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第二十章 宮川遊郭六条楼
日本の婚姻法を選べます
しおりを挟む今日は東京へ帰る日、夜遅くの新幹線に乗る手はずです。
東京駅には冨田さんのご両親、華宮公爵ご夫妻、鈴木順五郎さんご夫妻が待っています。
正式に我妹子(わぎもこ)証文を受けるためです。
こちらからは茜さんと、なぜかジョン・デヴィッドソンさんが立ち会うそうです。
アリシアさんも急遽来るそうです。
わざわざ正式に渡航してくるのですから、話があるのでしょう。
今日もホテルの特別室で雑魚寝……
華宮さんと富田さんの激しいこと……おまけにココまで壊れてくるし……
三人が裸で、くねくねと絡みついてくるのです、蛇ですか?
「仕方ないとは思いますが、昨日の女たち絶対にきますよ、今なら鈴木聡子さんの気持ち判ります」
富田沙織さんのお言葉です。
「近衛の怪我した女も、来ると考えられます、私なら杖をついても、今日直談判にきます」
「親の同意を何が何でも取り付けて、証文は後でもと、流れを作っておきます」
「他の近衛の女も、望む女は来ると思います」
と、洋子さんの予想です。
この特別室、四五人は入れるお風呂がついています。
軽くシャワーなんぞ浴びて、遅い朝食を済ませましょうか……
でもその前に……
朝の十時というのに私、色魔ですね、でも絶好調……
なんか元気が出てきました。
三人はというと余韻に浸っています。
身支度をして、ルームサービスに朝食を頼みます。
特別室っていいですね、朝食タイムは自由ですから。
すこし量を多めに頼みました。
ルームサービスの方がきます、年若い娘さんです。
ホテルの方たち、とくに娘さんたちは、皆さん、私を見るとおどおどしています。
洋子さんによれば、興奮しているとの事です。
女を長くしていますが、このあたりの感覚は私にはわかりません。
「ありがとうございます」と言いますと、「いいえ」とかろうじて返事はしてくれます。
どうもこの方、私を嫌っているようにしか見えないのですがね……
富田さんが「あの方の気持ち、痛いほどわかりますわ」
どう判るのかが、私にはわからないのです。
四人で朝食を食べて、この後四時ごろまではあいていますので、最後の京都を満喫する計画を話しています。
食事中にフロントから電話が掛かります。
富田さんが「私が出ます」といって、電話を取りました。
なんか会議室があいているか聞いています。
「吉川様、近衛の婦人士官さんたちがやってこられました、六人と一人……」
「一人って?」
「近衛師団長です」
少々あわてました。
「軍服、軍服……」、急いで着替えをしています、三人が手伝ってくれます。
そんな中、またフロントから電話が……
今度はココさんが出てくれました。
「ミコさま、昨日の尼さんが、女性とともにやってこられました、フロントが会議室にお通ししておきますと云っていました」
!
まずい、かち合うではありませんか!
華宮洋子さんと富田沙織さんの手が止まります。
「仕方ありません、とにかく急ぎましょう」
「ココさん、お留守番をお願いね」
ココさんをお部屋へ置いて、三人で会議室へ……
案の定、近衛師団長とともに、六人の婦人士官さんたち……
尼住職様の横に、昨日の十六人が座っています。
対照的な絵柄です、ただ師団長と尼さんが、なにやらお話中です。
「その娼妓を救った?観音菩薩の化身?そうですか、やはり閣下はこの世の人ではないのですな」
「その士官さんを背負って行軍したのですか?それはすごい」
「しかしお嬢様はアメリカ国籍と聞きましたが、それでは我妹子(わぎもこ)は無理では?」
「えっ、協定ができている?特別永住権を持つ者には関係国の婚姻法を選択できる?この六月一日から?」
聞こえましたよ、知らぬ間に、私は特別永住権を持っているようです。
例のごとく、頭の中でエールさんを呼び出し聞きますと、私はアメリカ国籍で、日本以外にイギリスとフランスとドイツ、そしてアイスランドと法王領の、特別永住権を持っているそうです。
この特別永住権には、先程の協定が付随しているそうです。
つまり協定国の特別永住権を持つ者は、協定各国の相手となら、希望する婚姻法を選択でき、協定各国の戸籍には、特別永住権により選択した婚姻法が記載される。
その選択された婚姻法の当事国が、責任を持って特別永住婚姻簿を管理する。
私は日本の婚姻法を、特別永住権をもつこの六カ国で、選択できるわけです。
何というお手盛り……何という素早さ……エールさん、凄いですね……
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