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シリーズ002
008 同期の男の行方
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結局、金ぴか騎士ことアンジェとやらは一度、大陸中央都市へ行くことにしたらしい。ここから距離はあるけれど、警察機構の中枢もそこにあるから、情報を得るにはそこへ行く方が手っ取り早い。
私からその男の名前を聞いた後、伝声魔法越しの会話は終わり、私達は少し時間を空けてから店に戻ることにした。もしかしたら迎えが来るかもしれないけれど、どっちにしても今は待つしかない。
「終わりましたか?」
「なんとか。しかし、あの男か……」
懐かしい話だ。
生前の旦那と馬が合わないくせに、よく一緒にいた私に話しかけていたという、訳の分からん奴だった。孤児院を出た後はとんと話を聞かなかったから、そいつが全国指名手配された、って聞いた時は旦那共々驚いて思わず『うそぉ!?』って叫んだな……
「その男性ですけど、本当にそんな名前なんですか?」
「そう、本名。それで周囲がからかい過ぎたものだから、ブチ切れた途端変な性格に振りきれちゃって」
「それは怒りますよ。同じ状況だったら多分私でも……」
多分私もだ。
「ところで、預けた人間が大金持ちというのは?」
「ん~私も人から聞いた話なんだけどね」
なんでも彼を連れてきた人間が、たしか母親を名乗っていたって聞いたと思うけど、赤ん坊と一緒に高価な貴金属を置いて行ったらしい。そして売っぱらった金品で連日娼館通いをした後残りを博打でスった、って昔孤児院の従業員に聞いたことがある。『私達にも寄越せ』って全員で院長に詰め寄ったって、煙草吹かしながら言ってたな、あのおばちゃん。
今どうしているんだろう? 結構面白かったのに。
「……いったいどんな孤児院で育ったんですか?」
「普通普通」
ちょっとペドフィリアな院長と、ヘビースモーカーで愚痴ばっかり言ってるおばちゃんと、後は元娼婦や元犯罪者が数名、うん普通だ。
孤児院の経営者がろくでなしなのは一般常識だし。
……というかまともな神経で勤まる仕事じゃないか。
「正直、歴代の勇者と同じ孤児院出身というわけですから、とんでもないスペック隠している可能性もあるのでは……」
「ないない、周囲が異常なだけ」
一応魔法は使えるけど、ごくごく普通の一般女性です。
「それより問題なのは……」
どう話したものか、と考えていると丁度カリスさんが迎えに来るのが見えた。壁から抜いた剣を検分していたジャンヌも、鞘に納めて近寄ってくる。
「それは後で、ゆっくり話しましょう」
「うん……」
私達はカリスさんと共に、先程までいたレストランに戻っていった。
そしてディル君とフィンさんに事情を説明、と行きたいが、『勇者様のコントロール』という大義名分がある以上、下手に話して暴走されても困る。
というわけで事前に打ち合わせした内容を説明。
「そうですか、娼婦だけで生きていくのは難しいから、他にも仕事を探そうと……」
「できれば内緒でお願いね。出版社でも知っている人は少ないし」
とりあえず、兼業で記者もどきをしていることだけはばらした。
……というか、よく考えたらやること自体は一緒だし、ディル君が『他の女に手を出す』的なことにならない限りは問題ないか。
「……こういうこと?」
「そういうこと」
そして裏でこっそりカリスさんに事情を聞いているフィンさん。もしかしたら全部気づいているかもしれないけど、黙ってくれているならそれでよし。というかこれ以上、ディル君に余計なことを振り込まないでお願いします。この娼館紹介者め。
「じゃあ、もう遅いし……私は帰るね」
「あ、送っていきます」
まあ、なんだかんだで勇者様ご一行に送り届けられ、無事に帰宅して今日のお話はこれでおしまいである。
「あれ、お疲れ?」
「色々あってね……」
そして護衛に就いていたリナの出迎えを受け、そのまま部屋に戻って就寝。
では次回。
私からその男の名前を聞いた後、伝声魔法越しの会話は終わり、私達は少し時間を空けてから店に戻ることにした。もしかしたら迎えが来るかもしれないけれど、どっちにしても今は待つしかない。
「終わりましたか?」
「なんとか。しかし、あの男か……」
懐かしい話だ。
生前の旦那と馬が合わないくせに、よく一緒にいた私に話しかけていたという、訳の分からん奴だった。孤児院を出た後はとんと話を聞かなかったから、そいつが全国指名手配された、って聞いた時は旦那共々驚いて思わず『うそぉ!?』って叫んだな……
「その男性ですけど、本当にそんな名前なんですか?」
「そう、本名。それで周囲がからかい過ぎたものだから、ブチ切れた途端変な性格に振りきれちゃって」
「それは怒りますよ。同じ状況だったら多分私でも……」
多分私もだ。
「ところで、預けた人間が大金持ちというのは?」
「ん~私も人から聞いた話なんだけどね」
なんでも彼を連れてきた人間が、たしか母親を名乗っていたって聞いたと思うけど、赤ん坊と一緒に高価な貴金属を置いて行ったらしい。そして売っぱらった金品で連日娼館通いをした後残りを博打でスった、って昔孤児院の従業員に聞いたことがある。『私達にも寄越せ』って全員で院長に詰め寄ったって、煙草吹かしながら言ってたな、あのおばちゃん。
今どうしているんだろう? 結構面白かったのに。
「……いったいどんな孤児院で育ったんですか?」
「普通普通」
ちょっとペドフィリアな院長と、ヘビースモーカーで愚痴ばっかり言ってるおばちゃんと、後は元娼婦や元犯罪者が数名、うん普通だ。
孤児院の経営者がろくでなしなのは一般常識だし。
……というかまともな神経で勤まる仕事じゃないか。
「正直、歴代の勇者と同じ孤児院出身というわけですから、とんでもないスペック隠している可能性もあるのでは……」
「ないない、周囲が異常なだけ」
一応魔法は使えるけど、ごくごく普通の一般女性です。
「それより問題なのは……」
どう話したものか、と考えていると丁度カリスさんが迎えに来るのが見えた。壁から抜いた剣を検分していたジャンヌも、鞘に納めて近寄ってくる。
「それは後で、ゆっくり話しましょう」
「うん……」
私達はカリスさんと共に、先程までいたレストランに戻っていった。
そしてディル君とフィンさんに事情を説明、と行きたいが、『勇者様のコントロール』という大義名分がある以上、下手に話して暴走されても困る。
というわけで事前に打ち合わせした内容を説明。
「そうですか、娼婦だけで生きていくのは難しいから、他にも仕事を探そうと……」
「できれば内緒でお願いね。出版社でも知っている人は少ないし」
とりあえず、兼業で記者もどきをしていることだけはばらした。
……というか、よく考えたらやること自体は一緒だし、ディル君が『他の女に手を出す』的なことにならない限りは問題ないか。
「……こういうこと?」
「そういうこと」
そして裏でこっそりカリスさんに事情を聞いているフィンさん。もしかしたら全部気づいているかもしれないけど、黙ってくれているならそれでよし。というかこれ以上、ディル君に余計なことを振り込まないでお願いします。この娼館紹介者め。
「じゃあ、もう遅いし……私は帰るね」
「あ、送っていきます」
まあ、なんだかんだで勇者様ご一行に送り届けられ、無事に帰宅して今日のお話はこれでおしまいである。
「あれ、お疲れ?」
「色々あってね……」
そして護衛に就いていたリナの出迎えを受け、そのまま部屋に戻って就寝。
では次回。
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