【完結】私がいなくなれば、あなたにも わかるでしょう

nao

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あれから10年。

私は27歳になった。

10年たって、陛下からのお許しも出た為、そろそろ王都に戻って、妻を迎えないかと 父上に言われて、次の社交の時期に 王都に戻る事にした。

そのタイミングで、父上と母上は、私に 一つお見合いを 用意してくれた。

昔、バカをやらかした 浮気男に嫁ぎたいと言う女性がいたなんて、訳ありか?と 疑うも、家の為に跡継ぎは必要だ。

私もいつかは 結婚しなければならない。

父上と母上が 薦めるなら 間違いは無いだろうと、私は全てを 両親に委ねる事にした。

贅沢を言える立場では無い。

どんな女性でも 受け入れるつもりだ。

むしろ、こんな男でも 良いと言ってくれるのだ、感謝しなければならないだろう。

母上に紹介された女性は、現在、25歳。

いわゆる 行き遅れと言う女性だった。

何処にでもいるような、茶色い髪に、茶色い瞳。

際立って美しいわけでもなく、ブスでもない。

とても、平凡な女性だった。

彼女の名前は、エリーゼ スミノフ。

スミノフ伯爵家の長女で、10歳下の弟がいるそうだ。

彼女の母は 彼女が10歳の時、出産で命を落としたそうだ。

その時 産まれたのが弟のミルコ スミノフ。

彼女は、たった10歳で産まれたばかりの弟を、母親の代わりに育ててきたのだ。

そして、母を亡くして 5年後、今度は父親が、事故にあい、帰らぬ人となってしまう。

彼女は15歳でスミノフ伯爵家と、幼くして伯爵となった弟を 支えなくてはならなくなった。

我が国では、女性は爵位を継げない為、次の伯爵はまだ たった5歳の弟になるのだ。

彼女は弟の後見人として、ずっと弟を守ってきたのだ。

爵位を奪おうとする叔父や、財産に群がる伯母達を、15歳の若さで退け、スミノフ伯爵家を没落させる事無く、守ってきたのだ。

弟の教育。領地経営。社交。スミノフ伯爵家にたかるハイエナの相手まで、たった15歳の少女が、全て こなしてきたのだ。

その手腕は賞賛に価する。

そして、その弟も、15歳になり、アカデミーに入学し、寮に入って、自立を始めたので。今回の縁談を受けてくれたそうだ。

条件は、スミノフ伯爵家の後見と、弟の後ろ盾である。

我が家は、私のせいで勢力を小さくしてしまったが、腐っても侯爵家、もともと、我が家は領地の収益も多く、財産も十分で、私の事さえ無ければ、有力貴族なのである。

我が家の条件は、慎ましく、穏やかな女性で、後継を産んで欲しい。

条件は、それだけだ。

今迄 家族を大切にして来た 心優しい女性だ、きっと、良き妻、良き母になってくれるだろう。

母上の薦めもあって、私は 彼女 エリーゼと結婚する事に決めた。

2人共 結婚適齢期を過ぎていたので、話は トントン拍子に進み、お見合いから半年後、私達は結婚した。

そして、1年後。彼女は男の子を出産した。

私に良く似た 小さな小さな赤子に、私は涙を流して喜んだ。

私の様子を見て、エリーゼも喜んでくれた。

待望の 後継者の誕生に、父上も母上も とても喜んでくれた。

そして、その2年後、今度はエリーゼに良く似た男の子を 授かった。

エリーゼに良く似た小さな赤子を腕に抱いて、

「君に似て、とても可愛い。」

そう言うと、エリーゼは泣いて喜んだ。

「エリーゼ、可愛い子を産んでくれて ありがとう。」

そう言って、彼女を赤子ごと抱きしめると、エリーゼはわたしの腕の中で、更に泣いてしまった。

そして、更に3年後、今度は私に良く似た女の子が産まれた。

「女の子だからあなたに似ていて嬉しい。きっと美人になります。」

エリーゼはそう言って、ニッコリと笑った。

エリーゼの笑顔が眩しい。

私を 美しいと言ってくれる エリーゼが、とても可愛い。

私は、可愛い 3人の子供達に囲まれて、幸せな毎日を過ごしている。

エリーゼとの 平和で、穏やかな日常に 幸せを感じる毎日。

あの時、恥をかいてでも、決断して良かったと思う。

今でも 時々思い出す。

若気の至りと言ってしまえば それまでだが、思い出しては 今の幸せを噛み締めている。

昔、私は最低な男だった。

浮気して、婚約白紙。

『真実の愛』などと 調子に乗って、浮気相手、しかも彼女の実の妹と 婚約し直したのに、その 浮気相手に飽きられて、捨てられた。

サファイヤの本性を知らなかった世間は、私の事を「最低な浮気男」と罵った。

今、幸せなのは、何もかも知っていて、私の所に嫁いで来てくれたエリーゼのおかげだ。

激しい恋と言う訳では無い。

だが、穏やかで、深い愛を感じている。

一生 彼女を大切にしよう。

昔、裏切ってしまった エメラルダの為にも。

彼女も今は、隣国の王子に嫁いで、幸せに暮らしている。

彼女が今、幸せだからと言って 私の罪が消える訳では無いが、私は私で、エリーゼと子供達を大事にしてゆこう。

もう2度と私は間違えない。

もう2度と私は家族を裏切らない。

愛しているよ 私の可愛い子供達。

愛しているよ私の大切な君

私を幸せにしてくれて、本当にありがとう。









    
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