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シリーズ002

007 伝声魔法による匿名会談

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 はいリスナーの皆さんこんにちは。DJミィの伝声魔法相談室の時間ですよ~。
 ……はい、冗談です。そうでもしないとやってられないのよ、これが。
「姉ちゃん、俺といいことしようゼブラッ!?」
「あっちへ行きなさいこの不届き者めっ!」
 さっきからナンパ野郎が鬱陶しいのよね。
 浮浪者からたちの悪い冒険者崩れまで、ジャンヌが追っ払ってくれなかったら今頃輪姦パーリナイトだ。いくら娼婦でも精神崩壊起こすわ。本当このまま強姦レイプ魔が来たらどうしてくれるカリスさんこの野郎。
「えっと、これを耳に当てればいいのよね?」
 ジャンヌが浮浪者の腹に蹴りを入れているのを見ながら、私はカリスさんから受け取っていた細長い魔法導具(刻んだ『魔法』を安定して『導』く器『具』で『魔法導具』という、製造コストが高すぎてあまり普及していない便利道具アイテム)の片側を耳にあてた。
「……おおっ!」
 すると耳の裏側を軸にして自動的に固定され、反対側の部分が私の口元まで伸びてきた。後は向こうから同じように伝声魔法が刻まれている『魔法導具』を介して、こちらに声が聞こえてくるから、それまで待っててくれと言われている。
(……え、ハンズフリー? イヤホンマイク? 何それおいしいの?)
「後は待つだけか……ジャンヌ、大丈夫?」
「いい、から……早くっ!」
 おお、剣で火花を散らさせながら、鞘でぶん殴った。教会騎士でもさすがは冒険者、乱暴な戦い方もできるんだ。
「……先に誰か呼んでくる?」
 ダン!
 返事の代わりに返ってきたのは、ジャンヌの剣だった。弾かれてそのまま私の横を通り過ぎ、後ろの壁に突き立って震えている。
 危な……もう少しで死ぬところじゃん。旦那に会う心の準備もできてないってのに。
「だい、じょうぶで、す……もう片付きました」
 荒々しく呼吸を繰り返しながら、振り下ろした鞘を握り直し、再び腰に括り付けている。そんなジャンヌが心配だったが、状況が動く方が先だった。
『もしもし、メリッサさん? 聞こえますか?』
「あ、はい聞こえます」
 一応匿名性を高める為に、声音は無機質よりに変声されている。そもそも、そこまで上等な物じゃないから、どうしても声音は変わってしまうらしいけど。
『では代わりますね……すまない、そちらはメリッサ・ロッカで間違いないか?』
「はい、そうです」
 ちなみにメリッサ・ロッカとは私のことだ。一応、娼婦用にと偽名を考えていたのだが、結局使わなかったので今回採用することにした。せっかく考えたのに勿体もったいないし。
『早速ですまないが、『ジョセフ・ロッカ』は黒髪だと聞いているが、それは地毛か?』
 え、髪色?
「え、ええ。私が知る限りそうですけど……どうして髪の色を?」
『そうか……いや、すまない。なら同じ孤児院で、銀髪の男のことを知らないか?』
「それは、たしかに数人いたと思いますが……」
 なんか話が読めないな。銀髪、って……どういうこと?
『単刀直入に言おう。我々が探しているのは『ロッカ』の孤児院に預けられた、銀髪の男だ。事情は話せんが、『ロッカ』の家名で銀髪の男はこの街に一人も残っていなくてな。少しでも手掛かりが欲しい。この際誰でもいいから、居場所に心当たりはないか?』
「銀髪、となると……」
 たしかに銀髪の男は何人かいた。私の同期にも一人いる。
 そいつはやたらと横柄おうへいで、鬱陶うっとうしいこと……あれ、待てよ。
「あの、もしかしてですけど……その男を預けた人って、大金持ちだったりします?」
『それだっ!』
 うるさっ!
「それなら心当たりが一人いますけど……もうこの街にいませんよ?」
『ああ、いるなら我々がとっくに見つけている。それで、彼は今どこに?』
「それが……」
 丁度ジャンヌと話してたんだよな……そのことを。



「……強盗やらかして逃げ出しました。全国指名手配中です、その男」
『どちくしょう!』
 孤児院を閉鎖に追い込んだ男は、隣国の勇者をも絶望に追い込んでしまった。
 てか、同期の男あいつの身元どうなってんの?

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