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シリーズ001
010 私のこれから
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だから偶に、虚しく感じてしまう。
人並みに結婚生活を送って、真っ当に人生を終えるものと思っていたのに、待っていたのは娼婦としての生活。
どこで間違ったのだろう?
努力する時間が惜しいばかりに、すぐに生活費が稼げる娼婦になったこと?
勇者と言う存在に興味を持ち、冒険者だった旦那に好奇心をぶつけたこと?
それとも……身寄りも何もない孤児が、この世界で生きようと足掻いたこと?
「ねぇ……」
「どうしたの、ミーシャさん?」
ベッドの上に並んで寝転んでいた私達。
情事の後始末もしないまま、服を着ずにシーツを被っての情後の会話。いつもは彼から話題を振られているけれど、今日は気まぐれに、私から振ってみた。
「偶には別の女を抱きたい、とか思わないの?」
ジャンヌ達には悪いけど、ちょっとは不思議に思っといた方が変な不信感も抱かれないでしょう?
……と、適当に言い訳してみたり。
「うぅん……実は、ミーシャさんの指名を買い占める時にも言われたんだけど」
頬をポリポリと掻いているのが見なくても分かるくらいに、付き合いが長くなってしまったと思う。私は気にせず、続きを待った。
「……結局駄目だった。ミーシャさんの身体が、偶に見せる悲しそうな瞳が忘れられなくて、選べなかった」
悲しそうな瞳、って……やっぱりまだ、引き摺ってるのかな。
「こんなこと言うのも駄目だと思うけど……娼婦に入れ込んでも、いいことないわよ?」
「別にいいよ。勇者といってもさ、そんなに出会いがないんだよね」
まあ、ジャンヌもディル君にそんな感情を向けてないかもしれないけど、娼館通いを止めればまだ好印象になると思うんだけどな……
「だから今は……」
仰向けになると、それに合わせてディル君が私に覆い被さってきた。
「……ミーシャさんに傍にいて欲しいんだ」
「まったく……」
呆れてものも言えない。
これだから童貞レベルの高い奴は……
「……商売抜きでの忠告、『娼婦は身体しか買えない』わよ?」
「うん、だから『練習』も『本番』も、ミーシャさんだけがいいな、って」
……しょうがないな。
「じゃあ、きちんと代金を払ってくれる限り」
あまり情欲の湧かない、唇だけの重なり合い。一応は娼婦の仕事の範疇だが、偶にはこういう優しいのも、旦那にしてあげるようなキスも悪くない。
「『身体』だけはあなたの女になってあげる」
「今はまだ、それでいい、かな……」
独占欲が強く、娼婦に大金をつぎ込んでしまう、童貞レベルの高い勇者様の情欲を受け入れていく。
未だに死んだ旦那に未練を持っているけれど、それでも私は娼婦だ。生きる為だ。身体はいくらでも売り払ってやる。だから、
「ああっ、ああっ!?」
「ぁあんっ!?」
だから……『心』まで買おうとしないで。お願いだから。
人並みに結婚生活を送って、真っ当に人生を終えるものと思っていたのに、待っていたのは娼婦としての生活。
どこで間違ったのだろう?
努力する時間が惜しいばかりに、すぐに生活費が稼げる娼婦になったこと?
勇者と言う存在に興味を持ち、冒険者だった旦那に好奇心をぶつけたこと?
それとも……身寄りも何もない孤児が、この世界で生きようと足掻いたこと?
「ねぇ……」
「どうしたの、ミーシャさん?」
ベッドの上に並んで寝転んでいた私達。
情事の後始末もしないまま、服を着ずにシーツを被っての情後の会話。いつもは彼から話題を振られているけれど、今日は気まぐれに、私から振ってみた。
「偶には別の女を抱きたい、とか思わないの?」
ジャンヌ達には悪いけど、ちょっとは不思議に思っといた方が変な不信感も抱かれないでしょう?
……と、適当に言い訳してみたり。
「うぅん……実は、ミーシャさんの指名を買い占める時にも言われたんだけど」
頬をポリポリと掻いているのが見なくても分かるくらいに、付き合いが長くなってしまったと思う。私は気にせず、続きを待った。
「……結局駄目だった。ミーシャさんの身体が、偶に見せる悲しそうな瞳が忘れられなくて、選べなかった」
悲しそうな瞳、って……やっぱりまだ、引き摺ってるのかな。
「こんなこと言うのも駄目だと思うけど……娼婦に入れ込んでも、いいことないわよ?」
「別にいいよ。勇者といってもさ、そんなに出会いがないんだよね」
まあ、ジャンヌもディル君にそんな感情を向けてないかもしれないけど、娼館通いを止めればまだ好印象になると思うんだけどな……
「だから今は……」
仰向けになると、それに合わせてディル君が私に覆い被さってきた。
「……ミーシャさんに傍にいて欲しいんだ」
「まったく……」
呆れてものも言えない。
これだから童貞レベルの高い奴は……
「……商売抜きでの忠告、『娼婦は身体しか買えない』わよ?」
「うん、だから『練習』も『本番』も、ミーシャさんだけがいいな、って」
……しょうがないな。
「じゃあ、きちんと代金を払ってくれる限り」
あまり情欲の湧かない、唇だけの重なり合い。一応は娼婦の仕事の範疇だが、偶にはこういう優しいのも、旦那にしてあげるようなキスも悪くない。
「『身体』だけはあなたの女になってあげる」
「今はまだ、それでいい、かな……」
独占欲が強く、娼婦に大金をつぎ込んでしまう、童貞レベルの高い勇者様の情欲を受け入れていく。
未だに死んだ旦那に未練を持っているけれど、それでも私は娼婦だ。生きる為だ。身体はいくらでも売り払ってやる。だから、
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