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シリーズ004
002 異能持ちの作り方
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「ミーシャは、異能持ちって知ってる?」
「異能持ち、って……噂じゃないの?」
異能持ち。
それは、魔法以外の手段を用いて、超常の力を発する者達のことである。魔法という形態化された技術に頼らず、魔法と同等、いやそれ以上の力を発揮することもあるらしい。
というのも、私にとって異能持ちとは、『そういう人物がいる』という話を聞いたことがあるだけで実際は目にしたことがない、ある意味空想の産物だからだ。
「まあ、ここは『魔界』に近いわけじゃないから、そんなにいないだろうけどね」
「……どういうこと?」
さっきから疑問ばかり感じてしまう。
魔界とはこの大陸世界『アクシリンシ』において、大陸を一つの円とするならば、円周上を囲うようにして存在する魔物や魔族達の巣窟だ。一応周辺に位置する国等が侵略を妨害しているにしても、それぞれが独立して防衛を行っている以上、隙間から抜け出てくる奴らもいる。それが国の外で無限に湧いてくる魔物達である。
「異能持ちってね、分かりやすく言うと魔物や魔族の血を、自分の血として取り込んだ人間のことなのよ」
「……は?」
え、何、てことは何か?
異能持ちって、早い話が魔物とかが持つような力を使ってた、ってこと?
「え、え、血を取り込むとか、そんなことできるの?」
「普通は無理。人間同士だけでも、血液の合う合わないがあるし。まあ、魔族辺りと子供でも作れば、高確率で異能持ちが産まれるだろうけどね」
「そんな夢物語みたいなことが……」
私の知っている限り、その手の話は大抵バッドエンドだ。碌な物じゃない。
「……まあ、だからかどうかは知らないけど、人工的に異能持ちを増やそうと考えたろくでなしがいたのよ」
一瞬、いつもおちゃらけた様な顔をしているリナの顔が、怖い位に真剣な表情を作り出していた。
「ワタシはそのろくでなしを探して、この街に来た。ミーシャの旦那も、そいつの仕事を邪魔した結果、死んだんだと思う」
「異能持ちを作るなんて……そんなこと、できるの?」
「多分、まだ実験段階だろうけどね」
リナは指を丸めて小さな円を作り、目の前に翳した。
「魔血錠剤、魔物や魔族の血を凝縮させて錠剤にしたもの。それを飲んで生き残れれば、晴れて異能持ちってわけ」
「そんなものがあったんだ……」
「……ある意味、麻薬とかよりも質が悪いけどね」
リナは指で作った円を壊して、掌を広げてそのまま顔の上に置いた。目を覆い隠す様は、まるで夢の中で寝て、強引に目覚めようとしているみたいだった。
「ワタシが調べていた限りでは、もうこの街に薬はない。下手したら、この国の中には、もう。……だから、師匠の件のほとぼりが冷めたら、さっさと出ようと思ってたんだけどねぇ~」
あ、ちょっと戻った。
「まさか最後の最後で魔血錠剤探す奴が出てくるなんて、普通思わないっての!」
「まあ……確かに」
いくら薬がなくても、探している人間がいるということは、まだ魔血錠剤がこの辺りにあると思われているのだろう。そして、その錠剤があるということは……それを巡って、また誰かが傷付くかもしれない。
「一体誰なの? そんな薬を作ったのは」
「ん? ワタシの母親」
……え?
「え、え? 母親? え、だってリナ、孤児じゃ」
「ああ、違う違う」
顔の前で手を振って否定するリナ。しかし私は、その後言ったことを否定して欲しかった。
「前世でのワタシの母親。今はどこでどんな立ち位置なのかは知んないけど」
「前世!?」
誰か! 学のない私に分かりやすく教えてお願いっ!
「異能持ち、って……噂じゃないの?」
異能持ち。
それは、魔法以外の手段を用いて、超常の力を発する者達のことである。魔法という形態化された技術に頼らず、魔法と同等、いやそれ以上の力を発揮することもあるらしい。
というのも、私にとって異能持ちとは、『そういう人物がいる』という話を聞いたことがあるだけで実際は目にしたことがない、ある意味空想の産物だからだ。
「まあ、ここは『魔界』に近いわけじゃないから、そんなにいないだろうけどね」
「……どういうこと?」
さっきから疑問ばかり感じてしまう。
魔界とはこの大陸世界『アクシリンシ』において、大陸を一つの円とするならば、円周上を囲うようにして存在する魔物や魔族達の巣窟だ。一応周辺に位置する国等が侵略を妨害しているにしても、それぞれが独立して防衛を行っている以上、隙間から抜け出てくる奴らもいる。それが国の外で無限に湧いてくる魔物達である。
「異能持ちってね、分かりやすく言うと魔物や魔族の血を、自分の血として取り込んだ人間のことなのよ」
「……は?」
え、何、てことは何か?
異能持ちって、早い話が魔物とかが持つような力を使ってた、ってこと?
「え、え、血を取り込むとか、そんなことできるの?」
「普通は無理。人間同士だけでも、血液の合う合わないがあるし。まあ、魔族辺りと子供でも作れば、高確率で異能持ちが産まれるだろうけどね」
「そんな夢物語みたいなことが……」
私の知っている限り、その手の話は大抵バッドエンドだ。碌な物じゃない。
「……まあ、だからかどうかは知らないけど、人工的に異能持ちを増やそうと考えたろくでなしがいたのよ」
一瞬、いつもおちゃらけた様な顔をしているリナの顔が、怖い位に真剣な表情を作り出していた。
「ワタシはそのろくでなしを探して、この街に来た。ミーシャの旦那も、そいつの仕事を邪魔した結果、死んだんだと思う」
「異能持ちを作るなんて……そんなこと、できるの?」
「多分、まだ実験段階だろうけどね」
リナは指を丸めて小さな円を作り、目の前に翳した。
「魔血錠剤、魔物や魔族の血を凝縮させて錠剤にしたもの。それを飲んで生き残れれば、晴れて異能持ちってわけ」
「そんなものがあったんだ……」
「……ある意味、麻薬とかよりも質が悪いけどね」
リナは指で作った円を壊して、掌を広げてそのまま顔の上に置いた。目を覆い隠す様は、まるで夢の中で寝て、強引に目覚めようとしているみたいだった。
「ワタシが調べていた限りでは、もうこの街に薬はない。下手したら、この国の中には、もう。……だから、師匠の件のほとぼりが冷めたら、さっさと出ようと思ってたんだけどねぇ~」
あ、ちょっと戻った。
「まさか最後の最後で魔血錠剤探す奴が出てくるなんて、普通思わないっての!」
「まあ……確かに」
いくら薬がなくても、探している人間がいるということは、まだ魔血錠剤がこの辺りにあると思われているのだろう。そして、その錠剤があるということは……それを巡って、また誰かが傷付くかもしれない。
「一体誰なの? そんな薬を作ったのは」
「ん? ワタシの母親」
……え?
「え、え? 母親? え、だってリナ、孤児じゃ」
「ああ、違う違う」
顔の前で手を振って否定するリナ。しかし私は、その後言ったことを否定して欲しかった。
「前世でのワタシの母親。今はどこでどんな立ち位置なのかは知んないけど」
「前世!?」
誰か! 学のない私に分かりやすく教えてお願いっ!
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