40 / 60
第三シリーズ
015 後始末
しおりを挟む
……ガチャッ!
「これでよし。後は警察に任せればいいわね」
「はいお疲れ~ふぁああ」
公衆電話で警察に通報したミサは、その横で欠伸しているリナとその場を離れた。流石に詳しく話せば面倒なことになるので、不審者を見たという程度の通報だが。
「これでアカネも満足して天国に行けるよね……」
「いや死んでないから。援交やめただけだから」
リナのボケにミサはツッコミを入れつつ、近くに止めていたバイクに跨った。
「そんじゃ帰るけどさ……一つ聞いていい?」
「ん~なに~」
流石に疲れているのか、普段は起きているリナでさえ、眠気に襲われている。それでもミサは気になり、あることを口にした。
「あんたあのペット、まだ飼い続けるの?」
「え、だって追い出す理由がないし?」
何言ってんだこいつ、という目をしてから、流石に辛くなったのか、さっさと背を向けて帰っていった。
家路についたリナを見つめつつ、バイクのハンドルにもたれながら、ミサは呟く。
「普通、身近な人間が死地に向かっているっていうのに、通報や武器の提供だけでじっとできるわけないでしょうに……」
本人もおそらくは気づいているのかもしれない。けれども、それでも何も言わないなんてどうかしているとしか、ミサには思えなかった。
「あのクロとかいう男、いったい何を考えてるの……」
善悪も損益も、おそらくは生死も厭わないのだろう。クロという青年がリナという少女にどのような感情を抱いているのか。
ミサは一抹の不安を抱きつつも、眠っていたバイクのエンジンを叩き起こした。
「ただいま~眠い」
「おかえり。お風呂湧いてるよ」
「ううん、もう寝る~」
丁度布団も敷かれていたこともあり、リナはそのままダイブして寝転がった。そのまま寝ようとしたご主人様に、クロは声を掛けた。
「それで、通り魔どうなったの?」
「殺して通報した~だからご飯は野菜うどんでよろしく~」
完全に意識が落ちたのか、寝息を立て始めるリナを見つめるクロは、小さく呟いた。
「明日の新聞次第だな。少なくとも夕刊までは確認するとして……」
その日、クロは眠ることなく、新聞やテレビに注意を向けていた。まるで、その時が来たのかを確かめるように……
「ちょっといい?」
「ん~、どうしたの、クロ?」
丸一日たった夜。流石に今日は休もう、とアップルフォンを枕元に投げ捨てながら、リナは寝転がったままクロの方を向いた。
「前に話したよね。その時が来るまで、一緒にいるって」
「話したね~それがどうかし、た、の……」
疲れていたからか、リナの反応は遅れた。クロの声色が変わっていることに。
「その時が来た……だから聞いて欲しい。俺の話を、俺が何から逃げているかを」
リナ達が通り魔を殺して丸一日が経過したが、その死体がニュースに流れることは、終ぞなかった。
「これでよし。後は警察に任せればいいわね」
「はいお疲れ~ふぁああ」
公衆電話で警察に通報したミサは、その横で欠伸しているリナとその場を離れた。流石に詳しく話せば面倒なことになるので、不審者を見たという程度の通報だが。
「これでアカネも満足して天国に行けるよね……」
「いや死んでないから。援交やめただけだから」
リナのボケにミサはツッコミを入れつつ、近くに止めていたバイクに跨った。
「そんじゃ帰るけどさ……一つ聞いていい?」
「ん~なに~」
流石に疲れているのか、普段は起きているリナでさえ、眠気に襲われている。それでもミサは気になり、あることを口にした。
「あんたあのペット、まだ飼い続けるの?」
「え、だって追い出す理由がないし?」
何言ってんだこいつ、という目をしてから、流石に辛くなったのか、さっさと背を向けて帰っていった。
家路についたリナを見つめつつ、バイクのハンドルにもたれながら、ミサは呟く。
「普通、身近な人間が死地に向かっているっていうのに、通報や武器の提供だけでじっとできるわけないでしょうに……」
本人もおそらくは気づいているのかもしれない。けれども、それでも何も言わないなんてどうかしているとしか、ミサには思えなかった。
「あのクロとかいう男、いったい何を考えてるの……」
善悪も損益も、おそらくは生死も厭わないのだろう。クロという青年がリナという少女にどのような感情を抱いているのか。
ミサは一抹の不安を抱きつつも、眠っていたバイクのエンジンを叩き起こした。
「ただいま~眠い」
「おかえり。お風呂湧いてるよ」
「ううん、もう寝る~」
丁度布団も敷かれていたこともあり、リナはそのままダイブして寝転がった。そのまま寝ようとしたご主人様に、クロは声を掛けた。
「それで、通り魔どうなったの?」
「殺して通報した~だからご飯は野菜うどんでよろしく~」
完全に意識が落ちたのか、寝息を立て始めるリナを見つめるクロは、小さく呟いた。
「明日の新聞次第だな。少なくとも夕刊までは確認するとして……」
その日、クロは眠ることなく、新聞やテレビに注意を向けていた。まるで、その時が来たのかを確かめるように……
「ちょっといい?」
「ん~、どうしたの、クロ?」
丸一日たった夜。流石に今日は休もう、とアップルフォンを枕元に投げ捨てながら、リナは寝転がったままクロの方を向いた。
「前に話したよね。その時が来るまで、一緒にいるって」
「話したね~それがどうかし、た、の……」
疲れていたからか、リナの反応は遅れた。クロの声色が変わっていることに。
「その時が来た……だから聞いて欲しい。俺の話を、俺が何から逃げているかを」
リナ達が通り魔を殺して丸一日が経過したが、その死体がニュースに流れることは、終ぞなかった。
0
お気に入りに追加
4
あなたにおすすめの小説
小さなことから〜露出〜えみ〜
サイコロ
恋愛
私の露出…
毎日更新していこうと思います
よろしくおねがいします
感想等お待ちしております
取り入れて欲しい内容なども
書いてくださいね
よりみなさんにお近く
考えやすく
💚催眠ハーレムとの日常 - マインドコントロールされた女性たちとの日常生活
XD
恋愛
誰からも拒絶される内気で不細工な少年エドクは、人の心を操り、催眠術と精神支配下に置く不思議な能力を手に入れる。彼はこの力を使って、夢の中でずっと欲しかったもの、彼がずっと愛してきた美しい女性たちのHAREMを作り上げる。
百合ランジェリーカフェにようこそ!
楠富 つかさ
青春
主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?
ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!!
※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。
表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。
女豹の恩讐『死闘!兄と妹。禁断のシュートマッチ』
コバひろ
大衆娯楽
前作 “雌蛇の罠『異性異種格闘技戦』男と女、宿命のシュートマッチ”
(全20話)の続編。
https://www.alphapolis.co.jp/novel/329235482/129667563/episode/6150211
男子キックボクサーを倒したNOZOMIのその後は?
そんな女子格闘家NOZOMIに敗れ命まで落とした父の仇を討つべく、兄と娘の青春、家族愛。
格闘技を通して、ジェンダーフリー、ジェンダーレスとは?を描きたいと思います。
フリー声劇台本〜1万文字以内短編〜
摩訶子
大衆娯楽
ボイコネのみで公開していた声劇台本をこちらにも随時上げていきます。
ご利用の際には必ず「シナリオのご利用について」をお読み頂ますようよろしくお願いいたしますm(*_ _)m
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる