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第四十四章 テラの天変地異

はじまり

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「では明日までに、法王領にはこの天変地異の事を通知しておいてください」
「そしてマルタ騎士団領は何とか守りますとも伝えておいてください」
「出来ましたらマルタへ退避していただきたい」

 シャルル枢機卿が、
「すぐに、通知いたしますが、聖下は最後でなければ……」
「やはりそうですか……対処いたします」

「ギヨーム・ド・ヴィシエ・テンプル騎士団総長、マルタ騎士団総長は、信のおける者ですか?」
「保障できます」
「では貴方からその者に現在の状況と、ナーキッドは法王領との約束を履行する、と通知してください」

 マルスの新年の朝の日差しは穏やかですが、ここオリンポス山のナーキッドの公邸での会議は、穏やかとはとてもいえません。
「スーパープルームですか……」

「私は皆さんの意見を聞きたい、このままではテラはいいようになりません」
「今でもナーキッドが引き渡した機材というカンフル剤で、かろうじてもちこたえている環境です」
「スーパープルームをもちこたえるとは思えません」

「しかし四つのスーパーボルケーノは確実に起こります」
「ただでさえ危機的な超巨大噴火ですが、スーパープルームを抑えれば、この四つの噴火の規模は倍増します」
「つまり誰かが死ぬという事です、その誰かを選ぶのは私たちでは出来ないとは思えませんか?」

「たしかに……しかし彼らは非介入を要求したのですよ……」
「感謝されない相手には、何をしても感謝されない」
「たとえ命を救っても、非難されるのは必須、それは私たちより、ミコ様が良くご存じのはずですが……」

「確かにそれが正解、それしかないのですが、私はこのテラの出来事に対して、数十億の人々を見殺しにしてきたのです」
「マルスの今は、この犠牲の上に成り立っています」
「今一度チャンスを与えたいと考えるのですが、それではいけないでしょうか?」

「どのようにチャンスを提示するのですか?」
「昨日、私は参与の方に、この問題に対して意見を求めたのです
「その意見に私は賛同しました、それが今一度のチャンスです、イエス会総長その意見を披露してくれませんか」

 このイエス会総長の提案は了承されました。
 すぐに国連に通知されました、そして回答期限は一月六日とも……

 小笠原、デヴォン島、マン島、カムチャッカには警報が出されました。
 そしてこの事が発表されました。
 意外に人々は平静です、でも念の為に海には入らない、出ない事を徹底しておきました。

 ナーキッドのテラ駐留部隊、元の日本の近衛師団は臨戦態勢、海軍の軍港は湾の入り口を閉め切りました。
 この中は大丈夫です、防衛用のバリアなどの装置が完全にこの四地域をテラと切り離します。
 要するに、地殻から浮き上がっているのです。

 連絡鉄道は、全てマイクロワープですから何ら問題はありませんし、なおマルタ島はこれに準ずる扱いです。
 規模は小さいですが、人が通れる通路を開通させました。

 国連ではこの問題を討議していますが議論百出……纏まりません、しかも建設的な意見は出ません。
 皆自分の地域の被害が増えるのは反対なのです。
 南米は当然賛成ですが……

 そこで妥協案が出てきました。
 このナーキッドの提案は予測に過ぎない。
 たしかに極東の二つの火山は巨大噴火を始めたが、それをもってして、スーパーボルケーノ、ましてスーパープルームなどが起こるというのは、根拠のない推測と……

 そしてこのナーキッドの提案は拒否されたというか、侮蔑の言葉と共に返ってきました。

「我らの事にナーキッドが口出す事はない、不愉快である」
 公式文書で返事がありました……

 救われない人々は、自ら救われないように行動する……
 イシス姉さんの言葉でした。
 フランシスコ・ロドリゲス・イエス会総長の悲しそうな顔は忘れられません。

 そして一月の十三日、鬼界カルデラが巨大噴火を始めました。

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