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第二十三章 六月の花嫁
春の大運動会
しおりを挟むあの屋形船の大宴会が、よほど楽しかったのか、近頃リディル姉妹がヤットン節を歌うのには閉口します。
なぜか私が校長に呼ばれて、えらく苦情をいわれたましたよ。
丁寧に謝って、そのままにしておきました。
何といっても、二人とも普通の少女ではありませんし、特にココさんは楽しい事が少ない生活でしたから……
しかし超がつくほどの碧い眼の美少女が、ヤットン節を歌うのは何といえばいいのか……言葉に困りますね……
皆で歌って踊って楽しかった……
所でオディール女学館でも、運動会というものがあります、六月の中旬、梅雨の直前に行うようです。
でもそんなに大規模な物ではないとのことです、なんでも女学生の事ゆえに、怪我をしないようにとの配慮だそうですが、なんか教育上おかしいとは思いませんか?
この運動会、オディール女学館では校内運動レクレーションと呼んでいるそうです……
騎馬戦は絶対にないのでしょうね、少しさびしい気がしますが……
ホームルームの時に景山先生が、
「来週の土曜日に校内運動レクレーションがあるのは知っていると思いますが、今日は誰がどの競技に出るかという事を決めたいと思います」
寝耳に水だったのですよ……
オディール女学館は1学年4クラスですが、この校内運動レクレーションは1学年から8学年の1組、2組、3組、4組の四チーム、つまりクラス対抗となっています。
100メートル競走、八名
400メートルリレー競走、四名
借り物競争、二名
障害物競走、八名
パン食い競走、八名
綱引き、全員
鈴割り、全員
棒倒し、全員
フォークダンス
これを学年別に行うそうです、ただ最後のフォークダンスは親睦の意味で全員で踊るとのことです。
競争には、必ず一回はエントリーしなければならないそうで、級長の沙織さんが、「吉川様は何に出ますか?」と聞いてくれますので、
「最後に残ったエントリーで構いませんが?」
「いいのですか?」
「皆さんが、やりたがらない競技があるのですか?」
「実は借り物競争……クラスの級長は必ず出なければならないのですが、後一人……」
「それでいいでいよ」
「その……借り物B競争を……お願い出来れば……」
私は笑いそうになりました、よほど借り物B競争はえげつないのでしょうね。
「何でも出ますよ、そのBというものは、なにを借りてくるのですか?」
「必ず食堂の備品になるのですが、どれも大きいか重いか長いか、借り物は決まっています」
「四年生からはマシな順に、給食室の大きな招き猫、小麦粉の大袋、テーブル、大鍋」
「大鍋って、あのでっかい鍋?」
「一応はすべて台車の上に乗っていますが、とても重いので……」
たしかにあの大鍋は、いくら台車に乗っているとしても、五右衛門風呂と間違えそうな代物ですからね。
そういうことで、私は借り物B競争に出ることになりました。
「えっ、借り物Bに出るのですか?」
聡子さんが気の毒そうな顔をします。
聞いてみますと、聡子さんも出たことがあるそうです。
物の見事に大鍋を当てたそうで、
「大変でした、台車を押していたら、次の日に手足が筋肉痛になりました」
「でもそれぐらいで、なぜそんなにも嫌がるのでしょう?」
「それは皆、女ですから、筋肉がつくのは誰でも嫌ですから……」
それだけ?
私には理解できません……
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