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第1部 夏至から物語は始まった。
【2章】14話 モスク大公の思惑です。
しおりを挟む事務所に戻り、約束のキャンピング・トレーラーを4台、取り寄せ設置します。
へグランドBV206から荷物を下ろし、搬入、事務所の方々が手伝ってくれました。
このキャンピング・トレーラー、国産キャンピングトレーラー製造会社として有名な某社製。
防災機能トレーラーで5m×2.1m×2.58mのもの、4人就寝可能でシャワーやミニキッチンもついています。
さらにミニトレーラーというより、一体型のミニハウスがありましたので、これを倉庫代わりに、取り寄せ設置しました。
この会社はいいですね、お気に入りにしておきました。
へグランドBV206は目障りなので収容しました。
オスク・スクールは、この大陸の西側ではエリート養成校らしく、ここで各国の王族・貴族などは顔合わせをして、将来に備えるのです。
勿論、配偶者探しも目的の一つとなっています。
建前としては自由民ならだれでも入れますが、学費がべらぼうに高く、その上に学力も相当要求されます。
帝国、王国、大公国の君主には毎年3名の特別推薦枠があり、今回、大公がその枠を使用したようです。
不思議なのは、このオスク・スクールの科目に歴史は存在しない。各国の歴史史観が違い、無用の紛争の元になると推測できます。
授業は週休2日5時間制、修業年限は5年、午前は9時から12時まで、午後は1時から2時まで、食堂などというものはありません、各自持参するか、食べに行くか、だそうです。
オスクの街中にはお店が結構ありますから、不自由はしないようなのです。
男女別学で女性のほうは週25時間のうち、体操が3時間、数学2時間、理科2時間、国語5時間。
地理2時間、裁縫2時間、料理1時間、婦人学1時間、話し合い1時間、なぜかダンスが1時間、そしてあとの5時間が選択コース、音楽とか武術とか魔法とかね、かなりの種類があります。
男のほうは全然違うと聞きました。
国語ですが、少なくともこの西方世界の言語は全て同じなのです。
とにかく毎日国語と選択科目は絶対にあるようです。
しかし……裁縫?ダンス?おっさんにこれを要求するの?
婦人学ってなに?まさか生理をおしえてくれるの?18歳には遅すぎますよね、多分立ち振る舞いでしょうね……
この世界、年初と夏至を祝うことを初めて知りました。
どちらも盛大にお祝いするそうで、2週間の休みがあるそうです。
あと冬至、春分、秋分は1日お休み、私たちの編入は夏至明け、つまり私は夏至の始まりに転移したことになります。
オスク・スクールは夏至明けが入学の季節、ちょうどよかったのです。
マトリョーナさんは15歳、今年から2回生、私たちは18歳の5回生……
聞けば『卒業面(そつぎょうづら)』とよばれる風習があり、3回生になればどんどんと美しい方は寿退学していく。
婚約もせずに卒業まで残るのは、それなりの方となるそうなのですね。
「私たち、その『卒業面(そつぎょうづら)』なのですね、まぁもう売れていますので該当しないわけですが、この話、公にしてもいいのですか?」
荷物の整理をしながら、ヴェロニカさんに聞きますと、
「構いません、なんならマトリョーナ様の話も出してもよいですよ」
そんな……マトリョーナさんの話は決まっていないのですから……
私が黙っていると、
「私はいつでもOK、お待ちしています」
なんていうのですよ。
「正妻の座は空いている、お父様も後押しされている、妾の私としては、マトリョーナが正妻ならば気が楽だ」
「まぁその話は後日ということで……とにかく明日から学校ですので、ところで制服などはないのですか?」
「そうそう、その話ですが、イルマタル様がお召しになっていた服を、モスク大公国女子グループの制服と決まりました」
「申し訳ありませんが、無断でデザインを流用させていただきました」
「晩餐会の後、直ぐに伝書鳩便で事務所に通知、多分明日までには揃うはずです、マトリョーナ様はご存知です」
「なぜセーラー服を?」
「セーラー服というのですか?あの服は清楚な感じがして、謁見の時にいた者の意見が一致したのです」
「ちょうど他のグループとの区別をしようと決まっていたようで、渡りに船だったのです、ただ丈がもっと長くなっていますが」
ヴェロニカさんが、説明してくれました。
「その話、私たちの制服を申請したら、大変好評で、帝国も王国も色違いでそろえる話になったと聞いています」
「まぁ明日とはいかないでしょうが、型紙は出回っていますので、一部の者は着てくるでしょう」
マトリョーナさん、詳しいですね。
「私、生徒代表会の一員ですから……」
生徒代表会?ですか、いよいよ学園生活そのものですよ。
おっさんとしてはチョット憧れたりしてね。
……青春か……ついぞ味わえなかったな……
高校では生活のためのバイトばかり、大学はいけなかった……
別に前世に不満はなかったが、憧れたりしたよね……
せっかくの二度目の青春、謳歌すべきですね。
セーラー服、ありがたく着ましょうね、聖天様、感謝します。
「明日からの食事ですが、どうされますか?」
「もちろん、私どもがおつくりします、お昼も用意いたします」
「毎日はしんどいでしょう」
「保存食料を、倉庫に備蓄しておきましょう、温めればよいだけのものです」
「料理方法は教えますが、おいおい工夫していただければ、さらにおいしくなるでしょう」
「夕食は皆で一緒に作る、というのはいかがですか?」
管理はヴェロニカさんに任せましょう、毎日不足分を申告していただきますね。
「しかし私どもは侍女としての立場が……」
マシャさんが少々困惑しています。
「気にすることはありません、ヴェロニカもマシャも、私と同じことをお父様に云われたのでしょう、姉様はご存じですか?」
「知っている、父は私が2番、ヴェロニカが3番、マシャが4番、後1枠、計5枠で収めたい、なんて云っていた」
「ヴェロニカもマシャもその気なのだろう?」
ヴェロニカさんは勢いよく、マシャさんは恥ずかしそうに頷いています。
ということは、ここにいるのは私のハレムの構成メンバーっていうことですか……
よほど私を取り込みたいのですね……聖天様、これはどうなるのでしょうか……
男としてはうれしいのですが……『心静かな生活』とは真逆になってきたのですが、いいのでしょうか?
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