子連れの界渡り

みき

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異なる世界

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男から受け取ったお椀の中には、身体に優しそうなたまご粥がお椀いっぱいに入っていた。仄かに生姜の香りがする。


ふ~、ふ~
と私はレンゲに息を吹きかけ、湯気がたつお粥を冷ました。
未だに私の膝上に跨っている娘がそれを見て

ふぅ~ふぅ~
と私の真似をし、冷ます手伝いをしてくれた。

由「ふふ。ありがとう。いただきます。」

お粥を一口食べた。
生姜の風味が口いっぱいに広がり、和風出汁を使っているのか奥深い味がした。

由「・・美味しい。」
心温まるお粥に自然と言葉が出てしまう。

優「ママ、おぃち?」
と娘が小首を傾げながら私に聞いてくる。

由「うん。美味しい。」
と私は娘に笑顔で答えた。


何だか横から視線を感じる。


どこから出してきたのかわからないが、丸椅子をベット横に置いて座っている男。真顔でこちらを見ているが、その顔が怖い・・・。横からの威圧感で食べづらい。


由「・・・ぁ、あの。このお粥、とっても美味しいです。」
と横に座る男に話かけてみた。

「それは良かった。作った奴にあとで伝えとく。」
と真顔だった男は頬を緩めて言った。


この人が作ったんじゃないのか。
まぁ、外観からして料理できなさそうだもんね。


と、失礼なことを思いつつ私はお粥を食べ続けた。





腹の虫が鳴るほどお腹が空いていたため、土鍋の中にあったお粥は完食した。私のお腹は十分に満たされて大満足だ。


「まだおかわりあるが持ってくるか?」
と男が聞いてくる。

由「大丈夫です。お腹いっぱいになりました。ご馳走さまでした。」

「そうか。体調が良ければ少し話したいのだが、どうだ?」

由「はい。大丈夫です。すっかり良くなりました。」

「それじゃぁ、これ片付けてくるついでにチビ助を下に預けてくるからちょっと待っててくれ。」
と男は食べ終わった土鍋をのせたトレイを左手だけで持ち、私の膝上にいた娘を右腕で抱き上げた。

「チビ助、下に行ってまたにぃちゃんたちと一緒に遊ぶか。」

優「にぃちゃ、あそぶ!!」
と娘は男に向けて満面の笑みで答えた。

愛娘の一番可愛い顔がこの顔。目尻が少しさがり、笑くぼができる。

その顔を至近距離で直視した男は破顔する。


私は今、見てはいけないものを見てしまった。
強面の人の破顔・・・見ちゃいけません。


・・・娘を預けて大丈夫かしら?
大人の男性にここまで懐いてるのは珍しいから、大丈夫だと思うけど・・・

と考えている間に、

優「ママ、バイバイ。」
と娘が手を振るので、私も振り返す。

「今、一階に部下2人きてるから其奴らにチビ助を預けてくる。そのままベッドで待っててくれ。」

由「はい。すみません。よろしくお願いします。優愛ちゃん、いい子にしててね。」


手を振り続ける娘と娘を抱っこしている男が部屋から出て行った。


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