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第六章 山下梅香の物語 遺産
お手紙恐怖症は酷くなる
しおりを挟む「マルス移転の三年ほど前に、当時の理事長が運営資金を使い込んでね、そして土地が抵当に入っていたのよ」
「マルス移転で土地の抵当は無効になって、そのお金の返金に苦しんでいたのよ、なんとか頑張っていたけど無理だったのね」
梅香さん、何とかしたいのですが、私的なことなので、自身の力ではなんともならない。
困り果てていますと、藤原財閥当主から電話が入りました。
「ミヤコ・メイドハウスバトラーの山下梅香様ですね、藤原の当主が、お話をさせていただきたいといっていますので、よろしいでしょうか?」
秘書さんが丁寧に云っています。
「山下梅香ですが、ご用件をお聞きします、お代わりください」
内容は露骨なゴマ摺りでした。
すぐに鈴木商会の白川京都支店長に、この話を伝えますと、
「なるほど、どうしてもナーキッドに取り入りたいのでしょうね、あそこもつぶれかけていますから、分かりました、当方で何とかいたしましょう」
「そのまま藤原には資金援助をさせてください、ただし美子様には一報しておいてくださいね、でなければひどいとばっちりがきますので」
「献上品の話を、美子様とサリー様にですか……」
「でなければゴマ摺りに乗れないじゃないですか?了解をいただければご連絡ください、それまでには下準備をしておきます」
「サリー様は……」
といいかけた梅香さんの電話を、「では頼みましたよ」と、そそくさと切った白川支店長でした。
かなり嫌そうでしたが、ハウスキーパー事務局にサリーに会っていただくように交渉していました。
「私、ニライカナイのハウスキーパー事務局へ行ってきます!」
二日後に、疲れ果てて帰ってきた梅香さんでしたが、献上品についての了解は得たようです。
結局、藤原財閥に鈴木商会が資本を入れることになり、鈴木商会は、朝倉と藤原という二つの財閥を支配することになりました。
そして藤原財閥は献上品を一名だし、照明女学院の経営権を買い取って、ミヤコメイドハウスに運営を委託したのです。
朝倉の方は、朝倉麻子という献上品がいます。
なのでバランス上、サンモール高等女学校の経営権を買い取り、トウキョウメイドハウスに委託したのです。
この二つの学校はスリーシスターズの女専課程へ推薦編入枠を持っています。
そしてスリーシスターズの三校とともに、現地採用職員枠を優先的与えられたのです。
なおナーキッド職員の子女については、この二校は学費無料となっています。
「案外うまくいったわね、でもハウスキーパー事務局にはいきたくないわね、あそこは鬼門ね」
と、藤子さんに愚痴をこぼした梅香さんでしたが、そこへ再びお手紙が……
……はしたない言動が見受けられます、桜子さんとそちらが預かっておられる邦子さんの躾を、しっかりとお願いします……
藤原財閥の献上品である、当年十二歳の藤原邦子さんがやらかしてくれるのですよ。
文句なしの美少女ではありますが、勝気を絵に描いたような娘さん、そのまま照明女学院に入学をねじ込んだのですが。
桜子さんと仲が良いのは喜ばしいのですが、二人して、おしとやかとは言いがたいのです。
今回は二人して、網を持って用水で魚取り……これを先生に見つかったとかで、このようなお手紙が来たのです。
まったく頭が痛いわ、皺が増えたかしら……手紙恐怖症が酷くなりそうね。
でも二三日すると再びお手紙が……
「今度は何をやらかしたの!」
ミヤコ・メイドハウスに梅香さんの声が響き、何気ない一日が過ぎていきます。
FIN
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