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第四十章 撤退
あらくれ国家がのさばっている
しおりを挟む小笠原ステーションは維持します。
それに連なる島々はナーキッドへ移管されています。
また母島とつながっていた土地は、長崎の端島と東京湾の第二海保だけを残して、あとは全て廃棄、国連からの要請で、何とかこの連絡ステーションのいくつかは、残す事になったのです。
特に第六台場は強く要請されましたが、防衛上の弱点を理由に拒否しました。
ナーキッドは国連と距離を置きたいのです。
最高幹部会が国連の情勢を分析した結果、最早、国連にはナーキッド援護の支持勢力がいなくなりつつあり、日本がマルスへ移動すると、拒否権を使うのに躊躇する国ばかり、イギリス、フランスは協定国ですが、日和見は確実の状況との事です。
端島と第二海保は、ナーキッドの直轄管理地として死守されます。
外部からの立ち入りは禁止、近づく者は射殺することになっています。
現に九州で勢力を伸ばしている、中国系の難民組織、というか暴力組織が上陸しようとしましたが、問答無用で射殺殲滅されました、勿論新聞記事にもなりませんが。
中露の核戦争が、何となく集結してもうすぐ一年、その前の南アジアの核戦争、その後の中東での核戦争、甚大な放射能汚染も、何とかナーキッドが提供している、空気浄化システムがバリアとなって居住地帯を守っています。
南はバレアレス共和国に設置されて、法王領に引き渡されたものが、これを食い止めていますが足りない状況です。
ユリウス五世聖下の要請で、アメリカに渡すつもりでいた残った物を、必要分引き渡しました。
ナーキッドが国連ではなく法王領と共にある姿勢を鮮明に打ち出しましたので、マルタ騎士団領が法王領に帰属、その庇護の下に入りました。
そのような状況ですが、テラを覆うかと思われた放射能汚染は、空気浄化システムがなんとか食い止め、人口減少のおかげで、不安視されていた食糧も、自給できると思われるようになりました。
環境破壊は深刻ですが、当面は何とかなりそうです。
無事に軟着陸が出来そうです、人はテラとマルスで存続出来そうですし、少なくとも利己特性は、マルスでは薄まったと思われます。
明らかにマルス人というべき人種が、生まれつつあるように見えるからですし、マレーネさんの分析でも同じような事になっているようです。
そして今テラでは、アメリカが再び力を取り戻しつつあります。
日本とヨーロッパ、ロシア、中国と、世界覇権を争う相手が力を亡くし、必然的にアメリカの力が突出しているからです。
ただアメリカの良心がマルスへ移ったので、このアメリカは変質しています、むき出しの素顔というか、あらくれ国家です。
たがの外れたアメリカは、遠慮なく核を中東に放ち、アラビアを蹂躙、あっさりと占領してしまいました。
湾岸諸国の石油を独占し、世界を牛耳る勢いです。
その手法の手荒な事、しかもいつの間にか、キリストの戦士などと自負する始末……
なにか宗教戦争の臭いもしてきますが……
せっかく核の放射能を防いでいるのに、これでは空気浄化システムが足りなくなる……というより浄化する空気が浄化出来なくなるほど、酷くなる可能性があります。
物には限度があるのです……これではナノマシンを動員して、一気に人類と環境と改造するしかない状況になりかねませんが……それか見捨てるかです。
それが七月初めのテラの状況です。
だんだんまずい気がします、最後の聖ナタナエル黙示録が怖いですね、この状態ではまだ第六のラッパもなっていないと考えられるのに……
ユリウス五世聖下がお見せくださった、フリーメーソンが所蔵していたといわれる、聖ナタナエル黙示録には次の様にありました。
人々は試練を受ける
嘆きと喜びは人々の心の重さ、神子といえど天秤は動かせぬ
そしてハルマゲドンは終わり、光か闇か、どちらかが訪れる……
ハルマゲドンは最後の審判ではないのでしょうが……、これからハルマゲドンが始まる……嫌な嫌な思いが胸を過ります。
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