128 / 133
第四十四章 テラの天変地異
はじまり
しおりを挟む「では明日までに、法王領にはこの天変地異の事を通知しておいてください」
「そしてマルタ騎士団領は何とか守りますとも伝えておいてください」
「出来ましたらマルタへ退避していただきたい」
シャルル枢機卿が、
「すぐに、通知いたしますが、聖下は最後でなければ……」
「やはりそうですか……対処いたします」
「ギヨーム・ド・ヴィシエ・テンプル騎士団総長、マルタ騎士団総長は、信のおける者ですか?」
「保障できます」
「では貴方からその者に現在の状況と、ナーキッドは法王領との約束を履行する、と通知してください」
マルスの新年の朝の日差しは穏やかですが、ここオリンポス山のナーキッドの公邸での会議は、穏やかとはとてもいえません。
「スーパープルームですか……」
「私は皆さんの意見を聞きたい、このままではテラはいいようになりません」
「今でもナーキッドが引き渡した機材というカンフル剤で、かろうじてもちこたえている環境です」
「スーパープルームをもちこたえるとは思えません」
「しかし四つのスーパーボルケーノは確実に起こります」
「ただでさえ危機的な超巨大噴火ですが、スーパープルームを抑えれば、この四つの噴火の規模は倍増します」
「つまり誰かが死ぬという事です、その誰かを選ぶのは私たちでは出来ないとは思えませんか?」
「たしかに……しかし彼らは非介入を要求したのですよ……」
「感謝されない相手には、何をしても感謝されない」
「たとえ命を救っても、非難されるのは必須、それは私たちより、ミコ様が良くご存じのはずですが……」
「確かにそれが正解、それしかないのですが、私はこのテラの出来事に対して、数十億の人々を見殺しにしてきたのです」
「マルスの今は、この犠牲の上に成り立っています」
「今一度チャンスを与えたいと考えるのですが、それではいけないでしょうか?」
「どのようにチャンスを提示するのですか?」
「昨日、私は参与の方に、この問題に対して意見を求めたのです
「その意見に私は賛同しました、それが今一度のチャンスです、イエス会総長その意見を披露してくれませんか」
このイエス会総長の提案は了承されました。
すぐに国連に通知されました、そして回答期限は一月六日とも……
小笠原、デヴォン島、マン島、カムチャッカには警報が出されました。
そしてこの事が発表されました。
意外に人々は平静です、でも念の為に海には入らない、出ない事を徹底しておきました。
ナーキッドのテラ駐留部隊、元の日本の近衛師団は臨戦態勢、海軍の軍港は湾の入り口を閉め切りました。
この中は大丈夫です、防衛用のバリアなどの装置が完全にこの四地域をテラと切り離します。
要するに、地殻から浮き上がっているのです。
連絡鉄道は、全てマイクロワープですから何ら問題はありませんし、なおマルタ島はこれに準ずる扱いです。
規模は小さいですが、人が通れる通路を開通させました。
国連ではこの問題を討議していますが議論百出……纏まりません、しかも建設的な意見は出ません。
皆自分の地域の被害が増えるのは反対なのです。
南米は当然賛成ですが……
そこで妥協案が出てきました。
このナーキッドの提案は予測に過ぎない。
たしかに極東の二つの火山は巨大噴火を始めたが、それをもってして、スーパーボルケーノ、ましてスーパープルームなどが起こるというのは、根拠のない推測と……
そしてこのナーキッドの提案は拒否されたというか、侮蔑の言葉と共に返ってきました。
「我らの事にナーキッドが口出す事はない、不愉快である」
公式文書で返事がありました……
救われない人々は、自ら救われないように行動する……
イシス姉さんの言葉でした。
フランシスコ・ロドリゲス・イエス会総長の悲しそうな顔は忘れられません。
そして一月の十三日、鬼界カルデラが巨大噴火を始めました。
0
お気に入りに追加
3
あなたにおすすめの小説
悠々自適な転生冒険者ライフ ~実力がバレると面倒だから周りのみんなにはナイショです~
こばやん2号
ファンタジー
とある大学に通う22歳の大学生である日比野秋雨は、通学途中にある工事現場の事故に巻き込まれてあっけなく死んでしまう。
それを不憫に思った女神が、異世界で生き返る権利と異世界転生定番のチート能力を与えてくれた。
かつて生きていた世界で趣味で読んでいた小説の知識から、自分の実力がバレてしまうと面倒事に巻き込まれると思った彼は、自身の実力を隠したまま自由気ままな冒険者をすることにした。
果たして彼の二度目の人生はうまくいくのか? そして彼は自分の実力を隠したまま平和な異世界生活をおくれるのか!?
※この作品はアルファポリス、小説家になろうの両サイトで同時配信しております。
パーティーを追放されて出て行った少年は、再会した美少女三姉妹のパーティーに迎え入れられる。
竜ヶ崎彰
ファンタジー
「上等だ!こっちから出てってやるよ!!」
ある日、最強の冒険者パーティー「火炎の不死鳥(バーン・フェニキス)」に所属する盗賊(シーフ)ジョブのライアは、「無能」と罵られてパーティーから追放を言い渡され、それに我慢できずにそのままライアはパーティーを脱退した。
路頭に迷っていたライアは、幼馴染の三姉妹と再会し彼女達のパーティーの一員として迎えられる。
三姉妹はパーティーでのライアは盗人のスキルを活かした戦術や彼の真の実力を見て最強パーティーへと成り上がって行った。
一方、火炎の不死鳥はライアが抜けた事でパーティーとしての実力が落ちて行ってしまっていた。
これは無能扱いされてパーティーを抜けた少年と美少女三姉妹による逆転恋愛群像劇である。
異世界転生したのだけれど。〜チート隠して、目指せ! のんびり冒険者 (仮)
ひなた
ファンタジー
…どうやら私、神様のミスで死んだようです。
流行りの異世界転生?と内心(神様にモロバレしてたけど)わくわくしてたら案の定!
剣と魔法のファンタジー世界に転生することに。
せっかくだからと魔力多めにもらったら、多すぎた!?
オマケに最後の最後にまたもや神様がミス!
世界で自分しかいない特殊個体の猫獣人に
なっちゃって!?
規格外すぎて親に捨てられ早2年経ちました。
……路上生活、そろそろやめたいと思います。
異世界転生わくわくしてたけど
ちょっとだけ神様恨みそう。
脱路上生活!がしたかっただけなのに
なんで無双してるんだ私???
司書ですが、何か?
みつまめ つぼみ
ファンタジー
16歳の小さな司書ヴィルマが、王侯貴族が通う王立魔導学院付属図書館で仲間と一緒に仕事を頑張るお話です。
ほのぼの日常系と思わせつつ、ちょこちょこドラマティックなことも起こります。ロマンスはふんわり。
明けの明星〜ルシフェルを宿す少女は己が人生を切り拓く〜
ラウ
ファンタジー
【魔法のiランド大賞2021一次選考突破!!】
第三話まで読めばきっとハマります……!!
ある日、人々に紋章が宿り、異能の力に目覚めた。
自然の脅威そのものとなった者。
偉人が成した伝説・偉業を体現する者。
動物の野生を獲得した者。
特定の概念を支配する者。
そんな四系統の紋章者で溢れる世界。
その世界で実験によって生み出された、ルシフェルの紋章を宿す少女——八神紫姫《やがみしき》。
凍てつく冬を想わせる風体でありながら、その胸には誰よりも熱い想いを秘める男—— 凍雲冬真《いてぐもとうま》。
彼らの運命的な出会いを機に物語は動き出す。
人工天使としての定められた人生などまっぴらごめんだ。
その想いを胸に、八神は仲間との出会い、過去との決別、妹とも呼べる存在と共に困難を乗り越えることで、一人の人間としての人生を歩み始める。
しかし、そんな彼女の人生は順風満帆とはいかない。
彼女の行く先には数多の困難が待ち受ける。
しかし、彼女がその歩みを止めることはない。
世界に幾度暗雲が立ち込めようとも、彼女は諦めない。
明けの明星が如きその少女は、世界に光をもたらす。
転生して異世界の第7王子に生まれ変わったが、魔力が0で無能者と言われ、僻地に追放されたので自由に生きる。
黒ハット
ファンタジー
ヤクザだった大宅宗一35歳は死んで記憶を持ったまま異世界の第7王子に転生する。魔力が0で魔法を使えないので、無能者と言われて王族の籍を抜かれ僻地の領主に追放される。魔法を使える事が分かって2回目の人生は前世の知識と魔法を使って領地を発展させながら自由に生きるつもりだったが、波乱万丈の人生を送る事になる
アルケミア・オンライン
メビウス
SF
※現在不定期更新中。多忙なため期間が大きく開く可能性あり。
『錬金術を携えて強敵に挑め!』
ゲーム好きの少年、芦名昴は、幸運にも最新VRMMORPGの「アルケミア・オンライン」事前登録の抽選に当選する。常識外れとも言えるキャラクタービルドでプレイする最中、彼は1人の刀使いと出会う。
宝石に秘められた謎、仮想世界を取り巻くヒトとAIの関係、そして密かに動き出す陰謀。メガヒットゲーム作品が映し出す『世界の真実』とは────?
これは、AIに愛され仮想世界に選ばれた1人の少年と、ヒトになろうとしたAIとの、運命の戦いを描いた物語。
伯爵夫人のお気に入り
つくも茄子
ファンタジー
プライド伯爵令嬢、ユースティティアは僅か二歳で大病を患い入院を余儀なくされた。悲しみにくれる伯爵夫人は、遠縁の少女を娘代わりに可愛がっていた。
数年後、全快した娘が屋敷に戻ってきた時。
喜ぶ伯爵夫人。
伯爵夫人を慕う少女。
静観する伯爵。
三者三様の想いが交差する。
歪な家族の形。
「この家族ごっこはいつまで続けるおつもりですか?お父様」
「お人形遊びはいい加減卒業なさってください、お母様」
「家族?いいえ、貴方は他所の子です」
ユースティティアは、そんな家族の形に呆れていた。
「可愛いあの子は、伯爵夫人のお気に入り」から「伯爵夫人のお気に入り」にタイトルを変更します。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる