惑星エラムより愛をこめて 第二部 大和撫子編 【ノーマル版】

第二十四章 ロシアの秋波

中国は世界から断罪された

　アフリカの資源争奪は、いよいよきな臭くなっています。
　もともとロシア政府と軍部は、満州問題で中国と一戦も辞さない覚悟を固めています。
　その点、中国は地方政府というものが、中央政府に逆らうことがあります。
　どうやら一枚岩ではないように見えます。

　第二次大戦前に存在した、軍閥が生き残っているのです。
　呉佩孚（ごはいふ）の直隷派、段祺瑞（だんきずい）安徽派、閻錫山（えんしゃくざん）の山西派、張之江（ちょうしこう）の西北派、李宗仁（り　そうじん）の新広西派などなど……

　国民党の北伐は無かったようで、各地の軍閥を取り込んで、早めに終わった第二次大戦のおかげか、満州以外の中国大陸を占有しています。

　どうやら奉直戦争は第一次も第二次も、直隷派が勝利したようで、張作霖（ちょうさくりん）の奉天派は力を持ち得なかったようです。

　そのおかげで、中央政府の統制が効かない恐れがあります。
　状況によっては暴発もしそうです。
　そのような中国ですので、全面戦争をすれば、ロシアが有利かもしれませんが、多分勝ちきれないでしょう。

　その事はロシアも十分に、判っているはずです。

　張作霖亡きあと、奉天派は日本の満州国に従属、その後、日本が撤退すると、ロシア寄りの傀儡政権として、中華モンゴル共和国として存続することになります。

　満州問題とは、決着のついていない奉直戦争の延長なのです、怨念が怨念を呼び、手打ちは無いと思われます。

　ロシアの戦略とは、先制核攻撃を全力で実施した後、満蒙から攻め入り北京を占領、奉天派による河北あたりの占領と、それによる国民党支配の分裂、各軍閥を国家として認め、統一国家をヨーロッパのように分裂させることにあります。

　つまり中国を大陸国家とせず、春秋戦国の七雄程度の中型国家群を望んでいるようです、もし現実になれば、ロシアにとっては目障りな隣人は、可愛い隣人達になります。

　腹を固めたロシアに対して、何をいっても無駄なのですが、中国は罵声を浴びせています。
　ロシアは巧妙です、一枚も二枚も、えげつなさでは上のようです。

　ロシアはアフリカ中南部での、中国のやり方を告発しています。
　証拠を提出して、国連に訴えたのです。

　証拠は本物か偽物かは、定かではありませんが、確かに提出された物をみれば、中国のおぞましい蛮行が映っています……
　どこまで本当なのでしょうね……真相は闇の中……

　これがアメリカの世論を動かすことになります。
　イエローペーパーが中国は野蛮と、裏も取らずに無責任にはやし立てています。
　ある意味、可哀想……
　日本は不気味に沈黙を守っています。

　そんな時、台湾の基隆に駐留する米軍に向かって、ロケット弾が中国側から撃ち込まれるという事件が勃発しました。
　米兵が三人死亡して、その葬儀がアメリカ国内で報道され、アメリカの世論は一気に硬化、満州問題以外にも、台湾問題が発生しました。

　そして米軍は責任者の引き渡しを要求、拒絶されると、ついに中国領台湾に進駐を始めたのです……
　中国はまだ台湾に、それほど軍を展開させていない為に、台湾は簡単に占領されました。

　そして日本統治時代に、日本に協力した人々を政治犯として、戦犯としていたことが明るみに出ます。
　日本との台湾処理の協定で、これに対して罪を問わぬ、そう明記されていたのにです。

　国を裏切った非国民、そう断罪されたのです、国家間の協定より、人々の恨みを国家が優先したのでしょうが、さすがに日本が怒りました。

　誰も中国と話しが出来ない、約束事が簡単に反故されてはね……

　これで決定的に、中国は味方がいなくなりました。

　ロシアはこれを見逃しません、すぐに国連でアメリカの援護に回り、そして日本に近づきます。

　そこにアフリカで中国とロシアの軍が接触し、散発的ながら砲火を交えたと速報がありました。
　世界は中国の中に膨張と覇権を見出します。
　ますますロシアのロビー活動は活発になっています、アメリカが肩入れを始めたからです。
　金融機関も中国には良い顔をしなくなりました。

　こうして中国は世界から断罪されたのです。