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第十一章 夏の離宮のお姫様

避暑地のコテージ

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 さて、 やっと避暑地の駅に着きました。
 さすがに高原の避暑地、帝都の暑さが嘘のようです、快適です!
 八月になったら、どうしようと思っていましたからね……
 おやおや、お迎えの馬車がいましたね。

「ご苦労様です」
 女官さんが御者さんに声をかけると、私を乗せ走り出しました。

 そして夏の離宮に到着、広大な敷地に乗り入れると、白亜の建物と、その前に広がる広場と噴水群、そしてお洒落なコテージがあちこちにあります。
 私はその一つに、これから一週間、過ごすことになっています。
 どうやら、付き添ってきた女官さんは、そのまま私の面倒を見てくれるらしいのです。

「王女殿下、こちらがご宿泊場所です、どうぞ、ごゆっくりとお過ごしください」
「あの?出かけることは?」
「申し訳ありませんが、出来ません」
 離宮の敷地、というより、このコテージが属しているエリアよりは、出ないようにといわれました。

 このコテージの属するエリアには、真ん中に通りが走っており、三つづつコテージが建っています、実際、直ぐ隣にもう一つ立っており、少し離れて、さらにもう少し大きい建物が一つあります。
 通りの向こう側には、かなり立派な二階建ての石造りの洋館、奥に平屋の木造建物が二棟……
 どうやら、このエリアには、六つの建物が建っているようですね。

 私にあてがわれたコテージだって、完全な洋館ですよね……平屋の木造建物で、イメージ的には呉にある『入船山記念館』ですかね。
 隣の建物も木造ですが、こちらは二階建て、あえて云うなら『大磯迎賓館』ですかね。
 もう一つの建物は、久光お兄様のお屋敷より大きいような気がします。

「親王殿下は、どうされておられるのですか?」
「親王殿下は、ただいま華族中学の夏山登山訓練で、この地には来られておりません」

「そうですか……」

「王女殿下におかれましては、明日、王国の第六王女殿下とご会談のご予定です、それまではごゆっくりなされてください」
 とは云われましたが、お昼を食べたら、散歩するぐらいで何もすることはありません。

 朝の九時始発の列車に乗り、昼に到着、今十二時三十分です。

「王女殿下、お食事の時間です」
 と云われましたので、お昼となりましたが、女官さんと二人だけで食事……
 料理は、別のところで作られ、運ばれてくるとか……
 それを女官さんが、暖めて出してくれるのです。

「王女殿下、皇后様より、昼食後からはお一人にせよ、と申しつかっていますが、なにかご用があれば、私は通り向こうの建物に、皇太后様付きとして詰めておりますので、申しつけてください」
 えっ、あの前の建物は、おばあ様がお泊まりになる建物なの?
 
 なら、今夜は一人でゆっくりしたいので、ご飯も遠慮して、好きなモノを取り寄せましょうか♪
 ネットスーパーなんて便利なモノもありますからね。
 即日配達なんてスーパーもあるのですよね♪ 

「お隣はどなたが宿泊を?」
「王国の第六王女殿下とお聞きしております」

 で、お食事の後、仕方無いのでお散歩をする私です。

 小一時間ほどでお散歩も終わってしまい、一人お茶会なんてね、暇つぶしですね。

 で、コテージに戻ろうとすると、隣の家に馬車が停まり、なかより私ぐらいの女の子が、女官さん達に取り囲まれ降りてきたのです。
 黒い髪で瞳がスミレ色?、そういえばこの瞳の色の、某イギリスの大女優の子役時代に似ているような……絶世の美少女ですよ。

 王国の第六王女殿下のようです。 

 私からご挨拶することにしました。
「こんにちは、私は岩倉姫宮雪乃と申します、一週間、お隣に宿泊することになっております、短い間ですが宜しくお付き合い願います」
「ダイアナ・スチュアート……です……」
  
 王女殿下は、かなり恥ずかしがり屋さんのようでした。
 
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