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第1部 夏至から物語は始まった。

【2章】20話 三国ハレム協商

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「イルマタル様、私たちは協議の結果、妻妾問題に関して、次のような制度を整備することとなりました」
 なんでそんなに大事にするの?確かに丸投げしてしまった私が悪いのですが……
 オーレリーさんの仕切りの素晴らしいこと、生き生きとしていませんか?
 
「エヴプラクシヤ様が正妻になっていただきます」
 エヴプラクシヤさん、キョトンとしています。
 
「私は妾でいいのだが?」
「エヴプラクシヤ様のお母上はエルフ族とお聞きしています」
「モスク大公家のかたではありますが、見方を変えればエルフ族、別格でよろしいのではありませんか?」
「それに、もう夜は済ませておられるのでしょう?」

 エヴプラクシヤさんはまだ納得していないようですが、私としては望ましい話です。
「ご配慮いただきありがとうございます」
 
「古代には妻は幾人もいたそうです、事実、3代前のフラン帝国皇帝陛下におかれましては、正妻以外に2人の側妻がいました、今回、その側妻を置くことに決めました」
 側妻ですか……なんといえばいいのか……それにしても『決めました』ですよ……
 
「エヴプラクシヤ様が正妻である以上、イルマタル様の妻妾は全てイルマタル様の奴隷なっていただきます」
「側妻はモスク大公国からマトリョーナ・モスク、ラテラノ王国からベンヴェヌータ・キアッピーニ、そしてフラン帝国から私、オーレリー・トトゥの3名です」
「いろいろと、マトリョーナからイルマタル様のことは聞きました」

 これってもう、規定路線だったのではと邪推してしまいますよ?だれの思惑?考えると怖いですよ。
 表に出てくるのは、西方の3大国の高貴な女たち、国のため身を犠牲にしている構図、三国のバランスをとるためだそうですが、ここで私を担いで、手打ちをする気なのでしょうか……
 でもでもでも……今までいがみ合ってきたのですよ、戦争なども、しょっちゅうしていたのですよ……
 
 ……正確に言えば、貴方の『静かに心豊かに』という気持ちが、世界に広がり癒やしていく、と云うことになる……って、聖天様はおっしゃぃましたが、とてもこの現状は『静かに心豊かに』ではありませんよ!
 
 しかし……『気持ちが世界に広がり癒やしていく』……こちらが原則なら……
 私がどのように思い行動しても、『私の気持ちが世界に広がり癒やしていく』、ことになるのですか……
 未練を満たすために好きに生きよ……こうなることは織り込み済み……なのでしょうね……
 
 神様のお考えなら、私は別にかまいませんよ、喜んで受け入れましょう♪
 
「私もいろいろと思いがありますが、現状は理解しました、約束ですので全て受け入れますよ」
「しかしヴェロニカ・バブーリナさんと、マシャ・ノヴェソロワさんについてはどうなるのですか?」
 
「三国のバランスという点で公平に、一応グループごとに1人、侍女長の扱いの妾を置くことになり、ヴェロニカさんには、それに就任していただきます」
「帝国と王国からも1人、出すことになります、勿論、容姿端麗、渉外も行える人が条件です」
「また同様の理由で侍女頭を採用、マシャさんはとりあえず侍女頭として、妾になっていただきます」
「これも三国のバランス上、最低1人は出すことになっています、侍女長以下は魔法が使えることが前提です」
 
 ということは、ヴェロニカさんも魔法使いだったの?
 ヴェロニカさんみたいな方が後2人……私の自由はなくなりそうです。
 マシャさんはヴェロニカさんの補佐あたりの役割……
 
「そうそう、帝国からの侍女長は先ほど顔を合わせておられます」
「アルレット・バレ、フラン帝国の子爵家の出で、同じ帝国の子爵に嫁がれました」
「死別となり実家に戻られていましたが、私付きの侍女長になっていただいています」
 馬車で出会ったあの方ですか……
 
「ご本人は承諾されているのですか?子爵夫人が奴隷ですけど?」
「イルマタル様、少なくとも帝国において、貴族当主の妾は自由民よりも立場が上、社交界に出るのにもなんら触りはありません」

 この世界の奴隷は農奴と違い、『主』に縛られる存在、『主』の意思で売り買いはされますが、それ以外はあまり関係ないのでした。
 誰かと結婚したければ、『主』の許しさえあれば、『下賜』または『払い下げ』という名目で夫婦になれるのです、『初夜権』などもそこに含まれているそうです。
 
「イルマタル様、王国の侍女長は決まっています、当然私の侍女長です、明日にも紹介させていただきます!侍女もです!」
 ベンヴェヌータさん、そんなに対抗意識をむき出しにしなくても、もうこの話、変えられるわけではないのですから。
「では帝国の侍女頭は、私の侍女から出します」
 
「では話は決まりましたね。実は明日から私たちの家を作ろうとしていたのです、いい機会ですから明日、関係者で顔合わせしてから、皆の家を作りましょう」
 
 もう、夜の11時近く、とてつもなく疲れた1日が終わったのです。
 一夜で三国ハレム協商が成立しました。
 
 翌朝、とても早くおきました。
 とにかく集会室を取り寄せなくてはいけません、11名分は最低でも必要です。
 ……くそっ、長さの制限を20フィートにしておけば……
 
 !
 
 まてよ、聖天様との打ち合わせのとき、確か1辺あたり5m4方の立方体積が1日の最大使用量と決めたはず……
 立方体積?ひょっとして……125m3を上限に1m単位での立方体と捕らえても良いのでは……長さ10m×幅3m×高さ4mなら120m3となる……そういえばキャンピング・カーとは5mだったので取り寄せたけど、牽引装置が付いていたはず……5mを少し超えていたけど、取り寄せできていた……
 
 なら簡単です、取り寄せてみればいいのですよ!
 
 可能でした、某社のトレーラーハウスを取り寄せできました、長さ10m×幅3m×高さ4mの120m3ですからね。
 
 3m×1mのチップアウト付きで、照明までついていますが、今のところ電気はまだです。
 建築確認なんて不要ですし、そもそもいつでも取り出し、そして撤去するつもりですからね。
 基礎はブロックかコンクリート平板でいいでしょうね、とりあえずですから、まあ水平が出るように地面は均しましたけど。
 
 なんとか朝食に間に合いました。
 
 皆さん、驚いていますよ、こそこそしていたら起きてこられましたから。
 
 いつもの慎ましい朝食を食べながら、マシャさんが聞いてきます。
「凄いですね……この建物は、何に使うのですか?」
 
「これから打ち合わせをするのでしょう?会議室が必要かと思いまして……」
「まだ電気はないのですよ、キャンピング・トレーラーとは違いますからね」
「でも大物はまだ先だと、うかがっていましたが?」
 
「昨日ね、あれから考えていたのです、神様との交渉で、大物は7日に一度と思っていたのですが、よくよく考えてみれば、出す方法があったのです」
 
 マトリョーナさんが、
「神様?交渉?」
 まずい、不用意に喋ってしまった……
 
「そのあたりも、今日の打ち合わせで開示いたします」
「もう私も腹を固めましたから、ただし他言無用ですよ、今日の打ち合わせのメンバーだけです」
 
 そしていよいよ、打ち合わせのメンバーがやってきました。

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