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第1章「異世界と狂戦士」
「期待」
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三人娘の期待に満ちた眼差しを受けながら、巨大な粘液の塊に向かって行く壱成。
しかし有効な攻撃方法は何一つ持ち合わせていない。
ただの…愚策な突撃である。
女の子の憧れの瞳…あの瞳で見つめられてしまうと、俺には断る事なんて出来ないっ!
「斬撃(スラッシュ)!!」
壱成は技能を発動させてキングスライムの身体の一部を攻撃する。
攻撃を受けた箇所は大きく抉られ、その周囲に穴が開くも…
「チッ…自己再生」
スライム種の特徴の一つ、自己再生によってすぐさま元どおりの姿になった。
やはりここは核を目指して…
壱成はキングスライムの中心部目掛けて大きく跳ねる。
ここら辺に核があるはず…っ!!!
しかしそれはキングスライムが許さず、普段は柔らかく液状化している身体を部分的に魔力を集中させて鉄のように硬くさせると、壱成目掛けて棍棒のように振り回す。
不味いっ!!!
避けられないと判断した壱成は途端に亀のように丸まり防御姿勢を取った。
「イッセイ君っ!!」
「「バンドウさん!!」」
ブォンッ!!
「がはっ!!」
風を切るように迫ってきた巨大な鉄の壁に跳ね返される壱成。
「…くはぁっ!」
弾き飛ばされ樽のように転がる壱成。強烈な一撃で口からは血が溢れ出てくる。
「イッセイ君?!」
「大丈夫ですか?!?!」
「バンドウさん…」
「だ…大丈夫です。まだまだこれから…」
壱成はゆっくり立ち上がると、再びキングスライムへと突撃する。
「おりゃぁあああ!!」
魔力の枯渇を恐れて今度は剣で核を狙う。今度は反撃を警戒しつつ、直前まで地上を走る。
しかし…
「っ!!!うがっ!!」
地面には当然キングスライムの身体の一部があるため、壱成は足を掴まれて転倒する。
そしてそのままキングスライムは身体の中へと壱成を引き込もうとする。
「不味いです…このままでは…火球!!」
ローラが魔法を放つ。
「っ!!バンドウさんを助けるわよ!」
「そうね…イッセイ君待ってて!今私が助けるわよ!」
情け無い…。
"また"期待に応えられないのか俺は…。
キングスライムは壱成の身体を飲み込むように体内へと引きずり込む。
身体を動かそうにも手足が硬い何かに掴まれていて動かせない。スライムは確か魔力に反応して、それを取り込み"捕食"すると言う。…そうか、俺は餌に…。
やがて口が粘液で塞がれて呼吸が出来なくなる。
「不味いわ…マイっ!!急いで!盗賊の貴女なら!」
「わかったわ!ローラ!援護をっ」
「…はいっ!火球!」
マイが飲み込まれつつある壱成の元へと走る。
マイに迫る粘液の腕を的確に火球で狙撃するローラ。そしてキングスライムの注意を引く為に逆方向で戦闘するサラ。
そして捕獲しようと迫る粘液を華麗にかわすマイ。
この人たち…凄い連携だ。俺なんかよりずっと…。
呼吸のできない壱成の意識は次第に薄れていく。
壱成の目の前まで迫ったマイであったが遂にキングスライムに捕まってしまったようだ。
「きゃぁあ!!」
「うぅ…痛い…です」
「イッセイ君っ!!手を…っ!!」
視界が悪くなり薄れ行く意識の中、壱成の頭に浮かんだのは…
ふふっ…情け無いな。キングスライムに食べられて終わるなんて、確実にリリア嬢に笑われるな…。
「バンドウ様?この程度で終わりですか?」
頭の中に浮かんだのは蔑むような目で見つめてくるリリア嬢の姿。これは俺の想像だろう。頭の中にリリア嬢が口汚く罵ってくる姿が浮かぶ。
「なんだ…"期待していた"のに。所詮その程度の男だったんですね」
如何にもリリア嬢が言いそうなことだ。
…でもやめてくれ。俺は期待に応えることなんて出来ないんだ。俺に期待するだけ無駄なんだ。俺は何も出来ない。
才能も容姿も能力も、完璧な物を貰ってもこの様だ。人間は変わらないと良く聞くが…全くその通りだな。所詮俺は俺だ。惨めな負け組だ。それに童貞。非の打ち所しかない男なんだ。
「才能?見た目?…そんな"下らない"事で自分の価値を決めないで下さい。何故自分で自分の限界を決めるのですか?何故自分で自分の可能性を狭めるのですか?貴方の価値を決めるのは…貴方なのですよ?」
リリア嬢はこれまで見たこと無いような心からの笑顔で太陽のように笑った。
でも…俺は…
「諦めること…逃げることは簡単ですよ、どんなことでも免罪符にする事が出来ます。ですがバンドウ様?期待に応える為には…向き合う勇気が必要ですよ?諦めない勇気…逃げない勇気…そして期待と向き合う勇気が無ければ、期待に応えることは出来ませんよ?ふふっ」
最後にいつも通り、意地悪そうな笑みを浮かべて笑うリリア嬢。
遠い昔に頑張ることを諦めていた俺にとっては耳の痛い話だったな。
そうだな…気づけば諦めることへの言い訳を作るのに必死だった。頑張って頑張って頑張って頑張って頑張って頑張って頑張っても届かなかったから、いつからか頑張ることを諦めていたんだ。
ふっ…20歳以上歳下のリリア嬢に説教されるなんて。
壱成は薄れ行く意識の中で、必死に伸ばされたマイの腕を力強く掴んだのだった。
しかし有効な攻撃方法は何一つ持ち合わせていない。
ただの…愚策な突撃である。
女の子の憧れの瞳…あの瞳で見つめられてしまうと、俺には断る事なんて出来ないっ!
「斬撃(スラッシュ)!!」
壱成は技能を発動させてキングスライムの身体の一部を攻撃する。
攻撃を受けた箇所は大きく抉られ、その周囲に穴が開くも…
「チッ…自己再生」
スライム種の特徴の一つ、自己再生によってすぐさま元どおりの姿になった。
やはりここは核を目指して…
壱成はキングスライムの中心部目掛けて大きく跳ねる。
ここら辺に核があるはず…っ!!!
しかしそれはキングスライムが許さず、普段は柔らかく液状化している身体を部分的に魔力を集中させて鉄のように硬くさせると、壱成目掛けて棍棒のように振り回す。
不味いっ!!!
避けられないと判断した壱成は途端に亀のように丸まり防御姿勢を取った。
「イッセイ君っ!!」
「「バンドウさん!!」」
ブォンッ!!
「がはっ!!」
風を切るように迫ってきた巨大な鉄の壁に跳ね返される壱成。
「…くはぁっ!」
弾き飛ばされ樽のように転がる壱成。強烈な一撃で口からは血が溢れ出てくる。
「イッセイ君?!」
「大丈夫ですか?!?!」
「バンドウさん…」
「だ…大丈夫です。まだまだこれから…」
壱成はゆっくり立ち上がると、再びキングスライムへと突撃する。
「おりゃぁあああ!!」
魔力の枯渇を恐れて今度は剣で核を狙う。今度は反撃を警戒しつつ、直前まで地上を走る。
しかし…
「っ!!!うがっ!!」
地面には当然キングスライムの身体の一部があるため、壱成は足を掴まれて転倒する。
そしてそのままキングスライムは身体の中へと壱成を引き込もうとする。
「不味いです…このままでは…火球!!」
ローラが魔法を放つ。
「っ!!バンドウさんを助けるわよ!」
「そうね…イッセイ君待ってて!今私が助けるわよ!」
情け無い…。
"また"期待に応えられないのか俺は…。
キングスライムは壱成の身体を飲み込むように体内へと引きずり込む。
身体を動かそうにも手足が硬い何かに掴まれていて動かせない。スライムは確か魔力に反応して、それを取り込み"捕食"すると言う。…そうか、俺は餌に…。
やがて口が粘液で塞がれて呼吸が出来なくなる。
「不味いわ…マイっ!!急いで!盗賊の貴女なら!」
「わかったわ!ローラ!援護をっ」
「…はいっ!火球!」
マイが飲み込まれつつある壱成の元へと走る。
マイに迫る粘液の腕を的確に火球で狙撃するローラ。そしてキングスライムの注意を引く為に逆方向で戦闘するサラ。
そして捕獲しようと迫る粘液を華麗にかわすマイ。
この人たち…凄い連携だ。俺なんかよりずっと…。
呼吸のできない壱成の意識は次第に薄れていく。
壱成の目の前まで迫ったマイであったが遂にキングスライムに捕まってしまったようだ。
「きゃぁあ!!」
「うぅ…痛い…です」
「イッセイ君っ!!手を…っ!!」
視界が悪くなり薄れ行く意識の中、壱成の頭に浮かんだのは…
ふふっ…情け無いな。キングスライムに食べられて終わるなんて、確実にリリア嬢に笑われるな…。
「バンドウ様?この程度で終わりですか?」
頭の中に浮かんだのは蔑むような目で見つめてくるリリア嬢の姿。これは俺の想像だろう。頭の中にリリア嬢が口汚く罵ってくる姿が浮かぶ。
「なんだ…"期待していた"のに。所詮その程度の男だったんですね」
如何にもリリア嬢が言いそうなことだ。
…でもやめてくれ。俺は期待に応えることなんて出来ないんだ。俺に期待するだけ無駄なんだ。俺は何も出来ない。
才能も容姿も能力も、完璧な物を貰ってもこの様だ。人間は変わらないと良く聞くが…全くその通りだな。所詮俺は俺だ。惨めな負け組だ。それに童貞。非の打ち所しかない男なんだ。
「才能?見た目?…そんな"下らない"事で自分の価値を決めないで下さい。何故自分で自分の限界を決めるのですか?何故自分で自分の可能性を狭めるのですか?貴方の価値を決めるのは…貴方なのですよ?」
リリア嬢はこれまで見たこと無いような心からの笑顔で太陽のように笑った。
でも…俺は…
「諦めること…逃げることは簡単ですよ、どんなことでも免罪符にする事が出来ます。ですがバンドウ様?期待に応える為には…向き合う勇気が必要ですよ?諦めない勇気…逃げない勇気…そして期待と向き合う勇気が無ければ、期待に応えることは出来ませんよ?ふふっ」
最後にいつも通り、意地悪そうな笑みを浮かべて笑うリリア嬢。
遠い昔に頑張ることを諦めていた俺にとっては耳の痛い話だったな。
そうだな…気づけば諦めることへの言い訳を作るのに必死だった。頑張って頑張って頑張って頑張って頑張って頑張って頑張っても届かなかったから、いつからか頑張ることを諦めていたんだ。
ふっ…20歳以上歳下のリリア嬢に説教されるなんて。
壱成は薄れ行く意識の中で、必死に伸ばされたマイの腕を力強く掴んだのだった。
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