老後のおかしなおかしな女学生生活 転生一年目

第二十六章 お薬啓示

現世（うつしよ）弥栄、常世（とこよ）弥栄

　
　私は帝都第一衛戍(えいじゅ)病院の名誉院長でもあります……陸軍少将の階級もいただいています……
　帝室に伝わる極秘のお薬といって運び込めば……いや、こればかりはお父様にご相談しなくては……

　でも、こんなことを考え、ウェブで抗結核薬を検索していると、使用法とか、製造法とかが頭に入ってきます。
　理解をしているわけではないのですよ……知識として入って来るのです……

　神様にお聞きしてみましょうか……でも、嫌な予感もしますね……

　とにかく、牧野姉妹の件は、返事を四五日待っていただきたいと、お答えしておきました。
　その日の夜、神様のお返事がありました。


　……結核の薬は、この世界では製造は認められない……ただ汝が『聖女』として神楽を踊り祈るのなら、少しばかり、取り寄せを認めよう……
　……これは秘薬であり、神薬とこころえよ、毎年４剤治療として６ケ月分、１００名分である……これは特例である……
　……薬の取り寄せは、市販薬については今まで通り認める……

　……汝、結核については予防を第一とすべし、この世界ＢＣＧ接種なら可能なはず、まずはこれを目指せ……さらには非結核性抗酸菌症には漢方にも有用なものがある、参考にせよ……
　……汝、聖女の力を持ちうれば、結核なぞ完治させる力があるのを、忘れてはおるまいの……当方、楽しみにしておるぞ……


　聖女の話がでてきたのです……これはお母様にも相談しなければ……

　すぐに宮殿へ……お母さまに、ご機嫌伺いと称して、お会い下さるように願い出ました。

「何かしら？雪乃から来るなんて、珍しいわね♪皇太后様にもご同席願ったわ♪」

　私は今回の結核の話、洗いざらい話しました。
　神楽の話もチクりました！

「どうしたものかと、困っております……結核の治療薬、製造は出来ないだろうとの神様のお言葉です……」
「でも、雪乃には悪いけど、その神楽を踊れば１００名分は取り寄せられるのよね……半年で治療できるの？」
「大体六か月で治るとのことです、多分、ハンセン病にも予防効果があります」

「神様のお言葉によれば、現在の治療以外に、非結核性抗酸菌症には漢方の治療法も有用ということです」

「予防が帝国でも実施可能なのね……そう、ハンセン病にも効くのですか……」
「ハンセン病は結核と似ているのです」

「なら、治療法もあるのよね！」
「ハンセン病は完治できますが……」
　
「お願いできないかしら、雪乃には本当に悪いと思うけど、その、恥ずかしいお神楽を踊ってくれない？」
「ハンセン病って、酷い病気よね、それが完治するなら、患者の為に我慢してくれない？」

「……神様にお伺いしなくては……それに、さらにひどいことになると思うと……」
「女が増えるということよね、でもね、もう無理なのよ」

「雪乃、フリーズドライ法の特許使用料を足した貴女の収入って、どうなっているかわかっている？中堅財閥ぐらいの売り上げなのよ」
「雪乃の売り上げには経費がほとんどないでしょう」

「税金なんて、すごく支払っているのよ、将来、息子と結婚してくれても、どれだけあるか、隠しおおせないわよ」
「つまり、いまの愛人の数では、世間は収まらない、ということよ」

「図書館ぐらいで減るなんて考えていたら、大間違いよ」
「この際、女学校でも買わないと、収まらないわよ」

　ここで神様から、啓示がきました。
　『帝室一族の女長老に神の啓示がある、それはある文字で記される文が、天から降りてくると云われている』
　その啓示です。


　……聖女雪乃は神楽を奉納した、八百万の神、皆、『笑ひえらぎ』和んだ……
　……此度の願い、聞き届けるに八百万の神、力あわせねばならぬ……

　……いま、『アメ』一族の願い、聞き届けるに、巫女の力、聖女と和合し、神楽にのせて願わねば、届かぬ……
　……よろしく、聖女に仕える巫女の女学校あるべし……


　おばあ様、ここで、
「必ずお心に沿い、巫女そろえて、聖女と神楽踊らせます」


……ハンセン病治療薬、民の苦しみを憐れむ心、しかと聞き届けよう、神楽場にて、三方に祭文を捧げ、その前で神楽踊るべし、祭文に記された数、治療薬を三方にのせよう……

……善きかな、神去り前に、善き人の願い聞き、聖女遣わせる、聖女、命終わるとき、この世、神去りと思えど、女長老誓い、我ら八百万の神たち、力あわせん……

……善きかな、ゆめゆめ誓い、忘れるなかれ、現世（うつしよ）弥栄、常世（とこよ）弥栄、善きかな、善きかな、『アメ』に栄えあるべし……


　ぞっとしました……

「おばあ様……」
「言わなくていいわよ……皇后も……巫女の女学校……春には開学させなくては……」