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第一八話 バレンタイン
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北田がマンションの前で待っていると瀬名が出てきた。
「春雪さんっ!」
北田はその顔を見て安心する。
「いったい何があったんですか!?さっき新井莉々子がものすごい顔で走っていきましたけど」
「うん…何をどう説明すればいいのか」
瀬名は先ほどまでの出来事を北田に話した。
「つまり部屋の中ものが勝手に動いた、と」
「そうとしか言えない」
「それは間違いなく、ポルターガイスト現象ってやつですね」
仕事柄、心霊番組は何度も見ているので、当然二人とも知っている現象だ。
「でもなぜ急に、新井莉々子の部屋でポルターガイストが?」
北田はうーんと首をひねる。
「あっ、もしかしたら、雪姫の影響かも」
「あの俺に取り憑いたっていうお姫様の霊か?じゃあまだ雪姫は俺に憑いていて、あの現象を起こしたのか?」
「いや、彼女は確かに成仏したはず。神主さんもそう言ってましたし。これは俺の推測だけど、雪姫の能力の一部が春雪さんに移ったのでは?それで春雪さんのストレスが最高潮に達したときにそれが発動した」
「じゃあ、あの現象は俺が…!?というか、雪姫にポルターガイストを起こす能力なんてあったのか?」
北田は雪姫を成仏させた時のことを思い出そうとした。しかし行為のことで頭がいっぱいで、周りの景色なんてほとんど覚えていない。
「そういえば、俺が春雪さんを抱いてるとき、窓がガタガタ鳴っていたような…?」
確証はないが、おそらく雪姫のおかげ、ということで結論付けた。
「でも新井さんのところから逃げることができて本当に良かった。彼女もこれで少しは懲りたでしょう」
「だといいけどな」
北田は瀬名の横顔を見つめた。いつもクールな彼にしては珍しく、表情に疲れが滲んでいるような気がした。
「それで…今日はこれからどうします?俺の部屋に来ますか?でも、もうそんな気分じゃないか…」
帰りますか、と立ち上がる北田を瀬名は慌てて止める。
「行くよ、お前の部屋。俺だってずっと楽しみにしてたんだから…」
顔を赤らめてそう言う瀬名がいとおしくて、今すぐ抱きしめたいのを北田は必死にこらえた。
***
夜、北田の部屋では、夕食後のゆったりとした時間が流れていた。
「そういえば、春雪さんにプレゼントがあるんです。本当はクリスマスに渡そうと思ってたんだけど」
北田はクリスマスに渡しそびれたネクタイを瀬名に渡した。それを見て瀬名が驚いた顔をする。
「これ…実は俺も、お前に渡したいものがあって。あの、バレンタインだから…」
瀬名が恥ずかしそうに渡したのは、偶然にも同じブランドの、色違いのネクタイだった。
「やったー!二人でおそろいだ!」
北田は嬉しくて、まるで子供みたいにはしゃいだ声を出す。
クリスマスに開ける予定だったシャンパンも、やっと開けることができた。それを細いグラスに注ぎ、乾杯をして、薄い琥珀色の液体を傾ける。瀬名が半分くらい飲んだところで、北田はその手にそっと自分の手を重ねた。
「今日はあまり酒飲まないでくださいね?飲むと春雪さんすぐ寝ちゃうから」
早くも酒が回っている瀬名は、桃色に上気した頬でこくんとうなずいた。
「わかった」
北田は瀬名の手からシャンパンの入ったグラスを奪うと、それを一気に飲み干した。
「春雪さんっ!」
北田はその顔を見て安心する。
「いったい何があったんですか!?さっき新井莉々子がものすごい顔で走っていきましたけど」
「うん…何をどう説明すればいいのか」
瀬名は先ほどまでの出来事を北田に話した。
「つまり部屋の中ものが勝手に動いた、と」
「そうとしか言えない」
「それは間違いなく、ポルターガイスト現象ってやつですね」
仕事柄、心霊番組は何度も見ているので、当然二人とも知っている現象だ。
「でもなぜ急に、新井莉々子の部屋でポルターガイストが?」
北田はうーんと首をひねる。
「あっ、もしかしたら、雪姫の影響かも」
「あの俺に取り憑いたっていうお姫様の霊か?じゃあまだ雪姫は俺に憑いていて、あの現象を起こしたのか?」
「いや、彼女は確かに成仏したはず。神主さんもそう言ってましたし。これは俺の推測だけど、雪姫の能力の一部が春雪さんに移ったのでは?それで春雪さんのストレスが最高潮に達したときにそれが発動した」
「じゃあ、あの現象は俺が…!?というか、雪姫にポルターガイストを起こす能力なんてあったのか?」
北田は雪姫を成仏させた時のことを思い出そうとした。しかし行為のことで頭がいっぱいで、周りの景色なんてほとんど覚えていない。
「そういえば、俺が春雪さんを抱いてるとき、窓がガタガタ鳴っていたような…?」
確証はないが、おそらく雪姫のおかげ、ということで結論付けた。
「でも新井さんのところから逃げることができて本当に良かった。彼女もこれで少しは懲りたでしょう」
「だといいけどな」
北田は瀬名の横顔を見つめた。いつもクールな彼にしては珍しく、表情に疲れが滲んでいるような気がした。
「それで…今日はこれからどうします?俺の部屋に来ますか?でも、もうそんな気分じゃないか…」
帰りますか、と立ち上がる北田を瀬名は慌てて止める。
「行くよ、お前の部屋。俺だってずっと楽しみにしてたんだから…」
顔を赤らめてそう言う瀬名がいとおしくて、今すぐ抱きしめたいのを北田は必死にこらえた。
***
夜、北田の部屋では、夕食後のゆったりとした時間が流れていた。
「そういえば、春雪さんにプレゼントがあるんです。本当はクリスマスに渡そうと思ってたんだけど」
北田はクリスマスに渡しそびれたネクタイを瀬名に渡した。それを見て瀬名が驚いた顔をする。
「これ…実は俺も、お前に渡したいものがあって。あの、バレンタインだから…」
瀬名が恥ずかしそうに渡したのは、偶然にも同じブランドの、色違いのネクタイだった。
「やったー!二人でおそろいだ!」
北田は嬉しくて、まるで子供みたいにはしゃいだ声を出す。
クリスマスに開ける予定だったシャンパンも、やっと開けることができた。それを細いグラスに注ぎ、乾杯をして、薄い琥珀色の液体を傾ける。瀬名が半分くらい飲んだところで、北田はその手にそっと自分の手を重ねた。
「今日はあまり酒飲まないでくださいね?飲むと春雪さんすぐ寝ちゃうから」
早くも酒が回っている瀬名は、桃色に上気した頬でこくんとうなずいた。
「わかった」
北田は瀬名の手からシャンパンの入ったグラスを奪うと、それを一気に飲み干した。
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