上 下
85 / 131
第二十三章 六月の花嫁

春の大運動会

しおりを挟む

 あの屋形船の大宴会が、よほど楽しかったのか、近頃リディル姉妹がヤットン節を歌うのには閉口します。
 なぜか私が校長に呼ばれて、えらく苦情をいわれたましたよ。

 丁寧に謝って、そのままにしておきました。
 何といっても、二人とも普通の少女ではありませんし、特にココさんは楽しい事が少ない生活でしたから……
 しかし超がつくほどの碧い眼の美少女が、ヤットン節を歌うのは何といえばいいのか……言葉に困りますね……

 皆で歌って踊って楽しかった……

 所でオディール女学館でも、運動会というものがあります、六月の中旬、梅雨の直前に行うようです。

 でもそんなに大規模な物ではないとのことです、なんでも女学生の事ゆえに、怪我をしないようにとの配慮だそうですが、なんか教育上おかしいとは思いませんか?

 この運動会、オディール女学館では校内運動レクレーションと呼んでいるそうです……
 騎馬戦は絶対にないのでしょうね、少しさびしい気がしますが……

 ホームルームの時に景山先生が、
「来週の土曜日に校内運動レクレーションがあるのは知っていると思いますが、今日は誰がどの競技に出るかという事を決めたいと思います」
 寝耳に水だったのですよ……

 オディール女学館は1学年4クラスですが、この校内運動レクレーションは1学年から8学年の1組、2組、3組、4組の四チーム、つまりクラス対抗となっています。

 100メートル競走、八名
 400メートルリレー競走、四名
 借り物競争、二名
 障害物競走、八名
 パン食い競走、八名
 綱引き、全員
 鈴割り、全員
 棒倒し、全員
 フォークダンス

 これを学年別に行うそうです、ただ最後のフォークダンスは親睦の意味で全員で踊るとのことです。

 競争には、必ず一回はエントリーしなければならないそうで、級長の沙織さんが、「吉川様は何に出ますか?」と聞いてくれますので、
「最後に残ったエントリーで構いませんが?」
「いいのですか?」

「皆さんが、やりたがらない競技があるのですか?」
「実は借り物競争……クラスの級長は必ず出なければならないのですが、後一人……」
「それでいいでいよ」

「その……借り物B競争を……お願い出来れば……」
 私は笑いそうになりました、よほど借り物B競争はえげつないのでしょうね。

「何でも出ますよ、そのBというものは、なにを借りてくるのですか?」
「必ず食堂の備品になるのですが、どれも大きいか重いか長いか、借り物は決まっています」

「四年生からはマシな順に、給食室の大きな招き猫、小麦粉の大袋、テーブル、大鍋」
「大鍋って、あのでっかい鍋?」

「一応はすべて台車の上に乗っていますが、とても重いので……」
 たしかにあの大鍋は、いくら台車に乗っているとしても、五右衛門風呂と間違えそうな代物ですからね。

 そういうことで、私は借り物B競争に出ることになりました。

「えっ、借り物Bに出るのですか?」
 聡子さんが気の毒そうな顔をします。
 聞いてみますと、聡子さんも出たことがあるそうです。

 物の見事に大鍋を当てたそうで、
「大変でした、台車を押していたら、次の日に手足が筋肉痛になりました」
「でもそれぐらいで、なぜそんなにも嫌がるのでしょう?」
「それは皆、女ですから、筋肉がつくのは誰でも嫌ですから……」
 それだけ?
 私には理解できません……

しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

異世界でぺったんこさん!〜無限収納5段階活用で無双する〜

KeyBow
ファンタジー
 間もなく50歳になる銀行マンのおっさんは、高校生達の異世界召喚に巻き込まれた。  何故か若返り、他の召喚者と同じ高校生位の年齢になっていた。  召喚したのは、魔王を討ち滅ぼす為だと伝えられる。自分で2つのスキルを選ぶ事が出来ると言われ、おっさんが選んだのは無限収納と飛翔!  しかし召喚した者達はスキルを制御する為の装飾品と偽り、隷属の首輪を装着しようとしていた・・・  いち早くその嘘に気が付いたおっさんが1人の少女を連れて逃亡を図る。  その後おっさんは無限収納の5段階活用で無双する!・・・はずだ。  上空に飛び、そこから大きな岩を落として押しつぶす。やがて救った少女は口癖のように言う。  またぺったんこですか?・・・

スキルイータ

北きつね
ファンタジー
 俺は、どうやら死んでしまうようだ。  ”ようだ”と言ったのは、状況がよくわからないからだ、時間が止まっている?  会社のメンバーと、打ち上げをやった、その後、数名と俺が行きつけにしているバーに顔をだした。デスマ進行を知っているマスターは、何も言わないで、俺が好きな”ギムレット”を出してくれる。  2杯目は、”ハンター”にした、いつものメンバーできているので、話すこともなく、自分たちが飲みたい物をオーダした。  30分程度で店を出る。支払いは、デポジットで足りるというサインが出ている。少なくなってきているのだろう事を想定して、3枚ほど財布から取り出して、店を出る。雑踏を嫌って、裏路地を歩いて、一駅前の駅に向かった。  電車を待つ間、仲間と他愛もない話をする。  異世界に転生したら、どんなスキルをもらうか?そんな話をしながら、電車が来るのを待っていた。 ”ドン!”  この音を最後に、俺の生活は一変する。  異世界に転移した。転生でなかったのには理由があるが、もはやどうでもいい。  現在、途方にくれている。 ”神!見て笑っているのだろう?ここはどこだ!”  異世界の、草原に放り出されている。かろうじて服は着ているが、現地に合わせた服なのだろう。スキルも約束通りになっている。だが、それだけだ。世界の説明は簡単に受けた。  いきなりハードプレイか?いい度胸しているよな?  俺の異世界=レヴィラン生活がスタートした。 注意)  ハーレムにはなりません。  ハーレムを求める人はこの作品からは探せないと思います。

どうやら悪役令嬢のようですが、興味が無いので錬金術師を目指します(旧:公爵令嬢ですが錬金術師を兼業します)

水神瑠架
ファンタジー
――悪役令嬢だったようですが私は今、自由に楽しく生きています! ――  乙女ゲームに酷似した世界に転生? けど私、このゲームの本筋よりも寄り道のミニゲームにはまっていたんですけど? 基本的に攻略者達の顔もうろ覚えなんですけど?! けど転生してしまったら仕方無いですよね。攻略者を助けるなんて面倒い事するような性格でも無いし好きに生きてもいいですよね? 運が良いのか悪いのか好きな事出来そうな環境に産まれたようですしヒロイン役でも無いようですので。という事で私、顔もうろ覚えのキャラの救済よりも好きな事をして生きて行きます! ……極めろ【錬金術師】! 目指せ【錬金術マスター】! ★★  乙女ゲームの本筋の恋愛じゃない所にはまっていた女性の前世が蘇った公爵令嬢が自分がゲームの中での悪役令嬢だという事も知らず大好きな【錬金術】を極めるため邁進します。流石に途中で気づきますし、相手役も出てきますが、しばらく出てこないと思います。好きに生きた結果攻略者達の悲惨なフラグを折ったりするかも? 基本的に主人公は「攻略者の救済<自分が自由に生きる事」ですので薄情に見える事もあるかもしれません。そんな主人公が生きる世界をとくと御覧あれ! ★★  この話の中での【錬金術】は学問というよりも何かを「創作」する事の出来る手段の意味合いが大きいです。ですので本来の錬金術の学術的な論理は出てきません。この世界での独自の力が【錬金術】となります。

学校ごと異世界に召喚された俺、拾ったスキルが強すぎたので無双します

名無し
ファンタジー
 毎日のようにいじめを受けていた主人公の如月優斗は、ある日自分の学校が異世界へ転移したことを知る。召喚主によれば、生徒たちの中から救世主を探しているそうで、スマホを通してスキルをタダで配るのだという。それがきっかけで神スキルを得た如月は、あっという間に最強の男へと進化していく。

劣悪だと言われたハズレ加護の『空間魔法』を、便利だと思っているのは僕だけなのだろうか?

はらくろ
ファンタジー
海と交易で栄えた国を支える貴族家のひとつに、 強くて聡明な父と、優しくて活動的な母の間に生まれ育った少年がいた。 母親似に育った賢く可愛らしい少年は優秀で、将来が楽しみだと言われていたが、 その少年に、突然の困難が立ちはだかる。 理由は、貴族の跡取りとしては公言できないほどの、劣悪な加護を洗礼で授かってしまったから。 一生外へ出られないかもしれない幽閉のような生活を続けるよりも、少年は屋敷を出て行く選択をする。 それでも持ち前の強く非常識なほどの魔力の多さと、負けず嫌いな性格でその困難を乗り越えていく。 そんな少年の物語。

【書籍化】パーティー追放から始まる収納無双!~姪っ子パーティといく最強ハーレム成り上がり~

くーねるでぶる(戒め)
ファンタジー
【24年11月5日発売】 その攻撃、収納する――――ッ!  【収納】のギフトを賜り、冒険者として活躍していたアベルは、ある日、一方的にパーティから追放されてしまう。  理由は、マジックバッグを手に入れたから。  マジックバッグの性能は、全てにおいてアベルの【収納】のギフトを上回っていたのだ。  これは、3度にも及ぶパーティ追放で、すっかり自信を見失った男の再生譚である。

異世界転生したのだけれど。〜チート隠して、目指せ! のんびり冒険者 (仮)

ひなた
ファンタジー
…どうやら私、神様のミスで死んだようです。 流行りの異世界転生?と内心(神様にモロバレしてたけど)わくわくしてたら案の定! 剣と魔法のファンタジー世界に転生することに。 せっかくだからと魔力多めにもらったら、多すぎた!? オマケに最後の最後にまたもや神様がミス! 世界で自分しかいない特殊個体の猫獣人に なっちゃって!? 規格外すぎて親に捨てられ早2年経ちました。 ……路上生活、そろそろやめたいと思います。 異世界転生わくわくしてたけど ちょっとだけ神様恨みそう。 脱路上生活!がしたかっただけなのに なんで無双してるんだ私???

超越者となったおっさんはマイペースに異世界を散策する

神尾優
ファンタジー
山田博(やまだひろし)42歳、独身は年齢制限十代の筈の勇者召喚に何故か選出され、そこで神様曰く大当たりのチートスキル【超越者】を引き当てる。他の勇者を大きく上回る力を手に入れた山田博は勇者の使命そっちのけで異世界の散策を始める。 他の作品の合間にノープランで書いている作品なのでストックが無くなった後は不規則投稿となります。1話の文字数はプロローグを除いて1000文字程です。

処理中です...