惑星エラムより愛をこめて 第二部 大和撫子編 【ノーマル版】

第十七章 足音は聞こえない

お金持ち、なのです

　本当にナーキッドオーナーの不祥事で、世界は盛り上がっています。
　でもさすがに、南インドの核戦争は目をそらすわけにはいかないようですが、もはや手遅れです。

　しかも世界の論調は、好意的ではありません、さらに初めての核戦争ではありますが、まだ激烈に戦争は続いているのです。
　互いに自国の莫大な被害を、隠しているのです。

　勇ましいニュース映像ばかりが、流れています。
　その為、世界は嫌になっているのです。
　好きにさせればいい、そのような思いが、世界に蔓延しているのです。

　その結果、世界は見たい物を見るのです。
　この時点で、アフリカの内乱は忘れられています。

　ネイサンさんたちの報告では、どうやらオレンジ共和国が優勢で、占領地で、ナチスのように虐殺を繰り返しています。

　しかし、生物兵器としてまき散らしたエボラ出血熱、改良されて空気感染するため、オレンジ共和国で蔓延しだしたのです。
　しかもじりじりと、サハラを北上しだしています。

　日本は平和です、アメリカもヨーロッパも平和です、どこかで戦争をしているぐらいです。
　誰も核の惨状を知らない世界ですから……
　私も、取りあえずは見たい物を見ましょう。

　いま私はとんでもないほどのお金持ち……
　ブラックホールの中で作った『金』が減りません。
　ナーキッドからの配当金が莫大なのです。
　ロッシチルド財閥もディヴィドソン財閥も鈴木財閥も、ますます繁栄しています。

　世界中が、ナーキッドのオーナーについて、推測をしています。
　中には宇宙人とまで、論じているものもありますが笑えませんね……

　とにかく私は、オディール女学館へせっせと通い、それなりに女を楽しんでいる、そんな日々です。

　ある時、級長の富田さんが、
「吉川さん、放課後、銀ブラでもしませんか？」
「それは嬉しいお誘いですが……」
「お迎えの近衛の車の事ですか？」
「ええ」

「こっそりと裏口からでて、何食わぬ顔で、校門が閉じる五時までに、戻ってくればよろしいのでは？」
「アテネさんとアリスさんも、一緒ではいけませんか？」
「悪い事は皆で分けなければね」

　で、こっそりと抜け出しました。
　四人で麹町駅から東京メトロ有楽町線で銀座一丁目駅へ、やはり女ですから、スウィーツを食べに一目散です。

　アテネさんとアリスさんは、おのぼりさん状態です、「ミコ様、あれは、こちらは」、その騒々しい事、まだアテネさんはいいのですが、アリスさんは爆発状態です。
　きゃあきゃぁと騒がしく、フルーツが一杯のはいったロールケーキなどを食べています、とても注目を浴びています。

「ねえねえ、オディール女学館が来ているわ、珍しいわね、あんなお嬢様学校がこんなところへ来るなんて……」

「富田さん、かなり視線が痛いですが……」
「気にすると、きりがないですよ、確かにオディール女学館と華族女学校の生徒は、寄り道などしませんから、私は別ですが」
「そうなのですか？」

　私たち色気なしです、喰い気ばかりです。
　あっという間に四時半、必死で学校の裏口に戻り、何食わぬ顔で五時に下校しました。
　お迎えの近衛の車が、しびれを切らして待っていました。