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第三十四章 惑星ネットワーク
小笠原は遥か
しおりを挟む次の日、朝から東京は、近衛師団が厳戒態勢を引いています。
会見場の、グランドプリンスホテル赤坂旧館近辺は、それは凄い警戒態勢です。
戦車まで動員されていますし、第一師団も臨戦態勢でいるようです。
そこへ、東京ハウスへお迎えに来てくれた、近衛師団のハンヴィーM1152で乗り付けました。
記者さんたちは遠くの方にいます。
もちろん車寄せは、望遠レンズでも映らぬように、囲いをつけています。
ここは元李王家・東京邸、1階の結婚式場になって居る所が会見場です。
雰囲気いいですね……
ナスターシャロシア大公女と、エステラ王女も同席と決まりました。
二人とも、会見場が結婚式場と聞いて、気合いが入る事……目がくらむほどの美女さんに、仕上げて来ています。
私……軍服なんですが……この差は何でしょう。
私は顔をヴェールで覆って、会見に望む事になります。
テレビカメラも待機しています。
ナスターシャさんとエステラさんが、顔を上気させています。
「ミコ様、凛々しくて素敵ですわ……」
期待するように、じっと私を見つめる二人……
「さて、会見ですよ!」
すこしむくれている二人でした。
「日本の皆さま、まずこのような、失礼な姿でのご挨拶を申し訳なく思っています、よんどころない理由で、素顔を隠さなければなりません」
「日本の皆さまに、御知らせがあります」
「ナーキッドと日本政府は、小笠原諸島の母島列島に、火星へのステーションを建設することで合意いたしました」
「母島への連絡は、東京湾の第一海保、第二海保、第六台場、長崎の端島、大阪湾の友ケ島、が日本政府より提供されています」
「ここから小笠原へ、シャトルを走らせる事になると思います」
「母島のステーションは後一月で完成します、少なくとも東京湾の第一海保からは、母島のステーションが完成すると同時に、運用開始出来るでしょう」
「火星の日本への割り当ての地域、および都市は、後日、同盟通信に取材を許可しますが、ほとんど完成しています、現在日本政府と細かい調整をしています」
「一言申し上げれば、ナーキッドはナーキッド協定参加国に対しては、全力でその責任を全うする所存です」
「日本という国を守るための手助けに、努力は惜しみません」
「世界は中露の核戦争以外でも、かなり深刻な状況を示しています」
「正直、このままでは済むとは思えませんが、少なくとも日本国籍をお持ちで、暴力組織構成員以外の方は、何とかする所存です、ご安心ください」
「それでは、ご質問をどうぞ、出来る限りはお答えいたします」
「私は嘘は嫌いですので、御耳に痛い事もあるでしょうが、その時は、年若い者の勇み足として、大きな御心でお取りください」
「まずはナーキッドの日本に対する考えをお示しくださり、日本人として心底安心しました」
「質問は、暴力組織構成員はどうしてわかるかという事です」
「日本政府からの資料提供もありますが、火星へのステーションゲートでは、大変失礼な事ですが、心理探査もいたしますので、過去の事は全て判ります」
「現にアメリカでも、マフィアの構成員はゲートではねさせていただいています、勿論、犯罪者もです」
「それについて、罪を償った者、犯罪組織から足を洗った者は、いかがする御考えですか?」
「人はその行動に対して、責任を持つべきでしょう、たとえ今、罪を償ったといっても、それは罪を犯した上での反省に過ぎません」
「先に罪がある以上、その上の反省などで、罪を償えるものではありません、まして二度三度の者が、陽の下で平穏に暮らしているなど、私には理解のそとです」
「相手方の、罪の赦免願いでもあれば別ですが、もし相手方が死亡などしている場合は、それまでです」
「人は多かれ少なかれ罪を犯しますが、限度があります」
「例えば若いころ、暴力組織の構成員として、人々に迷惑をかけていたとします」
「妻をめとり子供が生まれ、心を入れ替えてまっとうな生活をしているとします」
「しかし若かりし頃、その方は自分がいま幸せを感じている境遇にいた、多くの人々に対して何をしていたか、誰がその罪を断罪するのですか」
「心を入れ替えればそれでいいとは、私に言わせると戯言に過ぎません」
「過去は消せません、その罪はどこまでもついてきます」
「涙や後悔で消せるなら、それは不公平という物です」
「罪と罰は天秤にかけられるもの、罪の天秤が多く傾くなら、良き事をいく倍もしなければ天秤は戻りません」
「もし罪を購える良き事をしているなら、ゲートは開かれます」
「判断が難しい場合、ご存知のナーキッドの二人の参与、フランシスコ・ロドリゲス氏、イエス会総長と、ギヨーム・ド・ヴィシエ氏、テンプル騎士団総長に任せる事にしています」
会見は終わりました。
誰もが最後の審判がやってきたと、思ったようです。
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