ドSで浮気性の彼氏とドMな俺

第一章 愛の重さ

1話 先輩と俺

「先輩！どうして昨日約束すっぽかしたんですか！？」


平日の昼下がり。不意に見かけた先輩に声を掛ける。相変わらず香水臭い女と歩いている先輩は、これでも俺の彼氏である。

…女の腰を抱いて歩いてはいるが。



「男と映画観るより女の子と買い物した方が楽しいから。それ以上でもそれ以下でもないよ」


「ねぇ、早く行こ？次の授業ダルいから、アタシ映画観た～い」



香水女は先輩に貧相な胸を押し付けながら言う。

先輩の隣りを歩いている女はよく変わる。１週間の女もいれば、3ヶ月の女もいた。この前の女は2日だったな。



「あはは、いいよ。前に観たいって言ってたもんね？」


「やったぁ～！燈真大好き！」



俺は大学内で先輩の名前を呼ぶことを禁止されている。抱きつくのもキスをするのも禁止。許されているのは１日に１回、会った時に話すことだけ。

その間は必ず女とイチャついている所を見せつけられる。それでも先輩と別れられないのは、惚れた弱みというものだ。



「…先輩、今度の日曜日はいいですか？」


「あ、ねぇ！今度の日曜日スイパラ行こぉ？カップル割があるの！」


「じゃあスイパラ行こっか。君の食べてる姿、可愛いからたくさん見たいな」



俺は今日もまた、女に先輩を取られる。

俺だって、少しは先輩とデートしたい。少しは、大学でも先輩と過ごしたい。



次第に遠くなっていく先輩の背中を見て、俺はいつもそう思う。