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第1部 夏至から物語は始まった。
【3章】27話 クーデター情報
しおりを挟むそんな時、大公国の事務所から、緊急の連絡が入ってきました。
帝国と王国でクーデターが同時に起こり、クーデター政権が樹立されたというのです。
両国は共同して、大公国へ宣戦布告してきたようです。
帝国と王国の事務所は、寝耳に水で大騒動、機能していないとのこと。
さらに私宛に要求を突きつけてきたのです。
概ね次のような要求です。
ラテラノ王国、及びフラン帝国は長年の暗主の暴政に国民は苦しめられていた。
その上、互いに戦争を連年起こし、無意味な戦死者の屍を積み上げている。
我々はここに互いの争いを避け、共に平和を築くために手を結んだ。
悪しき君主を排除し、新しい明主を頂くこととした。
そして両国の関係を、悪しきものにするように策動していた、モスク大公国に正義の鉄槌を下すこととした。
平和はモスク大公国を打ち破る先にある。
そのモスク大公国に組し、両国をその下につけるという動きをしている、イルマタル・ロイスターは許すわけには行かない。
速やかに膝を屈し、手にしている『オーパーツ』を提供するなら、国賊であるベンヴェヌータ・キアッピーニと、オーレリー・トトゥは解放しよう。
自ら王都、及び帝都に出向き、恭順の意をしめせ。
さもなくば、両名の首は胴から離れるであろう。
ラテラノ王ベニート4世
フラン皇帝ヴェルサンジェトリクス2世
何ですか!誘拐は2国のクーデター政府なのですか!
王国からの侍女長ベルティーナ・トーノロさんと、帝国からの侍女長アルレット・バレさんに来てもらいました。
両名ともクーデターの話は知らないようです。
2人ともベンヴェヌータ・キアッピーニさんと、オーレリー・トトゥさんについて来た方、クーデター政府に忠誠などとんでもない、とおっしゃってくれます。
とにかく、この新たな君主については、もともと不満分子、どちらも旧君主に連なる一族の出、侯爵だそうです。
とくにヴェルサンジェトリクス2世と称しているのは、前帝国騎士団総長、先日解任されたばかり。
この人事に不満を持っているとの噂がある人物、フラン帝国騎士団内部では絶大な信望があるそうです。
「行くしかないですね、王都と帝都へ」
「いけません!ベンヴェヌータ様とオーレリー様には申し訳ありませんが、殺されるかもしれないところへ、大事なイルマタル様を行かすわけにはいきません!」
ヴェロニカ・バブーリナさんが、断固として反対します。
他の2人の侍女長さんは、沈黙を守っています。
「ヴェロニカさん、ベンヴェヌータとオーレリーは私の妻です」
「主は妻を守らねばなりません!ここは理解してください!」
「心配しなくても、必ず2人を連れて生きて帰ってきます、これ以上の問答は無用です!」
私は厳しい顔で、こう言ったのです。
このオスクの街から、王都ヴェネと帝都ブルタへ向かうには、幸いなことに1本の道しかありません、途中で分岐しますが、追いつくのにはまだ間に合います。
IMIコンバットガード4x4を取り寄せしました。
これ、何とか検索で見つけたイスラエル・ミリタリー・インダストリーズの装甲車。
正直なところ市販はされていません、そこでイメージは検索で完璧に可能なので、それを聖天様が教えてくださった魔力で、作り上げたのです。
かなりの精神力が必要でしたが、瞬時に目の前に現物が出てきました。
多分必死でしたので、ダメージは今のところありません。
火事場の馬鹿力というやつかもしれません。
車体重量は6トン、300馬力のディーゼルエンジンを搭載し、最高速度は時速150キロメートル、8名乗れます。
「すぐに出かけます!侍女長さんたちは、ロマンチック・ドリーム・タウンのお守りをお願いします」
「大公国からの警備の兵を中にいれて守るように、王国と帝国の警備兵は今のところ信用がおけません」
「マトリョーナさん、後は頼みます」
「エヴプラクシヤさん、同行してくれますか?ベルティーナ・トーノロさんもアルレット・バレさんもお願いします」
「当然です」
「私も連れてってください!」
マトリョーナさんが訴えます。
「却下!危険です!」
「私は側妻、主のお側に常に侍るもの、それに2人は仲間です!」
いちいち問答している暇はありません、
「分かりました、乗ってください、ではヴェロニカさん、後はお願いします」
こうしてIMIコンバットガード4x4は、1本道をひた走ります。
多分馬車ですから、がんばって時速30キロ。3時にさらわれたとして今は5時、ほぼ2時間、60キロの差、これから夜、そのまま走るでしょうが速度は半分、時速80キロで走れば1時間以内……
帝国への道の分岐点は120キロ先、王国が先行しているはず、帝国は4時にさらったと思われる、1時間、行ける!
装甲車を転がしながら、そのようなことを考えていました。
コンバットガード4x4は、30分で帝国の人攫いに追いつきました。
馬車を囲んで、2名の護衛の騎士がいます。
「面倒です!馬に体当たりします、そこらのものに捕まっていなさい!」
私は車ごと騎士の馬に体当たり、さらに馬車の馬にも体当たり、飛び出てきた御者などは轢きました。
うめいているものは、エヴプラクシヤさんが飛び降り、止めをさしています。
コンバットガード4x4は無傷とは行きませんが、なんら問題はありません。
馬車の中にはオーレリーさん、ぐるぐるに縛られていましたが、無事でした。
縛られていたオーレリーさんを担ぎこみ、後はアルレット・バレさんにお任せ、直ぐに出発です。
今は午後の6時、王国の人攫いは多分60キロより手前のはず、夜間走行なので時速は60キロほど……
「あと1時間ほどで会敵します、今のうちに食事でも摂っていてください!」
菓子パンと缶コーヒーなどを急遽とりよせ、アルレット・バレさんに渡します。
ベルティーナさんは、道案内がてら助手席に座ってもらっています。
やっと王国の人攫い一行に追いつきます。
馬車が2台、護衛の騎士が4名、同じように突撃、馬をなぎ倒しました。
ばらばらと馬車の中から飛び出してきた護衛兵が、8名ほどヘッドライトに浮かび上がります、剣を手にしています。
着剣したスプリングフィールド・アーモリーM1Aを手に持ち、発砲しながら突撃、6名ほど倒しました。
残りの2名は、エヴプラクシヤさんの薙刀に切り刻まれていました。
「ベンヴェヌータさん、大丈夫ですか!」
縛られていたベンヴェヌータさんを担ぎこみ、後はベルティーナ・トーノロさんにお任せします。
やれやれ、安心しました……
「ふぅ……帰りましょう……ん、おトイレ……」
安心したのか、尿意が……排尿できる貞操帯でよかった……
IMIコンバットガード4x4は動きませんでした。
壊れたのを収納し、新しいのを取り出したわけです。
たとえ魔力で作り出しても、一度取り出せばカタログに載り、二度目は簡単ですね。
「イルマタル様が白馬の騎士に見えました!」
二人とも感謝してくれたようです。
プレゼントをいただきましたね、幾つもの唇のあとが証拠です。
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