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第2部 嵐の前の平穏な日々

【4章】41話 お金儲けに精出して、売名行為もいたします。

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 ロマンチック・ドリーム・タウンも、そろそろ落ち着いてきました。
 地に足がつき、皆さんそれなりに働いています。

 今のところ、ターニャ商会との取引による利益がほとんどですがね。
 紡績だけで人件費を全てまかなっています。
 その上の融資による配当、さらには酒場『火と煙』の売り上げの配当分、来年には王国と帝国からの、領地返上による配当金が入ってきます。
 今年の分はターニャ商会へ融資しましたからね。

 エーリュシオン鉛筆社は年始休み明けに設立されました。
 直ぐに試作品を作り、売り込みをかけてみると、各地の商家から引き合いがかなりあります。
 手ごたえをもった運営ギルドは、小さい工場で作り始めていますが、需要に追い付かない状況です。
 エーリュシオン歴の二月初めから本格的に出荷、初めて配当を受けたところです。

「結構な額ですね、『サロン・キティ』に渡しますから、良きように使ってください」
 この後、エーリュシオン鉛筆社からの配当は右肩上がり、かなり内部留保していますが、福利厚生にも回しています。

「人が増えてもやっていけますね♪」
 
 三人の侍女長さんの顔がほころびています。
 まぁ、この方々は悪さなどしないでしょう、万が一そのような事が起こるなら、それは私が悪いのです。

 三国不戦条約の後、三国共同出資のエーリュシオン鉛筆社の設立は、エーリュシオンの西方文明圏に衝撃を与えたようです。
 戦いに明け暮れていた、三大国が協力しているわけですからね。

 例の魔物除けも、いよいよ効力を発揮し始めています。
 三国の集落に行き渡り、今では三国の国軍部隊や、ギルドも街の防備のために持っています。
 そのうえ、各地のギルドには魔物除けを貸し与え、使用料を頂いているのです。

 この魔物除けは、直接ロマンチック・ドリーム・タウンが取り扱っています。
 名前も『女神奉賛協会』と名乗って、運営しているのですよ、そして『奉賛金』を頂いているわけです。
 月あたり僅かですが、これを忘れると三大国に通知します。
 悪意があると分かれば、その後の処罰は三大国まかせ、後で聞いたら厳罰だそうです。

 そうですよね、悪用などすれば大変なことになるのは、私が証明したようなものですからね。
 ただ不思議に魔物除けは消えてなくなるのですね……
 これ、貸し出し用はいったん収納して、取り出しているのです。
 だからどこにあっても、瞬時に収納できるわけです。
 そもそも私の髪、どこにあるかその気になれば直ぐにわかりますから。
 
 この『女神奉賛協会』の会長さんはやり手ですよ。
 フランセット・フランさん、生き生きと仕事に精をだしています。
 なんせこの話の発案者、もう『妾』さんに昇格は確定ですね……

 塵も積もれば山となる……どんどんと内部留保が積み上げられるのです。

「ねえねえ、もうかり過ぎではありませんか?あまりお金を貯め込むと、経済が回らなくなりませんか……」

 国を揺るがすほど、ためているわけではないのですが、肝っ玉の小さいおっさんは心配になってきたのですね。
 金持ちは憎まれる……私は女神といわれていますから、少しは還元して民心の歓心を買わなくてはね。

「製糖業が本格稼働していないのに、こんなに儲かって、何かに還元しなくては、民心はもとより三国の指導部の疑惑を招きます」
 農地の作物はまだ全然稼働していないのですよ……

「私と該当国の名前で、医療組織を作りましょう、医療も受けられない貧しい方のために」

 とにかく次の三つの医療組織を作りました。
 『フラン帝国女神恩賜医療財団』
 『ラテラノ王国女神恩賜医療財団』
 『モスク大公国女神恩賜医療財団』

 名誉総裁は各国君主の正妻さんになってもらい、三人の側妻さんが副総裁、事務長さんは三人の侍女長さん。
 まずは付属施設として、三国の都に小さい医療院を設立、貧しくて医療を受けられない方の、入院治療施設としたのです。

 各国君主の正妻さんに名誉総裁になってもらっていますので、現地で購入するお薬は少し安くして頂いています。
 その上でこちらからお薬など、家庭用の常備薬や漢方薬などを送ります。

 医療院には大きな浴槽などを用意しています。
 魔法で湯を張るのではなく、井戸水をくみ上げて水を張るのです。
 マキ用ボイラーで沸かしています。

 勿論男女別、薬草風呂ですよ、清潔を保てるように極力配慮した結果です。
 ボイラーなどの備品は取り寄せたのですよ。

 薬草といっても、基本的に雑草です。
 ドクダミ、スギナ、ヨモギ、どれもしぶとい連中、スギナなんて難防除雑草といわれていますね。
 どうやら、そこらへんに節操もなく生えているようです。
 この西方文明圏にあるのは不思議なのですが……やはりよく似た世界なのでしょうね。
 でもね、この連中、年がら年中生えているのですよ、嫌がらせみたいにね……

 大変恐縮なのですが、これを貧しい方々にとって来てもらいました。
 とても安い手間賃ですが、チョットした現金収入によいでしょうね。

 ドクダミはドクダミ茶、天ぷらにもできます。
 スギナは根のことで、顔をだせばツクシですね、当然に食用です、ヨモギもね。
 天ぷらなんて良さそうですね……

 これは大変好評、とくに各国君主の正妻さんの名前で、医療行為をしますので、三国の指導部からも歓迎されているのです。
 静養し、栄養のつくものを食べ、清潔にしていれば、大概の病気は治るはずです。

 ここで私は鍼灸、按摩、さらには気功も検索しました。
 ちなみに鍼灸で麻酔が出来そうです。

 気功ですが、思ったより有効のようですよ。
 この世界は魔法があります、その魔法で気功を強化、鍼灸で麻酔をかけ、現代医療の知識を総動員すると、かなりの病気やケガが治せそうなのです。

 難病のがんや脳腫瘍でも治せそうです……でも、誰彼出来るものではありませんね……私以外では相当に難しそうです。
 このことは後で、ゆっくりと考えるほうがよいでしょうね。

 またここのお風呂、有料ですが、これを公開したのです、評判は上々ですよ。
 サービスに、ドクダミ茶に、つくしの佃煮、ヨモギの天ぷら、を提供することにしました。

 効果は絶大のようですよ。
 戦女神イルマタル・ロイスターは、人々から愛されるのです♪
 たとえ売名行為ではあっても、人々から愛されるのは、うれしいものですね♪
 え・へ・へ・へ♪
 
 その上、これが大赤字にならないのです。
 トントンに近い赤字、お風呂の代金とか、良くなった方がささやかなご寄付をくれたりしてね。
 現地購入するお薬は、定価で売ったりした差額もあったりして……
 まぁ本当は私の取り寄せる物が無料ですから、実質的には大赤字になるでしょうが、出来るだけ現地購入するお薬と、現地の医療技術で対処したいとは思っているのです……

 厳冬というのに私は色々と忙しく働いていたのですよ、そしてやっと冬の中に、春が忍び寄ってきたのです。

 住み込み召使いさんの第二陣の採用です。
 再び各地のギルドを通して募集をかけました。
 前回より更に応募が増えています、優秀な方が多いですよ。

 まぁ採用などは侍女長さん達がやってくれます。
 侍女長さんたちは半端ない事務能力の持ち主、問題など起るわけがないのです。

 私も淡々と第二農地に寮や食堂棟、倉庫や農機具など、せっせと取り出し準備を整えたのですよ。
 新しい住み込みの召使いさんが慣れる頃には早春、サトウダイコンの種まきの準備を始めましょうか。
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