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第十八章 岩倉姫宮家の日常
校外活動のお誘い
しおりを挟む4限目が終わり、帰ろうとすると、
「雪乃様、この後、ご予定はあおりですか?」
クラスメートの一人が、声をかけてきました。
「なにもございませんが?」
「すこしお聞きしたいことがあるのですが?」
「どのようなことでしょう?」
「雪乃様は学芸部にはご興味はございませんか?」
学芸部ですか……どこの女学校にも校友会があり、その傘下に学芸部があります。
いわゆる部活なのですが、前世の部活ではありませんよ。
でも九月には校友会の予定はなかったと思うのですが……
「学業に付いていくのが精一杯で、余裕がなくて」
「そうですか……」
あまりにがっかりした顔を見て、すこし可哀想になったのです。
「なにか私にありますの?」
パッと顔が明るくなったクラスメート、分かりよい方ですね。
「実は学芸部では、今度陸軍の帝都第一衛戍(えいじゅ)病院への慰問が計画されているのです」
「雪乃様の唱歌を歌われるお声があまりにお綺麗で、ご参加願えないかと、お誘いした訳です」
えっ、私の歌?でもこの学校で習った歌って、良い曲なかったのですが……
「私が歌うのですか?」
「お願い出来れば……」
「でも、陸軍の病院なのでしょう、女学校の歌なんて、面白くないのでは?」
「別に、授業で習う歌でなくて、よろしいかと存じますが」
「そうですね……お父様、お母様の許可を頂かねば、なんともいえないので……」
そう、生徒は校外活動をするとき、保護者保証人の許可が必要と、校則に明記されています。
「それは当然と存じます、ご帰宅されたらお許しをお願いしてもらえませんか?」
「それは……お父様は忙しい方ですが……おられたら、お聞きしてみます」
この方、私のお父様って、誰になるか知っていらっしゃるのかしら?
その日、帰宅してメイドさんに隣の宮殿へ、今回の件について、ご許可をお願いしたわけです。
「まったく、面倒なことです!」
「雪乃様、校友会の行事に誘われたのですか?」
私が愚痴っていると、文子様が聞いてきました。
文子様の通う華族高女も半ドンのようです。
「陸軍の帝都第一衛戍(えいじゅ)病院への慰問だそうです、歌をお願いされました」
「あの……たしか保護者の許可がいると思うのですが……」
「さきほど、メイドさんに、宮殿へ裁可をお願いしてきてもらいました」
「大変ですね……お相手の方、雪乃様がどのような方かご存じなのでしょうかね」
「例のニュース映画のお陰で、ご存じとは思うのですが……多分保護者のことは知らなかったのでしょうね」
「まぁ、許可していただけるでしょう」
「そうなったら、どの歌を歌われるのですか?」
「『早春賦』なんてどうかしら?」
「秋に春の歌ですか?」
「いわれればそうでした、私ってお馬鹿ですね」
「陸軍ですから、軍歌でも歌おうかしら?」
なぜか、軍歌は前世の帝国陸軍の軍歌なのですね……
何でも帝国成立時からの伝統ある軍歌だそうです。
帝国成立時ね……
その日の夕方、お使いが来ました。
「雪乃王女殿下におかれましては、至急参内をお願いいたします、陛下がお待ちです」
で、お使いの方と一緒に参内すると、お父様の私的な休憩室に案内されたのです。
お母様もおられました。
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