子連れの界渡り

プロローグ

プロローグ

来月半ばには娘の2才の誕生日が待っている。
そんなある日、娘は寝室にてお昼寝中。
夫は仕事が休みで、居間のテーブルを挟んで私と向かい合っている。









「これにサインしてくれ。」


そう言って夫が差し出してきたのは1枚の紙だった。


由「・・・離婚・・届・・・。」

私は掠れた声で言い、僅かに震える手で夫が差し出してきた紙に触れた。

「由紀には家のことも子どものこともやってもらってありがたいとは思ってるんだ。でも、子どもにかかりっきりで夫婦の時間がなかっただろ？俺のことは二の次でほったらかしだし。」

由「そんなの子どもがいる家庭はほとんどそうでしょう！親が子供優先にするのは当たり前でしょ！そんな子どもじみた理由で離婚って。それに来月は優愛ゆあ（娘）の誕生日でしょ？」

「優愛には申し訳ないけど、誕生日は一緒に過ごせない。後で実家の方にプレゼントは送る。」

由「そんな・・・そんな今すぐじゃなくても。子どもがある程度大きくなってからとか・・・・」

私がそう言うと、夫が顔を下に向けてポツリと呟く。

「・・・いるんだ。」

由「は？」

夫が顔を上げ、真っ直ぐ私を見てくる。

「他に好きな女性ひとがいるんだ！」

それを聞いた私は唖然とする。

「本当に申し訳ないと思ってる！でも、彼女と一緒にいると楽しいし、癒されるんだ！行く行くは彼女と結婚したいと思ってる！だから、頼む！離婚届にサインしてくれ！」

と夫は私に向かって土下座をしてきた。
私は未だに唖然としたままだった。


その後すぐ娘がお昼寝から起き、その話は一旦中断された。そして、その日の夜も娘が寝た後で話し合い、次の日の夜も話し合い、またその次の日の夜も話し合い、もう夫と話すことはないというか、もうこんなやつと話なんかしたくないという感じで話し合いが終わり、私たちは離婚することに決まった。