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第一章 愛の重さ
6話 誕生日(前編)
しおりを挟むついにこの日が来た。
今日は俺の誕生日。今日だけは、きっと燈真を独占できる!……ハズだ。
「燈真っ!」
見かけた燈真に抱きつく。俺は抱き返されるのを期待したが、現実はそうそう期待通りには行かない。
「ちょっと、琳冬?離して」
「ぁ……ん」
今度はちゅ、と燈真の唇にキスをする。
「琳冬、やめろ」
「ッ…ぁ、、ごめん、なさい…」
「はぁ、いきなりどうしたの?こんな言うこと聞かない悪い子じゃなかったでしょ?」
燈真からの目線が痛い。燈真は、俺の誕生日を忘れてるのか…?いや、燈真に限ってそんなことはないハズだ。
「…燈真、今日の午後、デートする約束…」
「ああ、彼女と遊園地行くからなしね」
燈真2枚の遊園地のチケットをチラつかせながら言う。
もしかして、俺の誕生日すっかり忘れ去られた?燈真が彼女と行くって言ってる遊園地のチケットは俺が燈真と行きたくて自腹で買ったやつだし。
「…ね、燈真、、今日、俺の……」
「今日彼女の誕生日なんだよ」
運悪く、彼女と俺の誕生日が被ったらしい。でも、だからと言って恋人の誕生日忘れないだろ。
せめて、おめでとうくらいは言って欲しかった。
「だから、今日は家に帰んないからね」
「……やだ」
俺は歩いて行こうとする燈真の服の裾を掴む。今日は誕生日なんだから、少しわがまま言っても許されるだろ?
「燈真と一緒にいたい。お願い、、」
「琳冬、なんでオレの言うこと聞けないの?彼女の誕生日だって言っただろ、わがまま言わないで。早く離して」
「やだ!」
「やだじゃない!」
ぱしんッ!!と左頬を叩かれる。ジンジンした痛みと誕生日を忘れられた痛みが混ざりあって涙になる。
「なんで琳冬が泣くんだよ。はぁ…うざ」
「ッ…ごめ、ごめんなさい……」
どうしてこんなことに。きっと嫌われただろうな。大学でも家に帰っても1人なんて…
誕生日なのに。
誕生日は1人にさせないよって言ってくれたのに。やっぱり、本当は俺のこと好きじゃなかったのかな。
「燈真…」
「何?まだ何かあるの?」
「…別れよ」
「…は?」
「痛っ…」
ガシッと肩を掴まる。燈真の力が強すぎて、爪が肩に食い込む。
「なんでいきなり別れるとか言い出すの?何が嫌だったの?オレに叩かれたこと?それとも拒絶されたこと?琳冬より彼女を優先したから?……答えろよ」
「ぅ…ひぐっ、、さみしい、の…」
「寂しい?」
俺はこくこくと頷いて続ける。
「きょ、ぐらいは、いっしょにいたかったの…ぷれぜんとも、いらな、から、、せめて、おめでと、くらいは、、たんじょ、び、だから……」
「え、は…誕生日?」
「ぅん…あぇ、?とぉま……?」
不意にぎゅぅう、と抱きしめられて混乱する。
「ごめん、ごめんね、確かに今日だった。誕生日忘れててごめんね、頬っぺ大丈夫?オレのこと、嫌いになったかな…?」
「んーん、、すき、おれも、ごめんなさい、、」
「どうして琳冬が謝るの。はぁ、最近は謝らせてばっかりだね、、こんなんじゃ、琳冬の彼氏失格だよ」
「ちがう、おれが、ちゃんとやくそくまもれなかったから、、」
再度溢れてくる涙を止められず、燈真の胸に頭をうめる。優しく撫でてくれる燈真の温もりに、俺はまた涙を流した。
「誕生日おめでとう、琳冬。今日は一緒に居るよ、絶対1人になんかさせないから。ね、だから泣き止んで?」
「ん、でも、彼女とのデートは、?」
「そんなのいいよ。元々は琳冬と行く予定だったんだから。次の授業終わったら迎えに行くから、待っててね?」
「うんっ…!」
やっぱり、燈真とは別れられない。
___________
「琳冬、来たよ」
「あ、燈真!」
午前中の全ての授業が終わった頃。ドア付近で呼びかけてくる燈真に勢いに任せ抱きつく。
その場に居た何人かがざわざわしているが、気にしない。
「ん、よしよし。行こっか」
「えへへ」
燈真に優しく撫でられることが嬉しくてたまらない。
俺はいつも女が燈真にやっているように腕を組む。今日だけとは言え、高揚感がすごかった。とても、幸せだった。
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