けています。

「お父様、なんで私が愛人に、ならなければならないのですか?それも私が相手を誘惑するのですか?」
「そうしてもらいたい」
「しかも、相手は日本の……しかも女とのこと、このロシア大公女たるナスターシャが、何故!」

「ナスターシャには不憫だが、帝国の命運と幾多の国民のすべてが、この件には掛かっている」
「はっきりいえば、ロシア大公女たるナスターシャに、その相手の女の奴隷になってもらう、相手は望んではいない、そこでロシア一の美女である汝に、犠牲になって欲しい」

「このロシア帝国が、そこまで膝を屈しなければならぬのですか!」
「そうだ、相手とはナーキッドのオーナー」
「ナーキッド……」

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