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第一章 富田沙織の物語 盆踊り

下着姿なんて目の毒よ

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 オディール女学館も、無事にマルスの帝都東京に移ってきました。
 早いもので、富田沙織も女専課程の八回生です。

 ほぼテラの二年分のマルスの一年、そのウォームイヤー。
 夏休みが終わり、二学期が始まった九月、マルスといえど、たまには30度ぐらいにはなります。

 今日はそのような日でした、ウォームイヤーの九月などというのは、夏の真っ盛りなのです。

「暑いわね、今日の体育、水泳にならないのかしら」
 美子さんが、着替えしながら愚痴っています。
 金曜日の午後の6限目は体育、そして屋外で球技なのです。

「そうですね」
 不思議に、いつもクラスが一緒の、沙織が応えます。

「沙織さん、このごろ色っぽい体ね」
 美子さん、突然むぎゅっと、沙織のスポーツブラの上から胸を握っていました。

「もう、復学したらお元気なのですから、お体は大丈夫なのですか?」
 美子さんは、この四月から体調不良で休学していて、この九月に復学したばかりなのです。

 小さい声で、
「死にかけましたからね、夏休みは本当に静養していました」
「夜まで持たないじゃないですか!」
 今日の夜の順番は沙織なのです。

「後で、もっと可愛がってあげますよ」
「もう、すけべ!いきますよ!」

 球技はネットボール、バスケットボールを女性用にルール変更したスポーツです。
 一チーム七名、パスのみでドリブルは禁止、ボールを持ったものには、90センチ以内に近寄ることは出来ないルールです。

 そのため肉弾戦にはなりえません、でもこのネットボール、良くマルス文化圏の寵妃さんが集まって、結構楽しく行っています。

 オディール女学館は究極のお嬢様学校、激しいスポーツなんてのは得意ではないようで、スリーシスター交流戦なども、良く最下位になっています。
 まあ、頭のほうは優秀ですけど。

 汗まみれで体育が終り、女学校の更衣室は恥じらいなどとは縁遠い状況、とくに吉川美子のクラスメートたちは、スクールブルマなど脱ぎ捨て、それとなく下着姿で、誘惑するようなところが見受けられるのです。

 でもオディール女学館だから、これで済んでいるのです。
 華族女学校なら、こんなものでは済みません。

 皆、吉川美子と『S』の関係になりたい。
 卒業後は我妹子婚したい。
 そのように願っているのです。

 ……早く吉川様を連れ出さなくては、吉川様の下着姿なんて目の毒よ、それより危険極まりないわ、聡子さまにもきつく云われているし……

「吉川様、今夜から日曜日まで、富田貿易合資と鈴木商店の後援で、田園調布商店街主催の、盆踊り大会があるのですがどうですか?」

「盆踊り?そう言えば踊った事がないですね、でも聡子さんに叱られないかしら、それに今夜は沙織さんの番だし……」
「私の家に、お泊りになるのはいかがです」

 富田家はマルスのトウキョウでも、そのまま田園調布にあります。
 移住の時、なるべく地域社会は、そのまま移住することになったのです。

 ただ、学校などの位置は変わっていますが、歴史的に値打ちのある建物は、軒並み移築してあります。
 挙国一致で移転を決めた地域は、文化財など可能な限り移設しています。

 日本、北欧、アイスランド、バレアレスの各地域ですね。

 田園調布商店街も健在で、マルスのトウキョウを網の目のように繋ぐ鉄道も、基本的にはそのまま踏襲しており、東急の田園調布駅もあります。
 盆踊りは、新しい田園調布商店街に作られている、広場で行われるとの事です。

「ご迷惑ではないかしら?」
 沙織がものすごく小さい声で、
「吉川様は私の『我妹子証文』の受け取り相手、むしろ喜ぶと思います」

 ……

「お願い致します」
 ちょっと複雑な顔をした、美子さんです。

「なら早く帰りましょう、汗を流さなくては」
 沙織はこのようにいうと、美子をすぐに着替えさせ、引っ張って更衣室を出ました。

 ……やれやれ、これで先ずは一安心……

 そこに沙織の携帯が鳴ったのです。

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