19 / 20
第1章「異世界と狂戦士」
「狂気の狭間で」
しおりを挟む
振り上げられた右腕は禍々しい魔力を纏い、今にも三人娘目掛けて振り下ろされてもおかしくない。
「ば、バンドウさん?!」
「イッセイ君!!さっきからどうしちゃったのよ!」
「…??」
しかし壱成は右腕を振り上げたままの姿勢で固まっていた。
「…なんだか苦しそうです?」
見ると壱成の表情がそれまでの狂気に満ちた笑みから苦悶のそれへと変わっていたのだ。
「グゥゥ…くっ、身体が…」
「バンドウさん?!」
壱成は未だに真っ赤に染まった瞳のままではあるが、僅かに言葉を発したのだった。
「身体が…勝手に動いて……い、意識があるうちに…逃げ…」
三人娘は壱成の言葉を完全に聴き取ることはできなかったが、彼が逃げろと言っていることは理解できた。
「で、でもバンドウさんを置いてなんて…」
「サラ!…たぶんイッセイ君にはなにか秘密があるのよ」
「…おばさんの言う通りです。あの常人ならざる魔力を見ても、恐らくあの力にはなんらかの秘密が…」
「グァァアア!!!!!!」
「「「!!」」」
それまでギリギリのところで自らの破壊衝動を押さえ込んでいた壱成であったが、再び身体の支配権を狂戦士に奪われたようで振り上げていた右腕を三人娘目掛けて振り下ろしたのだった。
ガンッ!!!!!!!!
三人娘から数十センチのところの地面が大きく抉られた。
「きゃあ!!」
「もし当たってたら…」
廃墟の床が粉々に破壊された様子を見てサラが力無く声を漏らす。
「くっ…は、早く逃げ…のろ…発動…ガァァア!!」
壱成は非常に苦しそうに頭を抑えてフラフラとしている。
「イッセイ君!!しっかりしてっ!!イッセイ君!!」
マイが問いかけるも…
「グゥゥウウウウアアアァァァァア!!!」
壱成は獣のような雄叫びをあげるだけであった。
そして急に静かになると狂気に満ちた目で三人娘を見つめる壱成。完全に身体を掌握したようで自らの身体をまじまじと見つめている。まるで体の感触を確かめるように。
「今の彼には言葉が通じないのでしょうか?やはり危険です。ここは逃げるべき…っ!!」
ローラが2人に警告を発している最中、いつのまにか三人娘の目の前から消えた壱成。
「一体どこに?!」
「グゥゥウアア!!」
「後ろです!!」
背後に迫った壱成は奇声を発しながら幻想的な色の魔力の鎧を纏い、常人よりも遥かに強化された右腕を再び振り上げた。
そしてその狂気を感じさせる真っ赤な瞳は確実にサラを捉えていた。
「サラッッ!!!!!」
「危ないです!!」
「っ!」
ガキンッッ!!!!!!!!!
けたたましい音が鳴り、衝撃のあまり周囲に粉塵が舞い上がる。
「サラッ!!!大丈夫なの?!?!サラ!!」
「…一体何が起きて…っ!!」
そして煙が晴れると…
「あれは…何?」
何か非常に大きなものが壱成の攻撃を受け止めていた。
その背後には力無く座り込んでしまっているサラの姿があった。
「…ゴーレム?」
壱成の攻撃を受け止めていたのは両腕が異様に膨らんだ人型の巨大な生物でその全身は銀色に輝いていた。
「狂戦士化した状態で意識が戻るなんて…ふふっ。バンドウ様…やはり貴方はとても面白いですね」
壱成たちから少し離れた場所で唇をペロッと舐める妖艶な仕草をしながら彼らを見つめていた絶世の美女は、非常に嬉しそうに見えるもののどこかに冷酷さを感じさせるサディスティックな笑みを浮かべながらそのように呟いたのだった。
「ば、バンドウさん?!」
「イッセイ君!!さっきからどうしちゃったのよ!」
「…??」
しかし壱成は右腕を振り上げたままの姿勢で固まっていた。
「…なんだか苦しそうです?」
見ると壱成の表情がそれまでの狂気に満ちた笑みから苦悶のそれへと変わっていたのだ。
「グゥゥ…くっ、身体が…」
「バンドウさん?!」
壱成は未だに真っ赤に染まった瞳のままではあるが、僅かに言葉を発したのだった。
「身体が…勝手に動いて……い、意識があるうちに…逃げ…」
三人娘は壱成の言葉を完全に聴き取ることはできなかったが、彼が逃げろと言っていることは理解できた。
「で、でもバンドウさんを置いてなんて…」
「サラ!…たぶんイッセイ君にはなにか秘密があるのよ」
「…おばさんの言う通りです。あの常人ならざる魔力を見ても、恐らくあの力にはなんらかの秘密が…」
「グァァアア!!!!!!」
「「「!!」」」
それまでギリギリのところで自らの破壊衝動を押さえ込んでいた壱成であったが、再び身体の支配権を狂戦士に奪われたようで振り上げていた右腕を三人娘目掛けて振り下ろしたのだった。
ガンッ!!!!!!!!
三人娘から数十センチのところの地面が大きく抉られた。
「きゃあ!!」
「もし当たってたら…」
廃墟の床が粉々に破壊された様子を見てサラが力無く声を漏らす。
「くっ…は、早く逃げ…のろ…発動…ガァァア!!」
壱成は非常に苦しそうに頭を抑えてフラフラとしている。
「イッセイ君!!しっかりしてっ!!イッセイ君!!」
マイが問いかけるも…
「グゥゥウウウウアアアァァァァア!!!」
壱成は獣のような雄叫びをあげるだけであった。
そして急に静かになると狂気に満ちた目で三人娘を見つめる壱成。完全に身体を掌握したようで自らの身体をまじまじと見つめている。まるで体の感触を確かめるように。
「今の彼には言葉が通じないのでしょうか?やはり危険です。ここは逃げるべき…っ!!」
ローラが2人に警告を発している最中、いつのまにか三人娘の目の前から消えた壱成。
「一体どこに?!」
「グゥゥウアア!!」
「後ろです!!」
背後に迫った壱成は奇声を発しながら幻想的な色の魔力の鎧を纏い、常人よりも遥かに強化された右腕を再び振り上げた。
そしてその狂気を感じさせる真っ赤な瞳は確実にサラを捉えていた。
「サラッッ!!!!!」
「危ないです!!」
「っ!」
ガキンッッ!!!!!!!!!
けたたましい音が鳴り、衝撃のあまり周囲に粉塵が舞い上がる。
「サラッ!!!大丈夫なの?!?!サラ!!」
「…一体何が起きて…っ!!」
そして煙が晴れると…
「あれは…何?」
何か非常に大きなものが壱成の攻撃を受け止めていた。
その背後には力無く座り込んでしまっているサラの姿があった。
「…ゴーレム?」
壱成の攻撃を受け止めていたのは両腕が異様に膨らんだ人型の巨大な生物でその全身は銀色に輝いていた。
「狂戦士化した状態で意識が戻るなんて…ふふっ。バンドウ様…やはり貴方はとても面白いですね」
壱成たちから少し離れた場所で唇をペロッと舐める妖艶な仕草をしながら彼らを見つめていた絶世の美女は、非常に嬉しそうに見えるもののどこかに冷酷さを感じさせるサディスティックな笑みを浮かべながらそのように呟いたのだった。
0
お気に入りに追加
14
あなたにおすすめの小説

もう死んでしまった私へ
ツカノ
恋愛
私には前世の記憶がある。
幼い頃に母と死別すれば最愛の妻が短命になった原因だとして父から厭われ、婚約者には初対面から冷遇された挙げ句に彼の最愛の聖女を虐げたと断罪されて塵のように捨てられてしまった彼女の悲しい記憶。それなのに、今世の世界で聖女も元婚約者も存在が煙のように消えているのは、何故なのでしょうか?
今世で幸せに暮らしているのに、聖女のそっくりさんや謎の婚約者候補が現れて大変です!!
ゆるゆる設定です。

【完結】仰る通り、貴方の子ではありません
ユユ
恋愛
辛い悪阻と難産を経て産まれたのは
私に似た待望の男児だった。
なのに認められず、
不貞の濡れ衣を着せられ、
追い出されてしまった。
実家からも勘当され
息子と2人で生きていくことにした。
* 作り話です
* 暇つぶしにどうぞ
* 4万文字未満
* 完結保証付き
* 少し大人表現あり

【完結】あなたに知られたくなかった
ここ
ファンタジー
セレナの幸せな生活はあっという間に消え去った。新しい継母と異母妹によって。
5歳まで令嬢として生きてきたセレナは6歳の今は、小さな手足で必死に下女見習いをしている。もう自分が令嬢だということは忘れていた。
そんなセレナに起きた奇跡とは?
5年も苦しんだのだから、もうスッキリ幸せになってもいいですよね?
gacchi
恋愛
13歳の学園入学時から5年、第一王子と婚約しているミレーヌは王子妃教育に疲れていた。好きでもない王子のために苦労する意味ってあるんでしょうか。
そんなミレーヌに王子は新しい恋人を連れて
「婚約解消してくれる?優しいミレーヌなら許してくれるよね?」
もう私、こんな婚約者忘れてスッキリ幸せになってもいいですよね?
3/5 1章完結しました。おまけの後、2章になります。
4/4 完結しました。奨励賞受賞ありがとうございました。
1章が書籍になりました。

このやってられない世界で
みなせ
ファンタジー
筋肉馬鹿にビンタをくらって、前世を思い出した。
悪役令嬢・キーラになったらしいけど、
そのフラグは初っ端に折れてしまった。
主人公のヒロインをそっちのけの、
よく分からなくなった乙女ゲームの世界で、
王子様に捕まってしまったキーラは
楽しく生き残ることができるのか。

魅了が解けた貴男から私へ
砂礫レキ
ファンタジー
貴族学園に通う一人の男爵令嬢が第一王子ダレルに魅了の術をかけた。
彼女に操られたダレルは婚約者のコルネリアを憎み罵り続ける。
そして卒業パーティーでとうとう婚約破棄を宣言した。
しかし魅了の術はその場に運良く居た宮廷魔術師に見破られる。
男爵令嬢は処刑されダレルは正気に戻った。
元凶は裁かれコルネリアへの愛を取り戻したダレル。
しかしそんな彼に半年後、今度はコルネリアが婚約破棄を告げた。
三話完結です。
私は心を捨てました 〜「お前なんかどうでもいい」と言ったあなた、どうして今更なのですか?〜
月橋りら
恋愛
私に婚約の打診をしてきたのは、ルイス・フォン・ラグリー侯爵子息。
だが、彼には幼い頃から大切に想う少女がいたーー。
「お前なんかどうでもいい」 そうあなたが言ったから。
私は心を捨てたのに。
あなたはいきなり許しを乞うてきた。
そして優しくしてくるようになった。
ーー私が想いを捨てた後で。
どうして今更なのですかーー。
*この小説はカクヨム様、エブリスタ様でも連載しております。

三歳で婚約破棄された貧乏伯爵家の三男坊そのショックで現世の記憶が蘇る
マメシバ
ファンタジー
貧乏伯爵家の三男坊のアラン令息
三歳で婚約破棄され
そのショックで前世の記憶が蘇る
前世でも貧乏だったのなんの問題なし
なによりも魔法の世界
ワクワクが止まらない三歳児の
波瀾万丈
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる