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第3部 邪神乱舞

【9章】112話 裏切りの報酬

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 そしてバルト帝国からカシン公爵が第一皇女とともにやって来ました。

「皇帝陛下は、第一皇女殿下が妾になることを承知なされました、お約束どおり、ここにお連れしました」
「ご苦労様です、ではこの女はもらいます、約束どおり薬を引き渡しましょう」

「ありがとうございます、では臣民が病に苦しんでいますので、急ぎ薬を持ち帰らせていただきます」
 慌てて帰って行きましたね……

 さて、この偽物の第一皇女殿下、どういたしましょうね…… 

「さて、貴女はどなた?」
「バルト帝国第一皇女、貴女様の女奴隷でございます」

「では覚悟はしてるのね、こちらに来なさい」
 胸をむんずと握って差し上げました。
 これぐらいの役得がなければね♪

「私は嘘は嫌いなの、嘘付きは衆目の中でお尻をむき出しにして、叩いて差し上げます、真っ赤になるまでね」
「さて、貴女はどなた?」

 少し震えていますね、でもよく見ると綺麗な金髪、ぱっちりとした目、長いまつ毛、バラ色のほほ、スタイル抜群……

「私は……第一皇女……」
「そうですか、誰か、エレーナ・トヴェリさんを呼んできなさい」

 エレーナさんがやってきました。

「ねぇ、この方、バルト帝国の第一皇女さんなの?」
 じっと見て、
「第一皇女殿下はもっとスレンダーです、この方は……」
「知っているようね、誰なの?」

「トヴェリ公国の後に先ごろ併合された、元ミクリン公国のフョードル公爵の第二公女、エヴドキヤ様……」
「エヴドキヤ……ごめんなさい……」

「いいのよ……これでお姉さまもおしまいね……でも、エレーナが生きているとは知らなかったわ……お母さまはお元気なの?」
「……ノームに逃げようとして、例の道でクラーケンに襲われ……」

「そうだったの……でも貴女が生きていてよかったわ……さて、イルマタル様、露見した以上、お姉さまもお母さまも助からないと決まりました、私もおめおめと生きているわけにはいかないようです、どうとでもしてください」
「まぁ、そうさせていただきますが、今の話、姉と母親が人質になっているの?」
「バルト帝国第一皇女といつわり、そのまま妾になれと言われました、嫌なら姉も母も殺されます」
「お二人はどこにいるの?」
「姉はカシン公爵の居城の地下牢です、母は自宅で軟禁状態です」

「ふーん、後で貴女のお尻は真っ赤になるまで叩いてあげます、まぁ衆人環視の中というのは、免除してあげます、ナイト・ムーン・タウンの一室に軟禁しておきなさい」
「イルマタル様、私が付いて行ってもよいでしょうか?」
「いいでしょう、エレーナにこの女の身柄を預けます、貴女が面倒を見てあげなさい、エレーナが同伴する条件で、ナイト・ムーン・タウン内なら散策を許してあげます」

 二人が行ってしまうと、イルマタルさんは戦闘侍女長としてのエヴプラクシヤさんを呼び出しました。

「やはりバルト帝国は裏切りました、予定通り……」
「では戦闘侍女頭と更衣を集めます」

 一応軍関係の最高指揮官は私の正妻であるエヴプラクシヤ・モスクさんですからね。

 軍の会議が始まりました。
「いよいよバルト帝国に裏切りの報酬を支払ってもらいます、まず天魔族の女孺(めのわらわ)さんたちに夜間作戦を実行してもらいます、よろしいですか?」
「お任せください、しっかりと処分してくれます!」
   
「次にカシン公領の占領ですが、親衛正規軍はどうですか?」
「現在、演習と銘打ってラウジッツ・ユートピア・タウンに集結しています、輸送警備師団は鉄道警備連隊の第一歩兵大隊を除いて動員します、第一歩兵大隊には警戒待機を命じます」
 まぁ輸送警備師団は、ラウジッツ線を使えばすぐに終結できるでしょうね。

 でも、更衣の方々が、
「まあ、初戦は我らまかせて欲しい、女孺(めのわらわ)も地上に出られると喜んでいるので、悪いが手柄はいただく」
「明日にはカシン公領全域とバルト帝国居城を襲撃、計画通りに処分してくれる、イルマタル様がお身体を酷使してお創りされた『白い秘薬』も取り返してみせる!」

 凄く気合がはいっているような……

 で、打ち合わせで、明日の早朝に親衛正規軍はラウジッツ・ユートピア・タウンを出撃、五日後にカシン公領に到着、その前日の深夜、天魔族の部隊がカシン公領全域とバルト帝国居城を襲撃、親衛正規軍はカシン公領領都を制圧、バルト帝国側の出方を見ることになりました。

「反撃などないはずです、いやできないでしょう、疫病でそれどころではないはずですから」
「そうそう、わが軍の疫病対策は大丈夫なの?」

「『白い秘薬』がありますので、大丈夫です」

 これってCB兵器を使った化学・細菌作戦になるのかしらね……
 さっさと終わらせなければ、本当にバルト帝国がなくなるわよ……

 その前に、『黒死病』って、『病の風を吐く女神』セクメトさんは何か知らないかしら……

「ねぇ、セクメトさん、この頃、北のほうで蔓延している『黒死病』だけど、何か知らない?」
「それが私にも分からないのです、私が知らない伝染病など、ないはずなのですが……でも……」

「でも?」

「フィンの女神に『ロヴァイアタル』、別名『ロウヒ』と言われていますが、疫病などを発生させるといわれており、目が不自由と聞いています」
「もし『ロヴァイアタル』が怒って『黒死病』をまき散らしていたら、私にはわかりません」
「でも『ロヴァイアタル』って、遥か古代の女神よ、だれもあったことはないのよ」
 ラマシュトゥさんが、異議をとなえます。
 たしか、 『ロウヒ』ってフィンランド神話の地下世界の女王って思っていたけど……やはりね、ここはエーリュシオンでしたね。
 名前が少々似ているからって、同じと考えるのは間違いですよね……まぁいいわ。

「『ロヴァイアタル』って、そんなに昔の女神なの?」
「私たちは人の『負の気』から生まれたのです、『ロヴァイアタル』など、遥か古代の神は、その『負の気』を作ったと教えられました」

 ラーなどより、はるかに昔の神々……ですか……

「興味ある話ですが、とにかく今はバルト帝国の始末です、『黒死病』の蔓延なんて迷惑至極ですから、さっさとバルト帝国を始末して、『白い秘薬』で疫病退治です!」  

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