5 / 149
第一章 お嬢様になりました
女子の進路
しおりを挟む夕食は豪華なものでした。
「雪乃、好きなだけ食べなさい、お前は少しやせすぎている」
「ところで学校のことなのだが、先ほど当家の顧問弁護士が来て、結果を知らせてくれた、合格したそうだ」
お兄様がそう云いながら、奨学生試験の合格通知を差し出しました。
「本当に『帝国第一高等女学校』で良いのか?華族の息女が通うような女学校ではないが?」
華族や裕福な商家の娘が通うのは、『華族高等女学校』と呼ばれる学校で、華族の息女は無試験で入学出来る特典があります。
ただ、学費はべらぼうに高く、貧乏な男爵家になると学費が払えないようなのです。
そのためとは言いませんが、学力的にはかなり低く、学費さえ払えれば簡単に入れる女学校です。
しかも、この『華族高等女学校』を卒業すれば、社交界に必ずデビューできます。
『帝国第一高等女学校』というのは、女子の教育機関としては名門で、才媛が集まる女学校として有名なのです。
奨学生試験とは学費免除となるもので、超難関試験として知られています、華族の息女が受かるなんて滅多にありません。
もっとも華族の息女は受験もしませんが……
ライバルとなる西のほうにある、『帝国第二高等女学校』よりも、学力として頭一つ抜けているともっぱらの評判です。
『帝国第一及び第二高等女学校』は学費が無料とはいいませんが、かなり安いのです。
女子の最高学府と呼ばれる二つ高等女子師範に、かなりのこの『帝国第一高等女学校』から進学しています。
帝国唯一の女子医専である、『帝都女子医学専門学校』の奨学生試験合格者もかなり出しています。
ちなみに二つ高等女子師範学校からは、さらに二つの国立文理科大学にも進学可能、この国立文理科大学は高等女子師範学校卒業生には受験を認めているのです。
――これについては、東京文理科大学・東京高等師範学校・東京第一臨時教員養成所一覧・ 昭和18年度 という東京文理科大学が出版したものに、東京文理科大学、四、本学諸規定、(一)東京文理科大学学則、第一章 学部、第十八條、に、本学に入学許可すべき者として、女子高等師範学校の名がある。また第十九條、においては、女子高等師範学校専攻科の名がある。作者――
また最高学府である、七つの帝国大学のうちの、『第三帝国大学』の入学試験も受験可能、事実、年に一人か二人、女学生が入学しています。
この学士を持つ女性はかなりの確率で、『帝国第一及び第二高等女学校』、『帝国第一及び第二高等女子師範学校』に教師として奉職、というコースをとることは、帝国内では有名なのです。
当然ですが、まれに博士号を持つ女性もでますが、世間からはいいようにはいわれないようですね。
「私は就職して、お兄様のお役に立ちたいと思っています、学費の高い『華族高等女学校』ではご迷惑をかけます」
「雪乃!私はお前の為なら、学費ぐらい何ともないよ、この朝比奈の家は貧しいわけではないぞ!」
「お兄様、お聞きください、朝比奈の家の娘が『帝国第一高等女学校』に入学となれば、少なくとも世間は感心してくれます」
たしかに『帝国第一高等女学校』入学となれば、世間は才媛と賞賛してくれます、もっとも華族の妻は諦めることになりますね。
あまりに賢い女は、敬遠されるのはどこの世界でもあるのですよ。
「聞けば久光お兄様は、あの難しい帝国陸軍士官学校を首席でご卒業、陸軍大学校も首席、『恩賜の軍刀』をいただいたと聞きました、その妹が不出来では、陸軍参謀本部に勤務の、お兄様の顔に泥を塗ることになります!」
そう、久光お兄様は、府立一中から帝国陸軍帝都幼年学校予科入学、同校卒業(首席)。
帝国陸軍中央幼年学校卒業(首席)。
帝国陸軍士官学校卒業(首席)。
歩兵少尉任官、近衛歩兵第一連隊(旗手)。
陸軍大学校(首席で卒業、中尉)。
隣の王国へ駐在武官として赴任後、陸軍参謀本部勤務(大尉)
現在三十歳でなんと独身なのですよ。
とんでもない陸軍のエリート軍人、俸給は『やっとこ大尉』ですから、私の感覚では約年収三百万、もうすぐ少佐になるそうですので約年収四百五十万、なんとかお一人で生活出来る程度なのです。
ありえないほどのイケメンのうえエリート軍人、お嫁さんなど望めば、誰でもホイホイと嫁いできそうです!
「雪乃、私の顔などどうでもいい事、お前は本当に『帝国第一高等女学校』に行きたいのだな?」
「はい!私は久光お兄様にご迷惑などかけたくないのです!」
少しばかり困った顔のお兄様……
でもお兄様の困った顔も素敵なのです♪
お兄様は、私の言い分を認めてくださり、『帝国第一高等女学校』に入学することが決まったのです。
12
お気に入りに追加
10
あなたにおすすめの小説
【完結】幼馴染にフラれて異世界ハーレム風呂で優しく癒されてますが、好感度アップに未練タラタラなのが役立ってるとは気付かず、世界を救いました。
三矢さくら
ファンタジー
【本編完結】⭐︎気分どん底スタート、あとはアガるだけの異世界純情ハーレム&バトルファンタジー⭐︎
長年思い続けた幼馴染にフラれたショックで目の前が全部真っ白になったと思ったら、これ異世界召喚ですか!?
しかも、フラれたばかりのダダ凹みなのに、まさかのハーレム展開。まったくそんな気分じゃないのに、それが『シキタリ』と言われては断りにくい。毎日混浴ですか。そうですか。赤面しますよ。
ただ、召喚されたお城は、落城寸前の風前の灯火。伝説の『マレビト』として召喚された俺、百海勇吾(18)は、城主代行を任されて、城に襲い掛かる謎のバケモノたちに立ち向かうことに。
といっても、発現するらしいチートは使えないし、お城に唯一いた呪術師の第4王女様は召喚の呪術の影響で、眠りっ放し。
とにかく、俺を取り囲んでる女子たちと、お城の皆さんの気持ちをまとめて闘うしかない!
フラれたばかりで、そんな気分じゃないんだけどなぁ!
クラスメイトの美少女と無人島に流された件
桜井正宗
青春
修学旅行で離島へ向かう最中――悪天候に見舞われ、台風が直撃。船が沈没した。
高校二年の早坂 啓(はやさか てつ)は、気づくと砂浜で寝ていた。周囲を見渡すとクラスメイトで美少女の天音 愛(あまね まな)が隣に倒れていた。
どうやら、漂流して流されていたようだった。
帰ろうにも島は『無人島』。
しばらくは島で生きていくしかなくなった。天音と共に無人島サバイバルをしていくのだが……クラスの女子が次々に見つかり、やがてハーレムに。
男一人と女子十五人で……取り合いに発展!?
スライム10,000体討伐から始まるハーレム生活
昼寝部
ファンタジー
この世界は12歳になったら神からスキルを授かることができ、俺も12歳になった時にスキルを授かった。
しかし、俺のスキルは【@&¥#%】と正しく表記されず、役に立たないスキルということが判明した。
そんな中、両親を亡くした俺は妹に不自由のない生活を送ってもらうため、冒険者として活動を始める。
しかし、【@&¥#%】というスキルでは強いモンスターを討伐することができず、3年間冒険者をしてもスライムしか倒せなかった。
そんなある日、俺がスライムを10,000体討伐した瞬間、スキル【@&¥#%】がチートスキルへと変化して……。
これは、ある日突然、最強の冒険者となった主人公が、今まで『スライムしか倒せないゴミ』とバカにしてきた奴らに“ざまぁ”し、美少女たちと幸せな日々を過ごす物語。

Hしてレベルアップ ~可愛い女の子とHして強くなれるなんて、この世は最高じゃないか~
トモ治太郎
ファンタジー
孤児院で育った少年ユキャール、この孤児院では15歳になると1人立ちしなければいけない。
旅立ちの朝に初めて夢精したユキャール。それが原因なのか『異性性交』と言うスキルを得る。『相手に精子を与えることでより多くの経験値を得る。』女性経験のないユキャールはまだこのスキルのすごさを知らなかった。
この日の為に準備してきたユキャール。しかし旅立つ直前、一緒に育った少女スピカが一緒にいくと言い出す。本来ならおいしい場面だが、スピカは何も準備していないので俺の負担は最初から2倍増だ。
こんな感じで2人で旅立ち、共に戦い、時にはHして強くなっていくお話しです。
月が導く異世界道中
あずみ 圭
ファンタジー
月読尊とある女神の手によって癖のある異世界に送られた高校生、深澄真。
真は商売をしながら少しずつ世界を見聞していく。
彼の他に召喚された二人の勇者、竜や亜人、そしてヒューマンと魔族の戦争、次々に真は事件に関わっていく。
これはそんな真と、彼を慕う(基本人外の)者達の異世界道中物語。
漫遊編始めました。
外伝的何かとして「月が導く異世界道中extra」も投稿しています。
セクスカリバーをヌキました!
桂
ファンタジー
とある世界の森の奥地に真の勇者だけに抜けると言い伝えられている聖剣「セクスカリバー」が岩に刺さって存在していた。
国一番の剣士の少女ステラはセクスカリバーを抜くことに成功するが、セクスカリバーはステラの膣を鞘代わりにして収まってしまう。
ステラはセクスカリバーを抜けないまま武闘会に出場して……

勇者一行から追放された二刀流使い~仲間から捜索願いを出されるが、もう遅い!~新たな仲間と共に魔王を討伐ス
R666
ファンタジー
アマチュアニートの【二龍隆史】こと36歳のおっさんは、ある日を境に実の両親達の手によって包丁で腹部を何度も刺されて地獄のような痛みを味わい死亡。
そして彼の魂はそのまま天界へ向かう筈であったが女神を自称する危ない女に呼び止められると、ギフトと呼ばれる最強の特典を一つだけ選んで、異世界で勇者達が魔王を討伐できるように手助けをして欲しいと頼み込まれた。
最初こそ余り乗り気ではない隆史ではあったが第二の人生を始めるのも悪くないとして、ギフトを一つ選び女神に言われた通りに勇者一行の手助けをするべく異世界へと乗り込む。
そして異世界にて真面目に勇者達の手助けをしていたらチキン野郎の役立たずという烙印を押されてしまい隆史は勇者一行から追放されてしまう。
※これは勇者一行から追放された最凶の二刀流使いの隆史が新たな仲間を自ら探して、自分達が新たな勇者一行となり魔王を討伐するまでの物語である※
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる