5 / 7
⑸やり直し
しおりを挟むあれから10年。
私は27歳になった。
10年たって、陛下からのお許しも出た為、そろそろ王都に戻って、妻を迎えないかと 父上に言われて、次の社交の時期に 王都に戻る事にした。
そのタイミングで、父上と母上は、私に 一つお見合いを 用意してくれた。
昔、バカをやらかした 浮気男に嫁ぎたいと言う女性がいたなんて、訳ありか?と 疑うも、家の為に跡継ぎは必要だ。
私もいつかは 結婚しなければならない。
父上と母上が 薦めるなら 間違いは無いだろうと、私は全てを 両親に委ねる事にした。
贅沢を言える立場では無い。
どんな女性でも 受け入れるつもりだ。
むしろ、こんな男でも 良いと言ってくれるのだ、感謝しなければならないだろう。
母上に紹介された女性は、現在、25歳。
いわゆる 行き遅れと言う女性だった。
何処にでもいるような、茶色い髪に、茶色い瞳。
際立って美しいわけでもなく、ブスでもない。
とても、平凡な女性だった。
彼女の名前は、エリーゼ スミノフ。
スミノフ伯爵家の長女で、10歳下の弟がいるそうだ。
彼女の母は 彼女が10歳の時、出産で命を落としたそうだ。
その時 産まれたのが弟のミルコ スミノフ。
彼女は、たった10歳で産まれたばかりの弟を、母親の代わりに育ててきたのだ。
そして、母を亡くして 5年後、今度は父親が、事故にあい、帰らぬ人となってしまう。
彼女は15歳でスミノフ伯爵家と、幼くして伯爵となった弟を 支えなくてはならなくなった。
我が国では、女性は爵位を継げない為、次の伯爵はまだ たった5歳の弟になるのだ。
彼女は弟の後見人として、ずっと弟を守ってきたのだ。
爵位を奪おうとする叔父や、財産に群がる伯母達を、15歳の若さで退け、スミノフ伯爵家を没落させる事無く、守ってきたのだ。
弟の教育。領地経営。社交。スミノフ伯爵家にたかるハイエナの相手まで、たった15歳の少女が、全て こなしてきたのだ。
その手腕は賞賛に価する。
そして、その弟も、15歳になり、アカデミーに入学し、寮に入って、自立を始めたので。今回の縁談を受けてくれたそうだ。
条件は、スミノフ伯爵家の後見と、弟の後ろ盾である。
我が家は、私のせいで勢力を小さくしてしまったが、腐っても侯爵家、もともと、我が家は領地の収益も多く、財産も十分で、私の事さえ無ければ、有力貴族なのである。
我が家の条件は、慎ましく、穏やかな女性で、後継を産んで欲しい。
条件は、それだけだ。
今迄 家族を大切にして来た 心優しい女性だ、きっと、良き妻、良き母になってくれるだろう。
母上の薦めもあって、私は 彼女 エリーゼと結婚する事に決めた。
2人共 結婚適齢期を過ぎていたので、話は トントン拍子に進み、お見合いから半年後、私達は結婚した。
そして、1年後。彼女は男の子を出産した。
私に良く似た 小さな小さな赤子に、私は涙を流して喜んだ。
私の様子を見て、エリーゼも喜んでくれた。
待望の 後継者の誕生に、父上も母上も とても喜んでくれた。
そして、その2年後、今度はエリーゼに良く似た男の子を 授かった。
エリーゼに良く似た小さな赤子を腕に抱いて、
「君に似て、とても可愛い。」
そう言うと、エリーゼは泣いて喜んだ。
「エリーゼ、可愛い子を産んでくれて ありがとう。」
そう言って、彼女を赤子ごと抱きしめると、エリーゼはわたしの腕の中で、更に泣いてしまった。
そして、更に3年後、今度は私に良く似た女の子が産まれた。
「女の子だからあなたに似ていて嬉しい。きっと美人になります。」
エリーゼはそう言って、ニッコリと笑った。
エリーゼの笑顔が眩しい。
私を 美しいと言ってくれる エリーゼが、とても可愛い。
私は、可愛い 3人の子供達に囲まれて、幸せな毎日を過ごしている。
エリーゼとの 平和で、穏やかな日常に 幸せを感じる毎日。
あの時、恥をかいてでも、決断して良かったと思う。
今でも 時々思い出す。
若気の至りと言ってしまえば それまでだが、思い出しては 今の幸せを噛み締めている。
昔、私は最低な男だった。
浮気して、婚約白紙。
『真実の愛』などと 調子に乗って、浮気相手、しかも彼女の実の妹と 婚約し直したのに、その 浮気相手に飽きられて、捨てられた。
サファイヤの本性を知らなかった世間は、私の事を「最低な浮気男」と罵った。
今、幸せなのは、何もかも知っていて、私の所に嫁いで来てくれたエリーゼのおかげだ。
激しい恋と言う訳では無い。
だが、穏やかで、深い愛を感じている。
一生 彼女を大切にしよう。
昔、裏切ってしまった エメラルダの為にも。
彼女も今は、隣国の王子に嫁いで、幸せに暮らしている。
彼女が今、幸せだからと言って 私の罪が消える訳では無いが、私は私で、エリーゼと子供達を大事にしてゆこう。
もう2度と私は間違えない。
もう2度と私は家族を裏切らない。
愛しているよ 私の可愛い子供達。
愛しているよ私の大切な君
私を幸せにしてくれて、本当にありがとう。
847
お気に入りに追加
861
あなたにおすすめの小説

【完結】王太子殿下が幼馴染を溺愛するので、あえて応援することにしました。
かとるり
恋愛
王太子のオースティンが愛するのは婚約者のティファニーではなく、幼馴染のリアンだった。
ティファニーは何度も傷つき、一つの結論に達する。
二人が結ばれるよう、あえて応援する、と。

ご安心を、2度とその手を求める事はありません
ポチ
恋愛
大好きな婚約者様。 ‘’愛してる‘’ その言葉私の宝物だった。例え貴方の気持ちが私から離れたとしても。お飾りの妻になるかもしれないとしても・・・
それでも、私は貴方を想っていたい。 独り過ごす刻もそれだけで幸せを感じられた。たった一つの希望

【完結】真実の愛だと称賛され、二人は別れられなくなりました
紫崎 藍華
恋愛
ヘレンは婚約者のティルソンから、面白みのない女だと言われて婚約解消を告げられた。
ティルソンは幼馴染のカトリーナが本命だったのだ。
ティルソンとカトリーナの愛は真実の愛だと貴族たちは賞賛した。
貴族たちにとって二人が真実の愛を貫くのか、それとも破滅へ向かうのか、面白ければどちらでも良かった。

【完結】裏切ったあなたを許さない
紫崎 藍華
恋愛
ジョナスはスザンナの婚約者だ。
そのジョナスがスザンナの妹のセレナとの婚約を望んでいると親から告げられた。
それは決定事項であるため婚約は解消され、それだけなく二人の邪魔になるからと領地から追放すると告げられた。
そこにセレナの意向が働いていることは間違いなく、スザンナはセレナに人生を翻弄されるのだった。

どうして許されると思ったの?
わらびもち
恋愛
二度も妻に逃げられた男との結婚が決まったシスティーナ。
いざ嫁いでみれば……態度が大きい侍女、愛人狙いの幼馴染、と面倒事ばかり。
でも不思議。あの人達はどうして身分が上の者に盾突いて許されると思ったのかしら?
【完結】もう…我慢しなくても良いですよね?
アノマロカリス
ファンタジー
マーテルリア・フローレンス公爵令嬢は、幼い頃から自国の第一王子との婚約が決まっていて幼少の頃から厳しい教育を施されていた。
泣き言は許されず、笑みを浮かべる事も許されず、お茶会にすら参加させて貰えずに常に完璧な淑女を求められて教育をされて来た。
16歳の成人の義を過ぎてから王子との婚約発表の場で、事あろうことか王子は聖女に選ばれたという男爵令嬢を連れて来て私との婚約を破棄して、男爵令嬢と婚約する事を選んだ。
マーテルリアの幼少からの血の滲むような努力は、一瞬で崩壊してしまった。
あぁ、今迄の苦労は一体なんの為に…
もう…我慢しなくても良いですよね?
この物語は、「虐げられる生活を曽祖母の秘術でざまぁして差し上げますわ!」の続編です。
前作の登場人物達も多数登場する予定です。
マーテルリアのイラストを変更致しました。

【完結】恨んではいませんけど、助ける義理もありませんので
白草まる
恋愛
ユーディトはヒュベルトゥスに負い目があるため、最低限の扱いを受けようとも文句が言えない。
婚約しているのに満たされない関係であり、幸せな未来が待っているとは思えない関係。
我慢を続けたユーディトだが、ある日、ヒュベルトゥスが他の女性と親密そうな場面に出くわしてしまい、しかもその場でヒュベルトゥスから婚約破棄されてしまう。
詳しい事情を知らない人たちにとってはユーディトの親に非がある婚約破棄のため、悪者扱いされるのはユーディトのほうだった。

十分我慢しました。もう好きに生きていいですよね。
りまり
恋愛
三人兄弟にの末っ子に生まれた私は何かと年子の姉と比べられた。
やれ、姉の方が美人で気立てもいいだとか
勉強ばかりでかわいげがないだとか、本当にうんざりです。
ここは辺境伯領に隣接する男爵家でいつ魔物に襲われるかわからないので男女ともに剣術は必需品で当たり前のように習ったのね姉は野蛮だと習わなかった。
蝶よ花よ育てられた姉と仕来りにのっとりきちんと習った私でもすべて姉が優先だ。
そんな生活もううんざりです
今回好機が訪れた兄に変わり討伐隊に参加した時に辺境伯に気に入られ、辺境伯で働くことを赦された。
これを機に私はあの家族の元を去るつもりです。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる