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番外編
言われた通りにしただけなのに(リクエスト)
しおりを挟む「ああもう、本当にうざい。くっつかないでって言ったでしょ?いちいち煩いし……口も聞きたくない」
「……わかった」
燈真にまた怒られた。でもどうして俺だけ?昨日だって女がずーっとくっついてても怒らなかったのに。
酷い。俺にも女にも好きだ、愛してるって言うくせに。俺には行動で示してくれない。偶に、物凄く優しい日があるけどさ、それって彼女との約束がない日だって俺知ってるもん。
「…琳冬?」
燈真がそんなに言うならその通りにする。これからはハグもしないし口も聞かない。
俺は燈真から離れ、何も言わずにお風呂に入る。俺にバチは当たらないだろ。
ガチャッ
「り、琳冬!さっきはごめんね、一緒に寝よ?ほら、ハグしてあげるから」
風呂からあがると、燈真が焦ったように話しかけてくる。いつもなら燈真に同意して抱きつく所だけど、今日は違う。
俺は燈真をスルーして自室に向かう。燈真も、その方が嬉しいでしょ?
「琳冬……?」
___________
_______
__
コンコン
「琳冬、おはよう。今日ね、琳冬が食べてみたいって言ってたフレンチトースト作ったんだよ。だからね、仲直りしよ?琳冬も寂しかったでしょ?」
朝起きて、少し欠伸をしたら聞こえてきた燈真の声。その優しく寂しそうな声は俺の機嫌を取ろうとしているんだとわかる。
燈真が俺の機嫌を取るときは、いつも俺の好きな物や気になっていたものを作ってくれる。朝ご飯は外で食べようと思ってたけど、燈真が折角作ってくれたんだし食べようかな。
「ッ琳冬、ごめんね。今日はずっと一緒に…琳冬?」
俺は伸ばしてきた燈真の手を払い、自分の席に着く。小声でいただきます、と言ってから用意してあるものを食べ始める。
フレンチトーストは甘いと聞いていたけど、燈真は俺が甘すぎるものが嫌いだと知っているからか、甘さ控えめだった。
「…琳冬、美味しい?」
「……」
俺は言葉を発さずに、頷いて返す。
「そっか、よかった。ねぇ、琳冬?いつまでも怒ってないでよ、お願い。昨日オレが言ったことを気にしてるなら本気じゃないし、謝るから…ね?」
顔を上げて燈真を見る。いつもキリッとしている眉毛は下がり、怒られた犬のような顔をしていた。
「……別に、怒ってる訳じゃない」
「なら、どうしていつもみたいに甘えてくれないの…?」
「……だって、燈真がくっつなって、口も聞きたくないって言ったから。その通りにしただけだもん」
俺は燈真から目線を外し、少し不貞腐れたように言う。まあ、もう口を聞いてはいるんだけど。
「そ、それは…!ごめん、ごめんね。琳冬、本当は嫌じゃないから、くっついて欲しい。オレにいっぱい話して欲しいの、お願い」
「…迷惑じゃないの?」
「迷惑じゃない、迷惑じゃないから……」
チラッと燈真を見ると、泣きそうだった。
「わ、わかった!わかったから泣かないで!」
俺は席を立ち、急いで燈真に抱きつく。すると、物凄い力で抱きしめられた。
「と、燈真……?」
「次、こんなことしたら許さないからね」
は、嵌められた……
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