【完結】月華麗君とりかへばや物語~偽りの宦官が記す後宮事件帳~

葵一樹

文字の大きさ
上 下
51 / 97
妃嬪の徴証

月事と茶会④

しおりを挟む

 片腕を失った男を歩かせてシュベールへと近づいていくと、なんと関所を通らずに街の中へと入る抜け道を通らされた。

 その抜け道は街の中にある高級な宿屋が立ち並ぶ場所へとつながっていた。

 そしてとある高級な宿屋の中に入ると、男が最上階の1番奥の部屋の扉をノックした。

「誰だ?」

「あ、暗殺ギルドのカムだ。仕事が終わったから開けてくれ。」

「ククッ待っていたぞ!!今開ける。」

 中からセドルの声が聞こえると、扉が勢いよく開いた。

「よう、随分汚いことを画策していたみたいだな。」

「なっ!!ぶぐっ!!」

 驚き固まったセドルの顔面に全力で拳を叩き込む。すると、セドルがやられている様子を見て、襲撃者の男が吠える。

「せ、セドル!!て、てめぇが悪いんだぜ?俺達にこんなヤバい仕事押し付けやがって!!」

「うるさい黙れ、お前も同罪だ。ブリザードブレス。」

 ブリザードブレスで男を氷漬けにする。そしてセドルのほうに改めて向き直ると、奴の顔がどんどん青ざめていく。

「覚悟はいいな?」

「く、クソッ!!」

 ベッドの傍らにあった剣を手に取ると、奴はこちらに向かって切りかかってくる。振り下ろされる剣を片手で鷲掴みにする。それをブリザードブレスで手にしている腕ごと凍らせた。

「う、腕が……。」

 直後、剣の重みに耐えきれなくなった氷漬けの腕がセドルの体から落下する。

「お前は絶対に許さない。」

 セドルの手足をすべてブリザードブレスで凍らせると、奴の頭を鷲掴みにした。

「場所を変える。ここじゃ宿の人に迷惑がかかる。」

 セドルをマジックバッグに押し込むと、先程凍らせた男の体も回収する。そして湖へと向かった。

「ここでいいな。」

 人の気配のない場所でセドルと、男の氷像をバッグから取り出す。すると、セドルが早速わめき始めた。

「こ、こんなところに連れてきてどうするつもりだ!!」

「決まってる。。」

「こ、殺すのか!?お、俺を殺したら問題になるぞ!!」

「問題?お前がこのまま生きている方がよっぽど問題だ。」

 冷酷にそう告げると、俺は氷漬けになった男の氷像を湖の中に放り込んだ……。
 すると徐々に氷が解けていく、そして消し飛ばされた腕部分が氷から露出すると急にソードフィッシュたちが群がり始めた。

 そしてあっという間に男の体は骨だけになってしまった。その光景を目の前で目の当たりにして、セドルは震え上がった。

「ま、まさか俺もあんな風に……。ま、まて、待ってくれ!!も、もうお前には関わらない!!だからッ…。」

 必死の命乞い……お前がもっと真っ当な人間だったら見逃したのにな。

「悪いがお前は信用に値しない。」

 ブリザードブレスでセドルのことを完全に凍らせ、湖に突き落とした。少しすると再びソードフィッシュが群がってきた。

 セドルの最期を見届け、俺はハウスキットのほうへと戻った。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

皇帝は虐げられた身代わり妃の瞳に溺れる

えくれあ
恋愛
丞相の娘として生まれながら、蔡 重華は生まれ持った髪の色によりそれを認められず使用人のような扱いを受けて育った。 一方、母違いの妹である蔡 鈴麗は父親の愛情を一身に受け、何不自由なく育った。そんな鈴麗は、破格の待遇での皇帝への輿入れが決まる。 しかし、わがまま放題で育った鈴麗は輿入れ当日、後先を考えることなく逃げ出してしまった。困った父は、こんな時だけ重華を娘扱いし、鈴麗が見つかるまで身代わりを務めるように命じる。 皇帝である李 晧月は、後宮の妃嬪たちに全く興味を示さないことで有名だ。きっと重華にも興味は示さず、身代わりだと気づかれることなくやり過ごせると思っていたのだが……

どうやら夫に疎まれているようなので、私はいなくなることにします

文野多咲
恋愛
秘めやかな空気が、寝台を囲う帳の内側に立ち込めていた。 夫であるゲルハルトがエレーヌを見下ろしている。 エレーヌの髪は乱れ、目はうるみ、体の奥は甘い熱で満ちている。エレーヌもまた、想いを込めて夫を見つめた。 「ゲルハルトさま、愛しています」 ゲルハルトはエレーヌをさも大切そうに撫でる。その手つきとは裏腹に、ぞっとするようなことを囁いてきた。 「エレーヌ、俺はあなたが憎い」 エレーヌは凍り付いた。

若奥様は緑の手 ~ お世話した花壇が聖域化してました。嫁入り先でめいっぱい役立てます!

古森真朝
恋愛
意地悪な遠縁のおばの邸で暮らすユーフェミアは、ある日いきなり『明後日に輿入れが決まったから荷物をまとめろ』と言い渡される。いろいろ思うところはありつつ、これは邸から出て自立するチャンス!と大急ぎで支度して出立することに。嫁入り道具兼手土産として、唯一の財産でもある裏庭の花壇(四畳サイズ)を『持参』したのだが――実はこのプチ庭園、長年手塩にかけた彼女の魔力によって、神域霊域レベルのレア植物生息地となっていた。 そうとは知らないまま、輿入れ初日にボロボロになって帰ってきた結婚相手・クライヴを救ったのを皮切りに、彼の実家エヴァンス邸、勤め先である王城、さらにお世話になっている賢者様が司る大神殿と、次々に起こる事件を『あ、それならありますよ!』とプチ庭園でしれっと解決していくユーフェミア。果たして嫁ぎ先で平穏を手に入れられるのか。そして根っから世話好きで、何くれとなく構ってくれるクライヴVS自立したい甘えベタの若奥様の勝負の行方は? *カクヨム様で先行掲載しております

廃妃の再婚

束原ミヤコ
恋愛
伯爵家の令嬢としてうまれたフィアナは、母を亡くしてからというもの 父にも第二夫人にも、そして腹違いの妹にも邪険に扱われていた。 ある日フィアナは、川で倒れている青年を助ける。 それから四年後、フィアナの元に国王から結婚の申し込みがくる。 身分差を気にしながらも断ることができず、フィアナは王妃となった。 あの時助けた青年は、国王になっていたのである。 「君を永遠に愛する」と約束をした国王カトル・エスタニアは 結婚してすぐに辺境にて部族の反乱が起こり、平定戦に向かう。 帰還したカトルは、族長の娘であり『精霊の愛し子』と呼ばれている美しい女性イルサナを連れていた。 カトルはイルサナを寵愛しはじめる。 王城にて居場所を失ったフィアナは、聖騎士ユリシアスに下賜されることになる。 ユリシアスは先の戦いで怪我を負い、顔の半分を包帯で覆っている寡黙な男だった。 引け目を感じながらフィアナはユリシアスと過ごすことになる。 ユリシアスと過ごすうち、フィアナは彼と惹かれ合っていく。 だがユリシアスは何かを隠しているようだ。 それはカトルの抱える、真実だった──。

君は妾の子だから、次男がちょうどいい

月山 歩
恋愛
侯爵家のマリアは婚約中だが、彼は王都に住み、彼女は片田舎で遠いため会ったことはなかった。でもある時、マリアは妾の子であると知られる。そんな娘は大事な子息とは結婚させられないと、病気療養中の次男との婚約に一方的に変えさせられる。そして次の日には、迎えの馬車がやって来た。

僕は君を思うと吐き気がする

月山 歩
恋愛
貧乏侯爵家だった私は、お金持ちの夫が亡くなると、次はその弟をあてがわれた。私は、母の生活の支援もしてもらいたいから、拒否できない。今度こそ、新しい夫に愛されてみたいけど、彼は、私を思うと吐き気がするそうです。再び白い結婚が始まった。

【完結】妖精姫と忘れられた恋~好きな人が結婚するみたいなので解放してあげようと思います~

塩羽間つづり
恋愛
お気に入り登録やエールいつもありがとうございます! 2.23完結しました! ファルメリア王国の姫、メルティア・P・ファルメリアは、幼いころから恋をしていた。 相手は幼馴染ジーク・フォン・ランスト。 ローズの称号を賜る名門一族の次男だった。 幼いころの約束を信じ、いつかジークと結ばれると思っていたメルティアだが、ジークが結婚すると知り、メルティアの生活は一変する。 好きになってもらえるように慣れないお化粧をしたり、着飾ったりしてみたけれど反応はいまいち。 そしてだんだんと、メルティアは恋の邪魔をしているのは自分なのではないかと思いあたる。 それに気づいてから、メルティアはジークの幸せのためにジーク離れをはじめるのだが、思っていたようにはいかなくて……? 妖精が見えるお姫様と近衛騎士のすれ違う恋のお話 切なめ恋愛ファンタジー

【完結】元妃は多くを望まない

つくも茄子
恋愛
シャーロット・カールストン侯爵令嬢は、元上級妃。 このたび、めでたく(?)国王陛下の信頼厚い側近に下賜された。 花嫁は下賜された翌日に一人の侍女を伴って郵便局に赴いたのだ。理由はお世話になった人達にある書類を郵送するために。 その足で実家に出戻ったシャーロット。 実はこの下賜、王命でのものだった。 それもシャーロットを公の場で断罪したうえでの下賜。 断罪理由は「寵妃の悪質な嫌がらせ」だった。 シャーロットには全く覚えのないモノ。当然、これは冤罪。 私は、あなたたちに「誠意」を求めます。 誠意ある対応。 彼女が求めるのは微々たるもの。 果たしてその結果は如何に!?

処理中です...