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妃嬪の徴証
月事と茶会④
しおりを挟む片腕を失った男を歩かせてシュベールへと近づいていくと、なんと関所を通らずに街の中へと入る抜け道を通らされた。
その抜け道は街の中にある高級な宿屋が立ち並ぶ場所へとつながっていた。
そしてとある高級な宿屋の中に入ると、男が最上階の1番奥の部屋の扉をノックした。
「誰だ?」
「あ、暗殺ギルドのカムだ。仕事が終わったから開けてくれ。」
「ククッ待っていたぞ!!今開ける。」
中からセドルの声が聞こえると、扉が勢いよく開いた。
「よう、随分汚いことを画策していたみたいだな。」
「なっ!!ぶぐっ!!」
驚き固まったセドルの顔面に全力で拳を叩き込む。すると、セドルがやられている様子を見て、襲撃者の男が吠える。
「せ、セドル!!て、てめぇが悪いんだぜ?俺達にこんなヤバい仕事押し付けやがって!!」
「うるさい黙れ、お前も同罪だ。ブリザードブレス。」
ブリザードブレスで男を氷漬けにする。そしてセドルのほうに改めて向き直ると、奴の顔がどんどん青ざめていく。
「覚悟はいいな?」
「く、クソッ!!」
ベッドの傍らにあった剣を手に取ると、奴はこちらに向かって切りかかってくる。振り下ろされる剣を片手で鷲掴みにする。それをブリザードブレスで手にしている腕ごと凍らせた。
「う、腕が……。」
直後、剣の重みに耐えきれなくなった氷漬けの腕がセドルの体から落下する。
「お前は絶対に許さない。」
セドルの手足をすべてブリザードブレスで凍らせると、奴の頭を鷲掴みにした。
「場所を変える。ここじゃ宿の人に迷惑がかかる。」
セドルをマジックバッグに押し込むと、先程凍らせた男の体も回収する。そして湖へと向かった。
「ここでいいな。」
人の気配のない場所でセドルと、男の氷像をバッグから取り出す。すると、セドルが早速わめき始めた。
「こ、こんなところに連れてきてどうするつもりだ!!」
「決まってる。お前を処理する。」
「こ、殺すのか!?お、俺を殺したら問題になるぞ!!」
「問題?お前がこのまま生きている方がよっぽど問題だ。」
冷酷にそう告げると、俺は氷漬けになった男の氷像を湖の中に放り込んだ……。
すると徐々に氷が解けていく、そして消し飛ばされた腕部分が氷から露出すると急にソードフィッシュたちが群がり始めた。
そしてあっという間に男の体は骨だけになってしまった。その光景を目の前で目の当たりにして、セドルは震え上がった。
「ま、まさか俺もあんな風に……。ま、まて、待ってくれ!!も、もうお前には関わらない!!だからッ…。」
必死の命乞い……お前がもっと真っ当な人間だったら見逃したのにな。
「悪いがお前は信用に値しない。」
ブリザードブレスでセドルのことを完全に凍らせ、湖に突き落とした。少しすると再びソードフィッシュが群がってきた。
セドルの最期を見届け、俺はハウスキットのほうへと戻った。
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