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第一シリーズ

004 武器

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「あ~やっちゃったな」
 羽振りのいい仕事だと勇んで来てみれば、本当は警察の罠だった。
 おまけにただの警官ではない。権力を笠に着た悪徳警官だ。どうやら援助交際している未成年を逮捕して、口止め代わりに色々な意味で使い潰そうとしているようだ。
「ただ働きは嫌なんだけどなぁ~」
 現在リナは警官の持つマンションの一室にいた。ベッドの上に腰掛け、外側から鍵を掛けられた扉を見つめる。
 ホテルはまずい、自宅が近くにあるからと誘われてきたのだが、最近はトラブルも何もなかったため、油断したリナはあっさり罠にかかったのだ。
「最近気が緩んでるな~」
 自嘲しつつ、いつからだろう、とリナは顎に指を当てて考えた。普段なら性病かどうかを調べると同時に危険度合も確認していたのだが、今回病気持ちかどうかだけでさっさとついてきてしまったのだ。気が緩んでいるとしか言えない。
 原因は何かとリナは考えた。思いつくのはやはり、この前拾ったホームレスの青年、クロだった。
「やっぱりクロが来てからか~」
 確かに、気が緩むことが多くなった。
 傷害だろうと性的暴行だろうと襲ってこない、敵にならない人間が近くにいるだけで、この体たらくである。いつ牙を剥くかわからない客相手に商売しているだけに、彼の存在ほど大きなものがなかった。
 等と思い返していると、扉の外から足音が聞こえてきた。近くにあった自分のスクバを盾代わりに抱え込む。
「はい、お巡りさんですよ~」
 そう言って部屋に入ってきたのは、このマンションに連れてきた男だった。しかも一人じゃないのか、他にも二人の男が入ってくる。
「おお、結構可愛いじゃないか」
「胸もそこそこあるな。Cか?」
(あたり~)
 胸のサイズを当てられて、内心正解コールを鳴らすリナ。いつもの制服のままでスクバを抱えてはいるが、男三人相手だと意味はないだろう。
「では悪い娘へのお仕置き大会開催~」
「または輪姦パーティーともいいま~す」
「抵抗はやめて、大人しく投降しなさ~い」
 いやあ、楽しげだねぇとリナは内心笑った。
 ここまで追い詰められると笑うしかないんだなぁ、と考えながら、スクバの中に手を伸ばす。
「でもお巡りさんがこんなことしちゃっていいの~」
「悪い娘へのお仕置きなんだからOKさ~」
 そう答えられたらしょうがない。リナも覚悟を決めた。
「あ~あ。今日は帰ったらカレーが待ってたのにな~」
「大丈夫だよ。この中にスカトロ趣味の奴はいないからね」
「そうそう。大人しく帰ったら、ゆっくりカレーを食べればいいんだよ」
 あと一歩、その段階で状況は大きく変わった。
「いやいや食べられないでしょ。……これからぐろくなる光景見たら、さ」
 突然だった。



 パンパンパンッ!!



 おもちゃのような音が三発、部屋の中に響いた。しかし聞き慣れた人間ならば即座にこう答えるだろう……銃声と。
「な、なっ……」
「おっ、おじさん運がいいね~」
 リナはスクバから抜いた小型の自動拳銃を構えて、最初に誘ってきた警官に油断なく構えた。他の二人は当たり所が悪く、ほとんど虫の息だった。
「あっ、違ったお巡りさんか~」
「なんでそんなもの持ってやがるっ!?」
「おっ、地が出てきたね~」
 きゃはきゃは笑ってはいるが、男はむしろ恐怖を抱いていた。なにせ、笑っているはずのその少女の目は……空虚で、何の感情も抱いていなかったのだ。
「悪いけど帰るね。なにせ可愛い可愛いペットが、家でワタシの帰りを待ってるんだ」
「まっ、待て……」
 撃たれた肩口の銃創から手をはなし、リナを遠ざけようとするも、徒労に終わる。



 パンッ!!



「あ~あ、カレー食べられないな。これじゃあ」
 流石に弾が勿体無いと、鈍器になりそうなものを探しては虫の息の人間を潰し、全員を息絶えらせる。そこでようやくスクバを拾い、穴の開いた個所をチェックする。
「あ~あ、もったいない……クロ、直してくれるかな~」
 とりあえず男達の財布から現金を回収し、拳銃が転がってないかと連れ込まれた部屋以外を探してみる。見つかったのはおそらく彼等の被害に遭ったのだろう、まだ新しい少女の死体だった。
「完全にぶっ壊れて息絶えたってところか~」
 可哀想だが放置しよう、と部屋を去り、他に何もなさそうだとリナはマンションを辞した。
「ほんと晩御飯どうしようかな~カレーは嫌だし、肉系もダメか、な。となると野菜かな~」
 スクバの穴の開いた面を身体に向けて隠し、念のためにと制服の懐に隠した拳銃に意識を向けたまま、リナは家路についた。
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